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【Side】制裁の大量上乗せ
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デジョレーン子爵邸にて。
フィアラに仕事を任せていたことがバレてしまい、ボルブは重い罰を受けて帰宅してきた。
家にたどり着くまでの間は死にそうな顔をしていたボルブだが、家の中に入ってからは冷静な表情を演じていた。
「大変なことになってしまった」
「どうされたのですか?」
「今年入るはずの年俸が全てカットになってしまったのだ」
「はぁぁぁああああ!? いったいどうして!!」
マルレットはボルブに怒鳴りつけるように騒いだ。
別の部屋で怒声を聞いたミミも、慌ててボルブの元へ駆けつける。
「ミミも良く聞いてほしい。年俸が全てカットになってしまい、そのうえさらに二年分の年俸を罰金として支払うよう命じられてしまった」
「「はぁぁぁぁぁああああああ!?」」
悲鳴のような二人の声が家中に響いた。
マルレットはその場にしゃがみ込み、ミミは悔し涙を溢す。
「要は三年分の年俸が無しってことですよね……?」
「まぁ、そういうことになる」
「それではせっかく手に入った大金のほとんどを失ってしまうということではありませんか! わたくしのスローライフの夢がパァってことでは!?」
「それだけではないのだ」
ボルブが重い口を開いた。
「なんとかして我が家に住み込みで配属させる使用人を雇えることになったのだが、相手は民間人だ。契約上の関係で民間人相手に雇う場合は、全て先払いという決まりがある。つまり、残りの金もすでにその者に支払ってしまっていて」
フィアラを追放するために手に入った大金はすべて消えたことを説明した。
マルレットはそのまま放心状態になり、ミミも泣きながらボルブに訴えた。
「じゃあ、私のおこづかいは? また元に戻されちゃうというわけですか!? せっかく美味しいお菓子をいっぱい買えると思っていたのに……」
「全て明日から配属される使用人に作らせれば良い。だが、相手は民間人だ。今まで以上に期待はできないだろう。せめて部屋が綺麗になればと思って雇ったのだが……」
「最近咳が止まらないんですよね。掃除してくれないから空気が悪くなっているんじゃないかと! それに私の遊び相手もいないしつまんないです」
フィアラの徹底していた掃除がなくなった。
そのうえ、せっかく雇った使用人たちにも愛想を尽かされ出ていってしまう始末。
それでもデジョレーン家で家事をしようとする者はおらず、毎日外食で食事を済ませ、着ている服も脱ぎっぱなし。
そろそろ洗ってある服は底を尽きようとしていた。
おまけに部屋中が服やゴミで散乱している。
部屋の空気が悪くなるのも当然のことであった。
「そもそも、どうしてそんなに年俸がカットになったのです? ボルブ様はそんなに仕事ができない人だったのですか?」
「いや、そうではない。俺の仕事は……完璧に近い」
ボルブは家族に対して嘘をついた。
先ほどまで、ゼル=ガルディック侯爵から長時間の説教を受けていたのである。
上司に怒られたことなど話すようなことは決してしない。
プライドと見栄から事実を喋れないボルブだった。
「おかしいではありませんか! 完璧にできるのにカットなんて!」
「それには理由がある。すべてはあのフィアラのせいなんだ。あいつが告げ口をしたようだ」
「なんですって!?」
「俺はフィアラに仕事を少しだけ手伝ってほしい、確認をしてほしいと頼んだだけだった。だが、フィアラはあろうことか『仕事全てを私に押し付けられていた』などと侯爵に言ったのだろう。汚い女だ」
「あのゴミめが……!!」
「おねえちゃんってそんなにひどい人だったんだね……。もうあんなのお姉ちゃんなんて思いたくない」
ボルブは同じことをそのまま侯爵に訴えていた。
それがさらに怒られる原因となってしまったのである。
本来ならば年俸を一年分カットする制裁だけで侯爵は考えていたのだ。
しかし、この後に及んでフィアラを悪者扱いする発言が許せず、さらなる制裁とフィアラの働きに対する報酬を回収する必要があると判断したのだった。
「このままでは我が家はスローライフどころか破滅してしまう。なんとか起死回生をしないとならない」
「具体的には? 私はあなたがいずれ大金持ちになるという制約を交わしたからこそ危険な不倫にも乗っかったのですよ?(今はボルブ様のことも愛してはいるけれど、こうでも言っておかないと私も大変なお仕事押しつけられちゃうものね)」
「まずは明日来る使用人には厳しくすることだ。この者が成長し、国から使用人として認定されるようになれば、我々の評価も上がる」
「つまり、徹底的に指導して仕事をさせていいというわけですね?」
ボルブにはむしろ厳しくしたほうが家のためにもなることを確信していた。
「フィアラはどういうわけか侯爵に気に入られているようだ。つまり、フィアラに対して行っていたようにすれば上の者からは気に入られるような人材になるのだろう。俺には理解できんが……」
ボルブは間違った解釈をしていたのだった。
侯爵たちは、フィアラが仕事ができるから気に入っているわけではない。
フィアラの謙虚で真面目な人柄が気に入っていて、その上で想定以上の結果を残すから気に入っているのである。
ボルブたちがそこに気がつくわけもなかった。
そんなことも知らず、翌日、使用人に対しての厳しすぎる命令が始まる。
フィアラに仕事を任せていたことがバレてしまい、ボルブは重い罰を受けて帰宅してきた。
家にたどり着くまでの間は死にそうな顔をしていたボルブだが、家の中に入ってからは冷静な表情を演じていた。
「大変なことになってしまった」
「どうされたのですか?」
「今年入るはずの年俸が全てカットになってしまったのだ」
「はぁぁぁああああ!? いったいどうして!!」
マルレットはボルブに怒鳴りつけるように騒いだ。
別の部屋で怒声を聞いたミミも、慌ててボルブの元へ駆けつける。
「ミミも良く聞いてほしい。年俸が全てカットになってしまい、そのうえさらに二年分の年俸を罰金として支払うよう命じられてしまった」
「「はぁぁぁぁぁああああああ!?」」
悲鳴のような二人の声が家中に響いた。
マルレットはその場にしゃがみ込み、ミミは悔し涙を溢す。
「要は三年分の年俸が無しってことですよね……?」
「まぁ、そういうことになる」
「それではせっかく手に入った大金のほとんどを失ってしまうということではありませんか! わたくしのスローライフの夢がパァってことでは!?」
「それだけではないのだ」
ボルブが重い口を開いた。
「なんとかして我が家に住み込みで配属させる使用人を雇えることになったのだが、相手は民間人だ。契約上の関係で民間人相手に雇う場合は、全て先払いという決まりがある。つまり、残りの金もすでにその者に支払ってしまっていて」
フィアラを追放するために手に入った大金はすべて消えたことを説明した。
マルレットはそのまま放心状態になり、ミミも泣きながらボルブに訴えた。
「じゃあ、私のおこづかいは? また元に戻されちゃうというわけですか!? せっかく美味しいお菓子をいっぱい買えると思っていたのに……」
「全て明日から配属される使用人に作らせれば良い。だが、相手は民間人だ。今まで以上に期待はできないだろう。せめて部屋が綺麗になればと思って雇ったのだが……」
「最近咳が止まらないんですよね。掃除してくれないから空気が悪くなっているんじゃないかと! それに私の遊び相手もいないしつまんないです」
フィアラの徹底していた掃除がなくなった。
そのうえ、せっかく雇った使用人たちにも愛想を尽かされ出ていってしまう始末。
それでもデジョレーン家で家事をしようとする者はおらず、毎日外食で食事を済ませ、着ている服も脱ぎっぱなし。
そろそろ洗ってある服は底を尽きようとしていた。
おまけに部屋中が服やゴミで散乱している。
部屋の空気が悪くなるのも当然のことであった。
「そもそも、どうしてそんなに年俸がカットになったのです? ボルブ様はそんなに仕事ができない人だったのですか?」
「いや、そうではない。俺の仕事は……完璧に近い」
ボルブは家族に対して嘘をついた。
先ほどまで、ゼル=ガルディック侯爵から長時間の説教を受けていたのである。
上司に怒られたことなど話すようなことは決してしない。
プライドと見栄から事実を喋れないボルブだった。
「おかしいではありませんか! 完璧にできるのにカットなんて!」
「それには理由がある。すべてはあのフィアラのせいなんだ。あいつが告げ口をしたようだ」
「なんですって!?」
「俺はフィアラに仕事を少しだけ手伝ってほしい、確認をしてほしいと頼んだだけだった。だが、フィアラはあろうことか『仕事全てを私に押し付けられていた』などと侯爵に言ったのだろう。汚い女だ」
「あのゴミめが……!!」
「おねえちゃんってそんなにひどい人だったんだね……。もうあんなのお姉ちゃんなんて思いたくない」
ボルブは同じことをそのまま侯爵に訴えていた。
それがさらに怒られる原因となってしまったのである。
本来ならば年俸を一年分カットする制裁だけで侯爵は考えていたのだ。
しかし、この後に及んでフィアラを悪者扱いする発言が許せず、さらなる制裁とフィアラの働きに対する報酬を回収する必要があると判断したのだった。
「このままでは我が家はスローライフどころか破滅してしまう。なんとか起死回生をしないとならない」
「具体的には? 私はあなたがいずれ大金持ちになるという制約を交わしたからこそ危険な不倫にも乗っかったのですよ?(今はボルブ様のことも愛してはいるけれど、こうでも言っておかないと私も大変なお仕事押しつけられちゃうものね)」
「まずは明日来る使用人には厳しくすることだ。この者が成長し、国から使用人として認定されるようになれば、我々の評価も上がる」
「つまり、徹底的に指導して仕事をさせていいというわけですね?」
ボルブにはむしろ厳しくしたほうが家のためにもなることを確信していた。
「フィアラはどういうわけか侯爵に気に入られているようだ。つまり、フィアラに対して行っていたようにすれば上の者からは気に入られるような人材になるのだろう。俺には理解できんが……」
ボルブは間違った解釈をしていたのだった。
侯爵たちは、フィアラが仕事ができるから気に入っているわけではない。
フィアラの謙虚で真面目な人柄が気に入っていて、その上で想定以上の結果を残すから気に入っているのである。
ボルブたちがそこに気がつくわけもなかった。
そんなことも知らず、翌日、使用人に対しての厳しすぎる命令が始まる。
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