【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜

よどら文鳥

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【Side】家族崩壊がはじまる

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 使用人は、マルレットに散々怒鳴られた夜、全員が寝たあとに給金を返金したうえで夜逃げしたのだった。

 マルレットは、すぐにボルブに言いわけを始めた。

「フィアラでもできるような仕事すらできないダメ使用人でしたわ。自分の出来の悪さを認めずに弱音を吐いて逃げていくなんて信じられませんわー!」
「やれやれ……。また使用人を探さねばならないのか。幸い、しっかりと給金は返金していることだけは褒めるが」
「むしろこちらとしては迷惑でしたわよ! 慰謝料を請求したいくらいですわ!!」

 マルレットの怒りが治らない。

 金に苦しくなっているデジョレーン家である。
 ボルブとしては、使用人をこのまま雇わずに残されたお金でなんとか生活していったほうがいいのではないかと提案した。
 だが……。

「冗談じゃありませんわよ! それって、自分で掃除したり食事の準備もしろってことですわよね!? なんで子爵夫人ともあろう私がそのようなことをしなければならないのですか?」
「くそう……。こんなことならフィアラを追放するべきではなかったのかもしれん」
「ボルブ様……。冗談でも言って良いことと悪いことがありますわよ」
「考えてもみろ。あいつなら金がかからず家のことを全てやっていた。俺の仕事までも……。だが、フィアラがいなくなってからはどうだ? 俺の仕事は文句ばかり言われるし、家もめちゃくちゃだ。せっかく入った大金も残りこれしかないのだぞ!!」

 ボルブは上司の侯爵から毎日ガミガミ言われ続けてて限界だった。
 そのストレスがついに家族をも巻き込むようになったのだ。

「私のスローライフの夢はどうなるのです!? ボルブ様が『俺に任せろ』なんてカッコよく言ってくださるから私はその言葉を信じていたのですよ!」
「俺もスローライフはしたい! 共通の夢がある者同士なのだから、協力してくれてもいいだろうが!」
「まぁ!! 責任転換ですか!」

 マルレットも思うように物事が進まず、気持ちが限界だった。
 そんな二人を見て途方に暮れていたのはミミである。

「お姉ちゃんのせいだ。家がこんなになっちゃったのも、全部お姉ちゃんがいたから……」

 ミミの心の底から絞るような発言によって、二人は落ち着きを取り戻した。
 やがて、ボルブは冷静になる。

「すまない。お前たちに八つ当たりしてしまったようだ。許してくれ。必ずこの最悪な状況を打破できるよう最善を努める」
「ボルブ様……」

 マリレットとミミがボルブに抱きつく。

 仮に、もしもボルブが国務に真面目に貢献してやるべきことをやっていければ、今の状態でも状況でもなんとか窮地から脱出することはできた。
 だが、現実は違った。

「はっきり言って、上司の命令はめちゃくちゃだ。俺が三人いてようやく真っ当に仕事ができる量を要求してくる。故に使用人と俺の仕事を手伝える人材も雇うことにする。まずは仕事の出来を認めてもらい、信頼を取り戻すことが先決だ。やはりこの金は失うことになるが、のちにさらなる金が集まるだろう」

「頼りにしていますよ。私はスローライフさえ出来ればそれでいいですから!」
「任せておけ。今回はしっかりと考えて決めたことだ。ミミよ、おまえが俺を冷静にしてくれたおかげだ」
「お父さまの役にたててなによりです」

 ボルブはこのあと、仕事用の人材を雇った。
 だが、この行為が侯爵にすぐにバレることを本人は知る術もなかったのである。
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