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第二章 貧民街編
20 【視点】策略
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私の娘だったシャインは幼い頃の段階でなんでも言うことを聞くような人間になるよう育てた。
シャインは、私の政略に対し全てにおいて従ってきたので、利用の価値が高かった。
ブロンダとの結婚も成立させ、あとはブロンダの方で上手く政権を操れるようにしておいたのだが、事件が起こった。
私が最も期待しているブロンダがシャインのくだらぬ陰謀で捕まってしまったのだ。
そのせいでシャインは離婚となり、立場上私にも信頼的な立場が危うくなってしまった。
ブロンダのやった行為など、バレぬように行っていればなんの問題もない。
些細なことで私の計画を潰してきたシャインを許せるものか。
更に、政権利用として育てた道具シャインが反抗までするようになった。
やはり貧民街に追いやり、そこで勝手に自滅してもらうという判断は正しかったのだろう。
加えて現在、国王という絶対的権力をもつ兄上に更なるお願いをしに王宮へきた。
「ほう、ではシャインに領主としてではなく土地そのものを譲渡。更に貧民街そのものを我がグレイ王国から分断し、シャイン一人に全てを任せてしまおうと考えているのだな?」
「えぇ。その方がよろしいかと。貧民街など我が国のお荷物のような地」
「だが、あの地には資源がある。それまでも捨てようというのか?」
王都にはない綺麗な川、それから森林といった資源はあるのが確かだ。
遥か昔は貧民街の地が王都だったと聞く。
だが、今となっては成れの果て。
現王都が栄えているのは間違いない。
「所詮資源があったところで、王都で利用してこなかったじゃありませんか。むしろ、金すら国に治めることができないような愚かな者達などをこの国に置いておく方が無駄かと」
「確かにな……。私としても貧民街においては悩んでいた。だからこそエフティーネ伯爵に任せ、管理も自由にさせていたのだが。まさか慰謝料でわざわざ貧民街をもらうとは驚いたぞ」
「すべてはシャインを追放し、全ての責任を押し付け貧民街ごとこの国のものではなくすためです」
なんの利益にもならないような地を持っているくらいなら、管理が面倒なので復讐の材料に利用した方がいいだろう。
だからこそ、私はあえて伯爵からあの地を奪い、シャインごと消すという選択を選んだ。
「現段階で貧民街の土地はシュヴァルムに所有権があり、生かすも殺すも任せる。お前が望みいらぬと申すのならば、シャインに全てを押し付け、国としても断絶することを認める」
「ではそれで!」
「わかった。これでひとまず貧民街問題は解決できたので……表では言えぬがシュヴァルムよ、感謝する」
兄上は私と似たような考えをもっている。
貧民街の領地管理をシャインに任命することも容易かった。
あの時は周りに厄介な者達がいたから、発言を領地管理に留めておいた。
だが、兄上と二人でいる今ならば全てを話せる。
ここまであっさりと話が進むということは、兄上もシャインのことを相当嫌っていたに違いない。
ブロンダは兄上とともに期待していた人材だった。
口には出さないが、今回の騒動でシャインに対する考えも変わったのだろう。
数日後、貧民街一体の土地はシャインに全て譲渡、国からも国交断絶となり、私たちが関与する必要が全くなくなった。
これで気兼ねなく王都を発展できるようになったのだ。
♢
だが、さらに月日は流れたころ、風の噂で妙なことを聞くようになった。
「また王都の人口が減っただと?」
「民衆はなぜか貧民街を目指して国民の権利を放棄しているようです」
「ばかな……あのような地へ行っても何もならぬというのに……」
兄上と一緒に話を聞いていた私も、二人揃って首を傾げながら宰相からの報告を聞いていた。
さすがに民から徴収する税が高すぎて嫌気が指したのか……。
いや、いくらなんでもそれだけでわざわざ貧乏な地へ行くとも考えづらい。
兄上と相談の上、貧民街へ調査団を送ることにした。
シャインは、私の政略に対し全てにおいて従ってきたので、利用の価値が高かった。
ブロンダとの結婚も成立させ、あとはブロンダの方で上手く政権を操れるようにしておいたのだが、事件が起こった。
私が最も期待しているブロンダがシャインのくだらぬ陰謀で捕まってしまったのだ。
そのせいでシャインは離婚となり、立場上私にも信頼的な立場が危うくなってしまった。
ブロンダのやった行為など、バレぬように行っていればなんの問題もない。
些細なことで私の計画を潰してきたシャインを許せるものか。
更に、政権利用として育てた道具シャインが反抗までするようになった。
やはり貧民街に追いやり、そこで勝手に自滅してもらうという判断は正しかったのだろう。
加えて現在、国王という絶対的権力をもつ兄上に更なるお願いをしに王宮へきた。
「ほう、ではシャインに領主としてではなく土地そのものを譲渡。更に貧民街そのものを我がグレイ王国から分断し、シャイン一人に全てを任せてしまおうと考えているのだな?」
「えぇ。その方がよろしいかと。貧民街など我が国のお荷物のような地」
「だが、あの地には資源がある。それまでも捨てようというのか?」
王都にはない綺麗な川、それから森林といった資源はあるのが確かだ。
遥か昔は貧民街の地が王都だったと聞く。
だが、今となっては成れの果て。
現王都が栄えているのは間違いない。
「所詮資源があったところで、王都で利用してこなかったじゃありませんか。むしろ、金すら国に治めることができないような愚かな者達などをこの国に置いておく方が無駄かと」
「確かにな……。私としても貧民街においては悩んでいた。だからこそエフティーネ伯爵に任せ、管理も自由にさせていたのだが。まさか慰謝料でわざわざ貧民街をもらうとは驚いたぞ」
「すべてはシャインを追放し、全ての責任を押し付け貧民街ごとこの国のものではなくすためです」
なんの利益にもならないような地を持っているくらいなら、管理が面倒なので復讐の材料に利用した方がいいだろう。
だからこそ、私はあえて伯爵からあの地を奪い、シャインごと消すという選択を選んだ。
「現段階で貧民街の土地はシュヴァルムに所有権があり、生かすも殺すも任せる。お前が望みいらぬと申すのならば、シャインに全てを押し付け、国としても断絶することを認める」
「ではそれで!」
「わかった。これでひとまず貧民街問題は解決できたので……表では言えぬがシュヴァルムよ、感謝する」
兄上は私と似たような考えをもっている。
貧民街の領地管理をシャインに任命することも容易かった。
あの時は周りに厄介な者達がいたから、発言を領地管理に留めておいた。
だが、兄上と二人でいる今ならば全てを話せる。
ここまであっさりと話が進むということは、兄上もシャインのことを相当嫌っていたに違いない。
ブロンダは兄上とともに期待していた人材だった。
口には出さないが、今回の騒動でシャインに対する考えも変わったのだろう。
数日後、貧民街一体の土地はシャインに全て譲渡、国からも国交断絶となり、私たちが関与する必要が全くなくなった。
これで気兼ねなく王都を発展できるようになったのだ。
♢
だが、さらに月日は流れたころ、風の噂で妙なことを聞くようになった。
「また王都の人口が減っただと?」
「民衆はなぜか貧民街を目指して国民の権利を放棄しているようです」
「ばかな……あのような地へ行っても何もならぬというのに……」
兄上と一緒に話を聞いていた私も、二人揃って首を傾げながら宰相からの報告を聞いていた。
さすがに民から徴収する税が高すぎて嫌気が指したのか……。
いや、いくらなんでもそれだけでわざわざ貧乏な地へ行くとも考えづらい。
兄上と相談の上、貧民街へ調査団を送ることにした。
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