お飾り結婚だからと自由にしていたら、旦那様からの愛が止まらない

よどら文鳥

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7話 (Side)ガルムの執着

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「ガルムよ! ヴィニア令嬢を口説くなと何度も言ったであろう!」
「し、しかし……好きになってしまったのですから仕方ないでしょう!」
「もしも領地関係に亀裂が入ったらどうなると思っているのだ!?」

 ガルム=バケットの父、バケット子爵は呆れ果てていた。
 領地関係にヒビが入ってはバケット子爵が管理する領地に大きな影響を及ぼす。
 ガルムが何度もしつこくレイチェルに対して求婚をしていたことに痺れを切らしていた。

「だから俺がレイチェルと相思相愛で続けられれば良いことでしょう」
「ちっともわかっとらんではないか! 私がどれだけ平民にも頭を下げて許しを乞うてきたことか」
「つまり俺の行動は、許してもらえる範囲というわけでしょう」
「どうしてこんなバカ者に育ってしまったのか……。このままでは縁談の話などとてもできん! バケットという名はガルムの代で滅ぶだろう」
「いえ、だからレイチェルと婚約したいんですって」

 バケット子爵は後悔しながら愚痴をこぼす。
 ガルムにとって、お説教など慣れすぎていて全く耳に入らずヘラヘラとした態度をとっていた。

「最近来ていませんけど、今度レイチェルが来たら、父上からもお願いしてくださいよ。ぜひ息子との婚約を考えて欲しいって」
「なんだ知らなかったのか? すでにヴィニア令嬢は結婚していることを」
「は!? 冗談でしょう!?」
「冗談などではない。むしろ、これ以上ヴィニア令嬢を口説くなと念を押すために説教しているのだぞ」

 余裕面をしていたガルムに、焦りと嫉妬が滲み出る。

「こんなに愛しているというのに……裏切るだなんて……」
「いや、元々ガルムに対して恋愛感情などなかったと私は思う。ともかく、これ以上そういう目で接するのはやめるのだ。本当に領地関係に問題が出てしまうぞ」
「く……」

 頷きはしたものの、ガルムは諦め切れずにいた。
(あの胸を揉んでみたかった、抱きたかったのに……あいつは本気で大事にしたかったから我慢していたのに……強引にでも抱いておくべきだった。他の男に取られるなんて……どこのどいつだ!?)

 ガルムはレイチェルとその婚約者に対し、復讐するための準備を密かに始めた。
 しかし、ガルムは知らなかった。
 レイチェルの結婚相手が国を救ったヒーロー、ハイド=ラフィーネ公爵次男だということを。

 ♢

「くっくっく……レイチェルが結婚していようが関係ない。地位と立場で脅せばなんとでもなる」

 ガルムはレイチェルを拘束する道具や罠を用意していた。
 それは持っている資産の大半を費やすほどのものである。
 それだけレイチェルへの執着が凄まじいものだったのだ。

 準備が整い、ようやく定期的に行われている領地会議の日がやってきた。
 今まではレイチェルがほぼ毎回やってきていたのだが。

「ヴィ……ヴィニア伯爵!?」
「久しいな、ガルム令息」
「な、なぜ伯爵が? 今日は領地の――」
「私がその領主だよ。おかしくはないと思うが」
「た、確かに……」

 レイチェルでなかったことに違和感を隠しきれないガルム。
 それを見据えていたかのようにヴィニア伯爵は追い討ちな言葉をかける。

「今まではレイチェルに頼っていたが、嫁いだのでな。今後は私もしくは跡取り予定の息子がこの定例会に来るよ」
「お、お言葉ですが、本当にレイチェルは嫁いだので?」
「ああ。ラフィーネ公爵のところへな」
「ららら!! ラフィーネここここ……公爵!? まさか、数々の縁談でモテすぎなくせに女に全く興味がなく、むしろ嫌っているあの男の元へ!?」
「彼をあまり悪く言わないでくれ。娘の結婚相手なのでな」

 ガルムはその場でへたれこんだ。

「では子爵と会議があるので失礼するよ」

 ヴィニア伯爵はすぐに部屋を退室した。
 取り残されたガルムは、大量に用意したあらゆる道具を見ながら茫然としていた。

「いくら金をかけたと思っている……。女に興味のない男が結婚だなんて、レイチェルは騙されている……。くそう!!」

 拘束道具を蹴っ飛ばし、床にそれが散乱した。
 と、同時に拘束道具のひとつ、全身を麻痺させる粉が散乱してしまい、ガルムが動けなくなった。

「し、しま、った……」

 動けずにその場で固まったままだが、それでもガルムは諦めていなかった。

「く、くそう。この屈辱をバネに……絶対に、レイチェルを……手に入れ……てみせる!」

 夜まで動けなかったガルムは、その場で自然現象もお越してしまい、床が水浸しになる。
 自然現象と同時に麻痺からも解放されたが、タイミング悪くバケット子爵が部屋に入ってきた。

「くさ……! ガルムよ……まさか!」

 ガルムの服、近辺の床の状況からなにをしたのかが明白だった。
 散らばっていた拘束道具も、そういうことかとあらぬ誤解を招くことになる。

「これにはちょっとした事情が……!」
「いくら意中の人間に振られたからといって、一人で喘ぐなど情けない!」
「いえ、そうではなくて」
「ありえん! この大馬鹿ものめが!!」

 この日ガルムは二十年間生きてきた中で、最大の説教を受けることとなった。
 それでもガルムは、レイチェルへの恋心を諦められないでいた。
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