【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜

【Side】使用人たちの反抗によって崩壊がはじまる

「きさまら……。望みどおりに四人も雇ったのだぞ。それなのにこの仕事量はなんだ！？」

　デジョレーン子爵の堪忍袋が完全に切れた。
　家畜のニワトリや野菜を育てられる者がいなかったため、すでにダメになってしまった。
　食事も今までと比べて満足できるものではなく、大きなストレスがのしかかっている。
　それだけではなく、最近のボルブたちは調子が悪くなっていて、何度も咳き込んだりするような状況になっていたのだ。

「お言葉ですが、私どもは以前侯爵家に仕えておりました。使用人としての任務は果たしているはずですが……。貴族家へ仕えるための資格もしっかりと取得しております」

　ボルブが納得するためには、家事などが有能すぎたフィアラと同等レベルの仕事をする必要がある。
　だが、国中を探しても、そのようなレベルの使用人はいるはずもないのだ。
　そうとも知らず、ボルブはフィアラもしくはフィアラ以上の仕事内容を求め続けていた。

「だが、しょせん資格にすぎないだろう。主人が満足できていないのだから、俺たちが納得のいくように働いてもらわねば意味がない」
「…………」

　いくら雇われているとはいえ、使用人たちも限界だった。
　このまま言われるがままに仕事の指示に従っていたら、眠る暇もなく住み込みで働く運命になってしまうと感じていた。
　使用人として働ける場所は子爵家だけではない。

「少々考えさせていただいてもよろしいでしょうか？」
「なにをだ？」
「我々にも選ぶ権利があります。このまま無茶な仕事を押し付けるのであれば、辞めようかと考えています」
「私も同感です」
「同じく」
「みんなそうなら私も！」

「ばかな！　このまま勝手に辞めるのであれば、当然給金などないのだぞ？」

　ボルブは持っていた金を見せびらかしながら内心では必死に止めようとしていた。
　だが、すでに遅かった。

「「「「お世話になりました」」」」
「な……！？」

　そのまま使用人たちは玄関から立ち去ってしまった。

「あれ……お父さまー。私の遊び相手はどうしたんですかぁ？」
「いなくなった。というより、勝手に辞めやがったのだよ！」
「えーそんなぁーーー！」

　ミミがその場でしゃがみ込んでしまう。
　ボルブはミミの肩にそっと手を置き、とんでもないことを言い出したのだった。

「よいか？　あのようなワガママで自分勝手にすぐ辞めてしまうような大人にはなってはいけないぞ」
「はーい。絶対にしないもん！　だって、遊ぶ約束を破るなんて最低だよ！　お姉ちゃんだって約束は守ってくれてたんですよ」
「あぁ……」

　ミミからフィアラの名前が出てきた。
　それを聞いたボルブは、高値で取引をして家から追い出したことが正しかったのだろうかと悩むようになっていたのだった。

「ともかく早く新たな使用人を探さないと……。我が家には、家のことを率先してやろうとするものは自慢ではないが誰もいない！！」
「私はそんなめんどくさいことぜーったいにやりませんからね」
「あぁ……。マルレットもスローライフを望んでいるからな……。やれと言っても絶対にやってくれないはずだ」

　ボルブは翌日から大急ぎで新たな使用人の募集をかけた。
　だが、すでに子爵家の悪い噂が広まっていたのだった。
　無茶な仕事内容、許容を明らかにオーバーし、全てやろうとしたら夜明けになってしまうほど過酷な命令をしてくることが使用人たちの口コミで広がってしまったのだ。

「くそう……このままでは家が……」

　ボルブは苛立ちと焦りを隠せずにいたのだった。