お飾り結婚だからと自由にしていたら、旦那様からの愛が止まらない

よどら文鳥

文字の大きさ
7 / 25

7話 (Side)ガルムの執着

しおりを挟む
「ガルムよ! ヴィニア令嬢を口説くなと何度も言ったであろう!」
「し、しかし……好きになってしまったのですから仕方ないでしょう!」
「もしも領地関係に亀裂が入ったらどうなると思っているのだ!?」

 ガルム=バケットの父、バケット子爵は呆れ果てていた。
 領地関係にヒビが入ってはバケット子爵が管理する領地に大きな影響を及ぼす。
 ガルムが何度もしつこくレイチェルに対して求婚をしていたことに痺れを切らしていた。

「だから俺がレイチェルと相思相愛で続けられれば良いことでしょう」
「ちっともわかっとらんではないか! 私がどれだけ平民にも頭を下げて許しを乞うてきたことか」
「つまり俺の行動は、許してもらえる範囲というわけでしょう」
「どうしてこんなバカ者に育ってしまったのか……。このままでは縁談の話などとてもできん! バケットという名はガルムの代で滅ぶだろう」
「いえ、だからレイチェルと婚約したいんですって」

 バケット子爵は後悔しながら愚痴をこぼす。
 ガルムにとって、お説教など慣れすぎていて全く耳に入らずヘラヘラとした態度をとっていた。

「最近来ていませんけど、今度レイチェルが来たら、父上からもお願いしてくださいよ。ぜひ息子との婚約を考えて欲しいって」
「なんだ知らなかったのか? すでにヴィニア令嬢は結婚していることを」
「は!? 冗談でしょう!?」
「冗談などではない。むしろ、これ以上ヴィニア令嬢を口説くなと念を押すために説教しているのだぞ」

 余裕面をしていたガルムに、焦りと嫉妬が滲み出る。

「こんなに愛しているというのに……裏切るだなんて……」
「いや、元々ガルムに対して恋愛感情などなかったと私は思う。ともかく、これ以上そういう目で接するのはやめるのだ。本当に領地関係に問題が出てしまうぞ」
「く……」

 頷きはしたものの、ガルムは諦め切れずにいた。
(あの胸を揉んでみたかった、抱きたかったのに……あいつは本気で大事にしたかったから我慢していたのに……強引にでも抱いておくべきだった。他の男に取られるなんて……どこのどいつだ!?)

 ガルムはレイチェルとその婚約者に対し、復讐するための準備を密かに始めた。
 しかし、ガルムは知らなかった。
 レイチェルの結婚相手が国を救ったヒーロー、ハイド=ラフィーネ公爵次男だということを。

 ♢

「くっくっく……レイチェルが結婚していようが関係ない。地位と立場で脅せばなんとでもなる」

 ガルムはレイチェルを拘束する道具や罠を用意していた。
 それは持っている資産の大半を費やすほどのものである。
 それだけレイチェルへの執着が凄まじいものだったのだ。

 準備が整い、ようやく定期的に行われている領地会議の日がやってきた。
 今まではレイチェルがほぼ毎回やってきていたのだが。

「ヴィ……ヴィニア伯爵!?」
「久しいな、ガルム令息」
「な、なぜ伯爵が? 今日は領地の――」
「私がその領主だよ。おかしくはないと思うが」
「た、確かに……」

 レイチェルでなかったことに違和感を隠しきれないガルム。
 それを見据えていたかのようにヴィニア伯爵は追い討ちな言葉をかける。

「今まではレイチェルに頼っていたが、嫁いだのでな。今後は私もしくは跡取り予定の息子がこの定例会に来るよ」
「お、お言葉ですが、本当にレイチェルは嫁いだので?」
「ああ。ラフィーネ公爵のところへな」
「ららら!! ラフィーネここここ……公爵!? まさか、数々の縁談でモテすぎなくせに女に全く興味がなく、むしろ嫌っているあの男の元へ!?」
「彼をあまり悪く言わないでくれ。娘の結婚相手なのでな」

 ガルムはその場でへたれこんだ。

「では子爵と会議があるので失礼するよ」

 ヴィニア伯爵はすぐに部屋を退室した。
 取り残されたガルムは、大量に用意したあらゆる道具を見ながら茫然としていた。

「いくら金をかけたと思っている……。女に興味のない男が結婚だなんて、レイチェルは騙されている……。くそう!!」

 拘束道具を蹴っ飛ばし、床にそれが散乱した。
 と、同時に拘束道具のひとつ、全身を麻痺させる粉が散乱してしまい、ガルムが動けなくなった。

「し、しま、った……」

 動けずにその場で固まったままだが、それでもガルムは諦めていなかった。

「く、くそう。この屈辱をバネに……絶対に、レイチェルを……手に入れ……てみせる!」

 夜まで動けなかったガルムは、その場で自然現象もお越してしまい、床が水浸しになる。
 自然現象と同時に麻痺からも解放されたが、タイミング悪くバケット子爵が部屋に入ってきた。

「くさ……! ガルムよ……まさか!」

 ガルムの服、近辺の床の状況からなにをしたのかが明白だった。
 散らばっていた拘束道具も、そういうことかとあらぬ誤解を招くことになる。

「これにはちょっとした事情が……!」
「いくら意中の人間に振られたからといって、一人で喘ぐなど情けない!」
「いえ、そうではなくて」
「ありえん! この大馬鹿ものめが!!」

 この日ガルムは二十年間生きてきた中で、最大の説教を受けることとなった。
 それでもガルムは、レイチェルへの恋心を諦められないでいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛されないはずの契約花嫁は、なぜか今宵も溺愛されています!

香取鞠里
恋愛
マリアは子爵家の長女。 ある日、父親から 「すまないが、二人のどちらかにウインド公爵家に嫁いでもらう必要がある」 と告げられる。 伯爵家でありながら家は貧しく、父親が事業に失敗してしまった。 その借金返済をウインド公爵家に伯爵家の借金返済を肩代わりしてもらったことから、 伯爵家の姉妹のうちどちらかを公爵家の一人息子、ライアンの嫁にほしいと要求されたのだそうだ。 親に溺愛されるワガママな妹、デイジーが心底嫌がったことから、姉のマリアは必然的に自分が嫁ぐことに決まってしまう。 ライアンは、冷酷と噂されている。 さらには、借金返済の肩代わりをしてもらったことから決まった契約結婚だ。 決して愛されることはないと思っていたのに、なぜか溺愛されて──!? そして、ライアンのマリアへの待遇が羨ましくなった妹のデイジーがライアンに突如アプローチをはじめて──!?

無臭の公爵様は香りの令嬢を手放さない~契約婚約のはずが、私の香りで極甘に覚醒しました!?~

黒崎隼人
恋愛
前世で香水の研究員だった記憶を持つ見習い調香師のリリアーナ。 彼女の持つ特別な能力は、眠ると「運命の相手の香り」を夢で予知できること。 ある日、王命によってクロフォード公爵エリオットの元へ派遣される。 彼はあらゆる香りを拒絶する特異体質で、常に無表情な「鉄仮面公爵」として恐れられていた。 しかも、彼自身からは何の匂いもしない「無臭」だった。 リリアーナの作る自然な香りだけがエリオットの痛みを和らげることが判明し、二人は体質改善のための「偽りの契約婚約」を結ぶことに。 一緒に過ごすうち、冷徹だと思っていたエリオットの不器用な優しさに触れ、リリアーナは少しずつ心を開いていく。 そして、彼女の調合した「解毒の香り」が、公爵の体に隠された恐ろしい呪いと陰謀を解き明かし――!? 匂いを感じない公爵が、やがて愛しい人の香りに目覚め、極上の溺愛を見せる。 香りに導かれた二人が紡ぐ、甘く切ない異世界ラブファンタジー!

追放された地味なメイドは和菓子職人の記憶に目覚める 〜王子たちの胃袋を『あんこ』で掴んだら、王宮で極甘に溺愛されています〜

あとりえむ
恋愛
「起きなさい、この穀潰し!」 冷たい紅茶を浴びせられ、無実の罪で男爵家を追放された地味なメイド、ミア。 泥濘の中で力尽きようとしたその時、彼女の脳裏に鮮やかな記憶が蘇る。 それは、炊きたての小豆の香りと、丁寧にあんこを練り上げる職人としての誇り…… 行き倒れたミアを救ったのは、冷徹と恐れられる第一王子ミハエルだった。 バターと生クリームの重いお菓子に胃を痛めていた王族たちの前に、ミアは前世の知恵を絞った未知のスイーツ『おはぎ』を差し出す。 「なんだ、この食感は……深く、そして優しい。ミア、お前は私の最高のパートナーだ」 小豆の魔法に魅了されたミハエルだけでなく、武闘派の第二王子やわがままな王女まで、気づけばミアを取り合う溺愛合戦が勃発! 一方で、有能なミアを失い、裏金のカラクリを解ける者がいなくなった男爵家は、自業自得の崩壊へと突き進んでいく。 泣いて謝っても、もう遅い。 彼らを待っていたのは、処刑よりも皮肉な「全土小豆畑の刑」だった…… これは、一粒の小豆から始まる、甘くて爽快な逆転シンデレラストーリー。 あなたの心も、あんこのように「まあるく」癒やしてみせます。

離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています

腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。 「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」 そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった! 今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。 冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。 彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――

私のことは愛さなくても結構です

毛蟹
恋愛
サブリナは、聖騎士ジークムントからの婚約の打診の手紙をもらって有頂天になった。 一緒になって喜ぶ父親の姿を見た瞬間に前世の記憶が蘇った。 彼女は、自分が本の世界の中に生まれ変わったことに気がついた。 サブリナは、ジークムントと愛のない結婚をした後に、彼の愛する聖女アルネを嫉妬心の末に殺害しようとする。 いわゆる悪女だった。 サブリナは、ジークムントに首を切り落とされて、彼女の家族は全員死刑となった。 全ての記憶を思い出した後、サブリナは熱を出して寝込んでしまった。 そして、サブリナの妹クラリスが代打としてジークムントの婚約者になってしまう。 主役は、いわゆる悪役の妹です

氷の騎士と契約結婚したのですが、愛することはないと言われたので契約通り離縁します!

柚屋志宇
恋愛
「お前を愛することはない」 『氷の騎士』侯爵令息ライナスは、伯爵令嬢セルマに白い結婚を宣言した。 セルマは家同士の政略による契約結婚と割り切ってライナスの妻となり、二年後の離縁の日を待つ。 しかし結婚すると、最初は冷たかったライナスだが次第にセルマに好意的になる。 だがセルマは離縁の日が待ち遠しい。 ※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

嫌われていると思って彼を避けていたら、おもいっきり愛されていました

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のアメリナは、幼馴染の侯爵令息、ルドルフが大好き。ルドルフと少しでも一緒にいたくて、日々奮闘中だ。ただ、以前から自分に冷たいルドルフの態度を気にしていた。 そんなある日、友人たちと話しているルドルフを見つけ、近づこうとしたアメリナだったが “俺はあんなうるさい女、大嫌いだ。あの女と婚約させられるくらいなら、一生独身の方がいい!” いつもクールなルドルフが、珍しく声を荒げていた。 うるさい女って、私の事よね。以前から私に冷たかったのは、ずっと嫌われていたからなの? いつもルドルフに付きまとっていたアメリナは、完全に自分が嫌われていると勘違いし、彼を諦める事を決意する。 一方ルドルフは、今までいつも自分の傍にいたアメリナが急に冷たくなったことで、完全に動揺していた。実はルドルフは、誰よりもアメリナを愛していたのだ。アメリナに冷たく当たっていたのも、アメリナのある言葉を信じたため。 お互い思い合っているのにすれ違う2人。 さらなる勘違いから、焦りと不安を募らせていくルドルフは、次第に心が病んでいき… ※すれ違いからのハッピーエンドを目指していたのですが、なぜかヒーローが病んでしまいました汗 こんな感じの作品ですが、どうぞよろしくお願いしますm(__)m

ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。

光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。 昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。 逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。 でも、私は不幸じゃなかった。 私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。 彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。 私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー 例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。 「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」 「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」 夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。 カインも結局、私を裏切るのね。 エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。 それなら、もういいわ。全部、要らない。 絶対に許さないわ。 私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー! 覚悟していてね? 私は、絶対に貴方達を許さないから。 「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。 私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。 ざまぁみろ」 不定期更新。 この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

処理中です...