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第二章 貧民街編
17 指導
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スティールという男は筋肉質でイケメン、更に高身長で第一印象の挨拶も完璧。
前世で恋運はほぼゼロで何も成し遂げることができず、今世でも無理やり婚約させられて義務のような生活を続けていた。
そんな私にとって、スティールが現れた瞬間に王子降臨イベントがはじまったかのような感覚だった。
だが現実的に考えると、あくまで柔道と合気道を教える相手だ。
余計なことは考えないでおく。
(組み合いになったら嫌でもスティールの体を密着することに……)
(柔道の固技でわざとスティールの首筋に顔を近づけて匂いをクンカクンカできるかも……)
(もしスティールに投げられてキャって声を出したらワンチャンあるかも……!?)
バカか私は!
神聖な格闘技でこのような考えをもつなんて……。
これでも元有段者としてそんな発想は……、…………、……………………、しても仕方がないくらいカッコいいんだよ……。
「どうしました? 表情が上の空のようですが……」
「あーーーーっ!! いえ、なんでもないです! さささ、えーと、何を教えれば!?」
「シャインが以前見せてくれた投げ飛ばすやつ、あれを教えてほしい!」
すぐにザイラスが自らそれっぽい仕草を加えながら、そう告げてきた。
柔道の投げ技か。
背負い投げだったら基礎を教えればすぐに習得できそうだけれど、念のために受け身から教えた方がいいかもしれない。
むしろ、一番大事なのは受け身だ。
「まずは、投げられたときに衝撃を受け流すための訓練をしましょうか」
「ほう、攻めでなく防御からやるのか」
「えぇ、柔道は本来喧嘩に使うためのものではなく、護身目的もありますので」
なんかそれっぽくなってきた。
高校時代を思い出してくる。
同時に、あのときクラスで流行っていたタケノコニョッキッキとかまで思い出してしまう。
こっちでは遊びが全くないからな……。
「スティール。お前からまず教えてもらえ」
「はい! シャイン様、よろしくお願いします!」
「ほいっ!!」
しまった。
つい緊張してしまってありえない返事をしてしまう。
何がホイだよ……。
前世でだってそんな発言しなかったのに。
「えぇと、こうしてこうして……このようなときに……」
失礼だが、想定外にスティールの体臭が酷い。
その後にザイラス相手でも近づき組み合ったのだが、更に物凄かった……。
よく考えてみたら、貧民街では風呂どころか水浴びなんて文化すらないのかもしれない。
もしかしたら私も同じように体臭が……。
そう思いはじめてしまったらあまり組合練習を避けたくなってしまう。
柔道の固技、そして投げ技を最低限教えて、真っ先に解決しなければいけない問題に気がつかされた。
練習をひとまず終え、私は大急ぎで今住んでいる家へと帰った。
「まずは風呂環境を整えないと……。今後スティールと柔道をやったときに、シャインの体クッセって言われないようにするためにも……!」
前世の知識のおかげで、風呂対策はすでにある。
あとは道具を集めればなんとかなるのだが。
「シャイン様。おかえりなさいませ」
「ただいまミーナ。アルマたちはまだ帰ってないの?」
「はい。それぞれ勉強と料理教室をやっているのでもう暫くは帰ってこないかと」
ミーナはザイラスの家ではなく、私たちと一緒に住むことを望んでくれ、一緒に暮らすことになった。
主にミーナには家事をやってもらいながら農作業をしている。
「シャイン様、何か私にできることがあればなんなりとお申し付けくださいね」
「ありがとう。でも無理はしないでよ?」
「無理などしていません。まだまだシャイン様に尽くしたく……」
そう言ってくれるのは嬉しいが、無理はしないでほしい。
ただでさえ頑張っているというのに。
だが、今は貧民街で育ってきたミーナが頼りなのだ。
「ねぇ、ドラム缶かそういう金属ってどこかにないかな?」
「どらむかん? なんですかそれは?」
しまった。
ドラム缶はこの世界には存在していなかったっけ。
「ええと、水を溜める大きな容器みたいなもの。火をかけても燃えないような材質で、尚且つ人が入れるくらいの大きさがいい」
私は説明が下手なのだ。
ミーナに上手く伝わっただろうか。
「まさか、シャイン様は……誰かを火炙りにして処刑をお考えでは!?」
「違うから!!」
ある程度伝わっていたけれど、肝心な部分を勘違いされてしまった。
前世で恋運はほぼゼロで何も成し遂げることができず、今世でも無理やり婚約させられて義務のような生活を続けていた。
そんな私にとって、スティールが現れた瞬間に王子降臨イベントがはじまったかのような感覚だった。
だが現実的に考えると、あくまで柔道と合気道を教える相手だ。
余計なことは考えないでおく。
(組み合いになったら嫌でもスティールの体を密着することに……)
(柔道の固技でわざとスティールの首筋に顔を近づけて匂いをクンカクンカできるかも……)
(もしスティールに投げられてキャって声を出したらワンチャンあるかも……!?)
バカか私は!
神聖な格闘技でこのような考えをもつなんて……。
これでも元有段者としてそんな発想は……、…………、……………………、しても仕方がないくらいカッコいいんだよ……。
「どうしました? 表情が上の空のようですが……」
「あーーーーっ!! いえ、なんでもないです! さささ、えーと、何を教えれば!?」
「シャインが以前見せてくれた投げ飛ばすやつ、あれを教えてほしい!」
すぐにザイラスが自らそれっぽい仕草を加えながら、そう告げてきた。
柔道の投げ技か。
背負い投げだったら基礎を教えればすぐに習得できそうだけれど、念のために受け身から教えた方がいいかもしれない。
むしろ、一番大事なのは受け身だ。
「まずは、投げられたときに衝撃を受け流すための訓練をしましょうか」
「ほう、攻めでなく防御からやるのか」
「えぇ、柔道は本来喧嘩に使うためのものではなく、護身目的もありますので」
なんかそれっぽくなってきた。
高校時代を思い出してくる。
同時に、あのときクラスで流行っていたタケノコニョッキッキとかまで思い出してしまう。
こっちでは遊びが全くないからな……。
「スティール。お前からまず教えてもらえ」
「はい! シャイン様、よろしくお願いします!」
「ほいっ!!」
しまった。
つい緊張してしまってありえない返事をしてしまう。
何がホイだよ……。
前世でだってそんな発言しなかったのに。
「えぇと、こうしてこうして……このようなときに……」
失礼だが、想定外にスティールの体臭が酷い。
その後にザイラス相手でも近づき組み合ったのだが、更に物凄かった……。
よく考えてみたら、貧民街では風呂どころか水浴びなんて文化すらないのかもしれない。
もしかしたら私も同じように体臭が……。
そう思いはじめてしまったらあまり組合練習を避けたくなってしまう。
柔道の固技、そして投げ技を最低限教えて、真っ先に解決しなければいけない問題に気がつかされた。
練習をひとまず終え、私は大急ぎで今住んでいる家へと帰った。
「まずは風呂環境を整えないと……。今後スティールと柔道をやったときに、シャインの体クッセって言われないようにするためにも……!」
前世の知識のおかげで、風呂対策はすでにある。
あとは道具を集めればなんとかなるのだが。
「シャイン様。おかえりなさいませ」
「ただいまミーナ。アルマたちはまだ帰ってないの?」
「はい。それぞれ勉強と料理教室をやっているのでもう暫くは帰ってこないかと」
ミーナはザイラスの家ではなく、私たちと一緒に住むことを望んでくれ、一緒に暮らすことになった。
主にミーナには家事をやってもらいながら農作業をしている。
「シャイン様、何か私にできることがあればなんなりとお申し付けくださいね」
「ありがとう。でも無理はしないでよ?」
「無理などしていません。まだまだシャイン様に尽くしたく……」
そう言ってくれるのは嬉しいが、無理はしないでほしい。
ただでさえ頑張っているというのに。
だが、今は貧民街で育ってきたミーナが頼りなのだ。
「ねぇ、ドラム缶かそういう金属ってどこかにないかな?」
「どらむかん? なんですかそれは?」
しまった。
ドラム缶はこの世界には存在していなかったっけ。
「ええと、水を溜める大きな容器みたいなもの。火をかけても燃えないような材質で、尚且つ人が入れるくらいの大きさがいい」
私は説明が下手なのだ。
ミーナに上手く伝わっただろうか。
「まさか、シャイン様は……誰かを火炙りにして処刑をお考えでは!?」
「違うから!!」
ある程度伝わっていたけれど、肝心な部分を勘違いされてしまった。
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