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第二章 貧民街編

12 絡まれる

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「……では、お父様が生きているということ前提でまずは会いに行くということで」

 ミーナの親は貧民街の中でもまとめ役として活動をしていたらしい。
 私は、名目上領主という扱いになっている。
 どちらにしても接触しなければ話は進まないだろうということで、あまり乗る気ではなかったミーナを説得し、なんとか会わせていただくことになった。

「貧民街の中心部になるので、治安も悪いかもしれません。気をつけてください」

 治安が悪いと聞いて、ふと私の前世の記憶を思い出す。
 中学卒業直後に痴漢にあった上、恐喝までされたんだった。
 それがあまりにも悔しくて、自己防衛のために役者から体育会系にシフトチェンジしたんだっけ。

 幸い更に前世の記憶があったおかげなのかはわからないが、体力はかなりあったし筋力も同級生の中では何もしていないのにトップクラスだった。

 だが、今の私は格闘技系の知識と技量はあっても体力が前世よりも劣る。
 これでは襲われでもしたら自己防衛ができないかもしれない。
 なるべく厄介ごとに巻き込まれないようにしたいと思いながら貧民街の中心部へと歩いていく。

 だが、柄の悪そうな連中を横切ったとき、嫌な予感がした。

「ミーナじゃね!?」
「ほんとだ! あの顔はミーナだ!」
「しかも、周りにも可愛い女がいるぜ?」

 前世の記憶が断言する。
 これは、絡まれるパターンだ。

 できれば無視して進みたいのだが、ミーナが歩くのを止めて男たちに絡みにいってしまった。

「あんたたち、確か前に私のことを散々口説いてきた……」
「そうだよ。覚えてくれていたとはな。それよりも王都でたくさんの男とイチャコラしていると噂だが?」
「うっ……」

 ミーナは顔を下に向けた。
 ミーナが無理やり蜜館で働かされていたことは知っている。
 だが、そんな理由があるのに、この男たちは容赦無く突っかかってきた。

「その顔はそうなんだな? ったく、そんな奴らなんかより俺たちと一緒にいた方がよっぽど気持ちよくなれるというのに」
「そこ、基準にしていないから」

 ミーナが激しく反論する。
 貧民街でのミーナは、常にタメ口のようだ。

「それよりなんでこんな街に戻ってきたんだ?」
「色々と事情があったのよ。すぐにお父さんとこへ行くから、構ってる暇はないの。そういうことで!」

 ミーナが振り向いて歩こうとしたのだが、男がミーナの腕を半ば強引に掴んだ。
 これはかなりやばいパターンだ……。
 しかも、いつの間にか私たちの方にまで進路を阻むように男たちに囲まれてしまった。
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