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第二章 貧民街編
11 貧民街
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馬車に揺られ、昼頃には貧民街区域らしいところまでは移動できた。
近くに廃墟されているような家がポツポツと建っているが人の気配はまるでない。
近くには小川が流れていて、緑地もあって環境としては王都よりむしろこちらの方が良いような気もする。
土地柄としては申し分ないと思うのだが、何故ここが貧民街に指定されているのかが私にはわからない。
それくらい恵まれた環境だと思ったからだ。
「このあたりも随分と変わったのね……」
ミーナがぼそりとそう呟いた。
「え? ミーナは来たことあるの?」
「あ……黙ってて申し訳ありません。私、王都に来るまではここの住人だったので」
「そうなの!?」
「当時の領主が私を無理やり王都へ連れ出して、それで蜜館で働かされていたのです……。父親は猛反対でしたが貴族には逆らえませんでしたからね」
また貴族権力かよ。
しかも、当時の領主ってことはブロンダの父親ってことか。
親子揃ってとんでもないことをする連中だったんだな……。
「なぜ奥方様に黙っていたのですか?」
アルマが私が聞きたかったことを代弁するように尋ねてくれた。
「ここに来る理由として先に言ってしまったら、シャイン様はご自分の意思とは無関係に一緒に連れていかなきゃと思うんじゃないかと……。それに父親が今も元気にしている保証はありませんし、汚れた私では合わせる顔もありませんので」
別に好きで蜜館で働いていたわけじゃないんだろうし、親だったらきっとわかってくれると思うんだけどな……。
家庭の事情に突っ込むのも違うと思うので、それ以上は聞かないでおくけど……。
「お父さんだって娘に会えるなら会いたいと思っていると思いますけどねぇ」
「エレナさんはそう思うのですか?」
「だってぇ、どんなに離れていたって自分の子供のことを気にならない親なんていないと思いますけどぉ……」
「だと良いんですけれどね……」
少なくとも私は今の身勝手貴族の輪の中心にいるお父様に会いたいとは思えない。
前世の私も似たような境遇で、家出をして一人暮らししてたんだっけ。
家族運に恵まれていない。
だが、今はアルマ、エレナ、ミーナがそばにいてくれるから寂しくはない。
この四人で貧民街でもなんとか生き抜いていきたい。
♢
「到着しました……」
御者が私たちに申し訳なさそうな表情をしながらそういう。
「申し訳ありません。このような場所に連れてきてしまい……」
「いいのよ。気にしないで。どうせお父様の命令だしあなたも逆らえなかったでしょう?」
「いえ、正確には逆らいました。本来は貧民街と王都の中央あたりで捨ててこいとの命令でしたので……」
「「「え!?」」」(三人)
「はっ!?」(私)
私のことを散々悪女だの言ってきていたけれど、お父様の方がよっぽど悪人だな。
よく命令に逆らって送り届けてくれたなと感心してしまった。
「どうして命令に反いてまで私たちを送り届けてくれたの?」
「荷物も全て渡さず持って帰るように命じられていましたがね。御者としての立場から、たとえ貴族王族の命令であっても譲れない部分があるのですよ。たとえ打ち首にされようとも」
御者が私たちの荷物を下ろしながら苦笑いをしている。
「乗車されるお客様を目的地まで安全にお届けする、これが御者の仕事ですから」
御者がカッコ良すぎる。
今度はこういう人と結婚したい。
まぁ……、貧民街に来た時点で難しいかもしれないけれど。
「それでは失礼いたします……。ご武運を」
馬車がどんどんと離れていく。
まずは、これからどうしていこうか四人で話し合った。
近くに廃墟されているような家がポツポツと建っているが人の気配はまるでない。
近くには小川が流れていて、緑地もあって環境としては王都よりむしろこちらの方が良いような気もする。
土地柄としては申し分ないと思うのだが、何故ここが貧民街に指定されているのかが私にはわからない。
それくらい恵まれた環境だと思ったからだ。
「このあたりも随分と変わったのね……」
ミーナがぼそりとそう呟いた。
「え? ミーナは来たことあるの?」
「あ……黙ってて申し訳ありません。私、王都に来るまではここの住人だったので」
「そうなの!?」
「当時の領主が私を無理やり王都へ連れ出して、それで蜜館で働かされていたのです……。父親は猛反対でしたが貴族には逆らえませんでしたからね」
また貴族権力かよ。
しかも、当時の領主ってことはブロンダの父親ってことか。
親子揃ってとんでもないことをする連中だったんだな……。
「なぜ奥方様に黙っていたのですか?」
アルマが私が聞きたかったことを代弁するように尋ねてくれた。
「ここに来る理由として先に言ってしまったら、シャイン様はご自分の意思とは無関係に一緒に連れていかなきゃと思うんじゃないかと……。それに父親が今も元気にしている保証はありませんし、汚れた私では合わせる顔もありませんので」
別に好きで蜜館で働いていたわけじゃないんだろうし、親だったらきっとわかってくれると思うんだけどな……。
家庭の事情に突っ込むのも違うと思うので、それ以上は聞かないでおくけど……。
「お父さんだって娘に会えるなら会いたいと思っていると思いますけどねぇ」
「エレナさんはそう思うのですか?」
「だってぇ、どんなに離れていたって自分の子供のことを気にならない親なんていないと思いますけどぉ……」
「だと良いんですけれどね……」
少なくとも私は今の身勝手貴族の輪の中心にいるお父様に会いたいとは思えない。
前世の私も似たような境遇で、家出をして一人暮らししてたんだっけ。
家族運に恵まれていない。
だが、今はアルマ、エレナ、ミーナがそばにいてくれるから寂しくはない。
この四人で貧民街でもなんとか生き抜いていきたい。
♢
「到着しました……」
御者が私たちに申し訳なさそうな表情をしながらそういう。
「申し訳ありません。このような場所に連れてきてしまい……」
「いいのよ。気にしないで。どうせお父様の命令だしあなたも逆らえなかったでしょう?」
「いえ、正確には逆らいました。本来は貧民街と王都の中央あたりで捨ててこいとの命令でしたので……」
「「「え!?」」」(三人)
「はっ!?」(私)
私のことを散々悪女だの言ってきていたけれど、お父様の方がよっぽど悪人だな。
よく命令に逆らって送り届けてくれたなと感心してしまった。
「どうして命令に反いてまで私たちを送り届けてくれたの?」
「荷物も全て渡さず持って帰るように命じられていましたがね。御者としての立場から、たとえ貴族王族の命令であっても譲れない部分があるのですよ。たとえ打ち首にされようとも」
御者が私たちの荷物を下ろしながら苦笑いをしている。
「乗車されるお客様を目的地まで安全にお届けする、これが御者の仕事ですから」
御者がカッコ良すぎる。
今度はこういう人と結婚したい。
まぁ……、貧民街に来た時点で難しいかもしれないけれど。
「それでは失礼いたします……。ご武運を」
馬車がどんどんと離れていく。
まずは、これからどうしていこうか四人で話し合った。
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