【完結】婚約者にウンザリしていたら、幼馴染が婚約者を奪ってくれた

よどら文鳥

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31 サバス様のお母様

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「物凄い賑わいですね」
「使用人の中にもファンがいるくらいだからな……。全く、私の妻だというのに」

 私も将来的にはサバス様の人気に耐えなければいけないということか。
 前にマーレット様に対して壁ドンしたときはズルイと思ったこともあったし、心配になってきた。

「ここで少し待っていてもらいたい。妻に紹介してここへきてもらうようにする」
「ありがとうございます」

 私は一人でテラスでのんびりとくつろいでいた。
 紅茶をゆっくりと口に入れ、外の景色と味を楽しむ。

「待たせたな。彼女が私の妻だ」

 すぐに後ろを振り向いて、挨拶をしようと思ったのだが、声が出ない。
 いや、出せなかった。
 驚きが凄まじすぎて身体が震えてしまう。

 私が世界で一番美人だと思っているアリアだったのだから。

「ダーリン! まさかこの子に私のこと言っていなかったのよ!?」
「あぁ、脅かそうと思って」
「もう……。ごめんなさいね、ライアンちゃんで良いのよね? 私のことはご存知みたいね」

「アリア……いえ、アリア様……!!」
「アリアで良いのよ? でもそれは歌手としての名前で、本名はダリア=トリコロエルなのよ」

 独特の語尾に「よ」がつく口調、そしてこの声……。
 間違いなく本物だ。
 私は今、世界で一番の美人と対面している。
 鼻血が再び出てしまった。
 この家にいると、出血多量で死ぬんじゃないだろうか。

「まさか、サバス様のお母様だったとは……」
「驚いたのよ? でも、この顔も実は魔道具で変装しているのよ。サバスちゃんの婚約者だから、ちゃんと見せないといけないわよね」

「まてダリア! 私も心の準備が……」
「あら、ダーリンったら緊張しちゃっているのよ。サバスちゃんを見習ってもらいたいのよ」

 少しだけショックだった。
 まさか偽装していた顔だったとは……。
 だが、冷静に考えてみた。
 アリアもサバス様同様に、あえて容姿のレベルを下げた変装をしているんじゃないだろうか。
 ダイル侯爵の動揺を見ていてもそうだとしか思えなくなってきた。

 これ以上美人になったら、同性の私でも恋に落ちてしまいそうだ。
 もちろん不倫はしないけど。

「じゃ、魔道具は久しぶりに解除して元の私に戻るのよ?」

 アリアの顔が少しずつ変化していった。
 サバス様同様、顔から何かのオーラを放っているようなくらいの美人へと格上げされた。

 直視できない……。
 ダイル侯爵ですら顔を赤らめてモジモジとしている。

「この顔で外へ出ないようにしているのよ。歌手やっているし、侯爵ってバレたら色々と面倒なのよ」
「神々しくてお顔を直視できません……」
「あらあらー、ライアンちゃんったら、顔を真っ赤にしちゃって可愛いー!!」
「ひょええぇ!?」

 ひゃーーー!

 やめて、ダリア様? アエル? どっちで呼べば良いんだかわからないが、彼女が私を抱きしめてきた。
 行動がとても年齢相応に見えない。
 それよりも、幸せすぎて気を失いそうだった。

 今、私は大好きな歌手に抱きしめられている。

「刺激が強すぎます……」
「ふふ……、サバスちゃんの選んだ子はとっても可愛いのよ。これからよろしくなのよ」
「は……はい、ダリア様」
「私のことはアリアでいいのよ? その方が慣れているし」

 アリアもテラス席に腰掛け、三人でティータイムが始まってしまう。
 優雅なひと時どころではない。
 私は緊張のしすぎで混乱していた。
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