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23話 フィアラは泣きそうになった
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「ダインよ、いったいどうしたのだ?」
タイミングが悪い……。
すでに私とダイン様がハグをしている状態でなかったのは幸いだった。
だが、もう少しダイン様に説明ができていれば、スムーズに説得ができたような気が……。
こうなったら、私から説得してしまおう。
「侯爵様、ひとつお願いがございます」
「構わぬが、ダインは大丈夫か?」
「はい。ダイン様に大きく関係のある相談です」
「そうか。申してみよ」
しかし、ダイン様が私を止めようとしてきた。
「やめろ。せっかく執事長になったのだから、俺のためにしなくとも良い」
「いえ、私の気持ちでもありますから」
「いったい、二人はなにを話そうとしているのだ?」
「ダイン様との交際を認めてくださいませんか?」
「おい!」
「…………」
ダイン様は私の口を抑えようとしてきたが、すでに喋ったあとだった。
侯爵様は急に表情が真剣な状態に変わり、黙ったままである。
「もちろん、執事長としての仕事はおろそかにしませんし、立場もわきまえたうえでということは厳守します」
「…………」
侯爵様の表情がどんどん強張っていく。
それだけ真剣に考えてくださっているのだろう。
やがて、ようやく侯爵様が口にした。
「ダインはどう思っているのだ?」
「俺は……。フィアラが幸せになってもらいたいと思ってます。執事長になれたことは名誉であり喜ばしい。だから俺は気持ちだけ伝えて一歩引こうかと」
「ふむ、それがおまえの答えか。ならば、私からダインに最後のお願いをしようかと思う。これがダメならば、もう私はお前に貴族関連で言うことはない」
「はい、聞きましょう」
「フィアラと婚約を前提とした交際をしてもらいたい」
「「はい!?」」
物事には順序というものがある。
私はまずは交際を経てから婚約したい旨を告げようと思っていた。
だが、侯爵様はいきなり婚約を前提としたお付き合いを提言してきたのだ。
これには私も驚いた。
「フィアラは執事長でしょう。俺が交際しても良いのです!?」
ダイン様は別の理由で驚いていたようだ。
「すまんな。おまえが今まであまりにも婚約相手を選ぼうとしないから、婚約に関する知識は教育の必要ないと思い、教えてこなかった」
「いえ。それは俺のワガママが原因ですから。しかし、主従関係で交際などできないと思っていましたが」
「それは他の執事長の歴史を見てきたからそう思っているだけだろう。昔、執事長が屋敷のご令嬢と恋に落ち婚約まで進んだものの、当時の主人に大目玉を喰らい結局ダメになってしまった」
それは私も初耳である。
私がダイン様にネクタイをプレゼントした日の夜、実はジェガルトさんにあることを聞いた。
あのときに聞いた話は間違いだったのかな……。
いや、ジェガルトさんほど元万能執事長の話が間違いだったとは思えない。
むしろ思いたくない。
ジェガルトさんからは『今の時代、執事長の評価が非常に高いため、執事長と主人の子供と結ばれることはむしろ望ましいですよ』と言われた。
あとは侯爵様の了承があれば……と思っていたのだが。
「私はダインの婚約相手はなるべく地位の高い者を選びたかった。お前は自分の好きな女でなければ嫌だと、ことごとく断ってきたな。はっきり言って、侯爵としては頭を悩まさせられたよ」
「申しわけありません。しかし、俺は自由に生きたかった。たとえ貴族界から追放されようとも、貧乏になろうともゆっくりとした人生を歩みたかったのです。フィアラと出逢うまでは」
「そうだったな。だが、今までダインが断ってきたのは正解だったようだ。フィアラ殿は優秀だし、侯爵家としてもこのうえないほど申し分ない。改めて言おう。私からも結婚を前提とした付き合いをしてもらいたい」
私は嬉し過ぎて泣きそうだった。
「フィアラよ、俺と結婚を前提として恋人になってほしい」
「ありがとうございます……。嬉し過ぎて……」
「ふ。嬉しいのは俺のほうだ」
侯爵様からも交際を認めてくださり、私とダイン様は、晴れて『婚約前提の恋人』という関係の間柄になれたのだ。
このことをお母様にも手紙で報告したいけど、さすがに連続で送るのもいかがなものか。
もう少し時間が経ってから送ろう。
これからの執事長ライフが、より一層楽しみになってきた。
タイミングが悪い……。
すでに私とダイン様がハグをしている状態でなかったのは幸いだった。
だが、もう少しダイン様に説明ができていれば、スムーズに説得ができたような気が……。
こうなったら、私から説得してしまおう。
「侯爵様、ひとつお願いがございます」
「構わぬが、ダインは大丈夫か?」
「はい。ダイン様に大きく関係のある相談です」
「そうか。申してみよ」
しかし、ダイン様が私を止めようとしてきた。
「やめろ。せっかく執事長になったのだから、俺のためにしなくとも良い」
「いえ、私の気持ちでもありますから」
「いったい、二人はなにを話そうとしているのだ?」
「ダイン様との交際を認めてくださいませんか?」
「おい!」
「…………」
ダイン様は私の口を抑えようとしてきたが、すでに喋ったあとだった。
侯爵様は急に表情が真剣な状態に変わり、黙ったままである。
「もちろん、執事長としての仕事はおろそかにしませんし、立場もわきまえたうえでということは厳守します」
「…………」
侯爵様の表情がどんどん強張っていく。
それだけ真剣に考えてくださっているのだろう。
やがて、ようやく侯爵様が口にした。
「ダインはどう思っているのだ?」
「俺は……。フィアラが幸せになってもらいたいと思ってます。執事長になれたことは名誉であり喜ばしい。だから俺は気持ちだけ伝えて一歩引こうかと」
「ふむ、それがおまえの答えか。ならば、私からダインに最後のお願いをしようかと思う。これがダメならば、もう私はお前に貴族関連で言うことはない」
「はい、聞きましょう」
「フィアラと婚約を前提とした交際をしてもらいたい」
「「はい!?」」
物事には順序というものがある。
私はまずは交際を経てから婚約したい旨を告げようと思っていた。
だが、侯爵様はいきなり婚約を前提としたお付き合いを提言してきたのだ。
これには私も驚いた。
「フィアラは執事長でしょう。俺が交際しても良いのです!?」
ダイン様は別の理由で驚いていたようだ。
「すまんな。おまえが今まであまりにも婚約相手を選ぼうとしないから、婚約に関する知識は教育の必要ないと思い、教えてこなかった」
「いえ。それは俺のワガママが原因ですから。しかし、主従関係で交際などできないと思っていましたが」
「それは他の執事長の歴史を見てきたからそう思っているだけだろう。昔、執事長が屋敷のご令嬢と恋に落ち婚約まで進んだものの、当時の主人に大目玉を喰らい結局ダメになってしまった」
それは私も初耳である。
私がダイン様にネクタイをプレゼントした日の夜、実はジェガルトさんにあることを聞いた。
あのときに聞いた話は間違いだったのかな……。
いや、ジェガルトさんほど元万能執事長の話が間違いだったとは思えない。
むしろ思いたくない。
ジェガルトさんからは『今の時代、執事長の評価が非常に高いため、執事長と主人の子供と結ばれることはむしろ望ましいですよ』と言われた。
あとは侯爵様の了承があれば……と思っていたのだが。
「私はダインの婚約相手はなるべく地位の高い者を選びたかった。お前は自分の好きな女でなければ嫌だと、ことごとく断ってきたな。はっきり言って、侯爵としては頭を悩まさせられたよ」
「申しわけありません。しかし、俺は自由に生きたかった。たとえ貴族界から追放されようとも、貧乏になろうともゆっくりとした人生を歩みたかったのです。フィアラと出逢うまでは」
「そうだったな。だが、今までダインが断ってきたのは正解だったようだ。フィアラ殿は優秀だし、侯爵家としてもこのうえないほど申し分ない。改めて言おう。私からも結婚を前提とした付き合いをしてもらいたい」
私は嬉し過ぎて泣きそうだった。
「フィアラよ、俺と結婚を前提として恋人になってほしい」
「ありがとうございます……。嬉し過ぎて……」
「ふ。嬉しいのは俺のほうだ」
侯爵様からも交際を認めてくださり、私とダイン様は、晴れて『婚約前提の恋人』という関係の間柄になれたのだ。
このことをお母様にも手紙で報告したいけど、さすがに連続で送るのもいかがなものか。
もう少し時間が経ってから送ろう。
これからの執事長ライフが、より一層楽しみになってきた。
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