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第二章 貧民街編

16 教える立場に逆戻り

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「私!? 何がです? 私は特になにもしていないし」
「何を言っているんだ? あの野菜の育て方……今までの俺たちの常識を覆すようなやり方で育て、見事に芽を生やさせたではないか。その証拠に見てみろ。こんなに綺麗に芽が生えるなんて……」

 前世の小学校で習った農園実習のまんま教えただけなんだけど……。
 農園という文化がこっちではなかったから驚いているのかもしれないが、それでも褒めすぎだ。

「シャインの発想力と知識には驚かされる……。しかも、以前見せてくれたあの不思議な喧嘩の仕方。前々から気になっていたんだが」
「あぁ、柔道と合気道ですか?」
「じゅうどう? アイキドウ?」

 そうか……。
 格闘技としての文化もないんだっけ。
 ザイラスはすでに強いし、そんな人が格闘技を覚えてしまったらほぼ無敵化してしまう。
 あまり触れないで欲しかったが、私が格闘技の名称を口走ってしまったので、もう遅かった。

「是非、俺と俺の弟子にも指南して欲しいんだが!」
「は……はぁ……」

 高校の部活で顧問の先生よりも強かったから、私が部員に指導を全丸投げされていたことを思い出す。
 あの時ははっきり言ってめんどくさかった。
 やる気のない男子や、サボってばかりの連中に教えろと言っても無理がある。

 だが、今回はやる気しかないようなザイラスだし、まぁいいか。
 ザイラスの弟子っていうくらいだから、よほど強いんだろうな……。

「そうと決まれば俺の家へ行って少し待っててくれ。すぐに弟子を連れてくる」

 私の有無を言わさず強制かよ。
 まぁ構わないけれど……。
 貧民街ではやることも限られているし、前世のようにスマホゲーに没頭できる環境もないからな。
 できればスマホを開発して前世にワープでもしてアプリゲーをインストールできれば良いんだが、さすがに無理がある。
 この世界でできることを着実にやっていくしかないのだ。

 ザイラスの家に行くまでの間、貧民街の人たちとすれ違うたびに必ず挨拶をしてくれる。
 それが私には新鮮だったので、いつの間にか私からも気がつけば先に挨拶するようになった。

 貧民街に来たことで、私自信も良い方向に変化があったのだ。

「待たせたな」
「はいはい……って、ひょ……」

 ザイラスの連れてきた弟子が……。

「シャイン様、はじめまして。スティールと申します」
「シャ……シャイン=グレイでしゅ!」

 どうしよう……。
 私のドストライクが現る!!
 スティールと名乗ったお方は、見た目は今の私よりちょい上くらい。
 程よい筋肉質で、超がつくほどのイケメンなんだけど……。

 こんなにピンポイントで好みの相手に柔道や合気道を教えるなんて、幸せすぎて死んでしまいそうだ。
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