【完結】転生社畜聖女は、前世の記憶と規格外魔力で隣国を再建します

よどら文鳥

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9【ブブルル王国Side】

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 ブブルル王国王宮、ヴィレーナが住居として使用していた物置き部屋にて。
 ゴルザーフ国王はヴィレーナが急に姿を消したと聞き、慌てていた。

「執事長よ、ヴィレーナはどうした?」
「それが……。急にフッと消えてしまいまして」
「くだらん」

 ゴルザーフ国王は、『なにをくだらないことを言っているのだ』といわんばかりの表情で嘲笑っていた。
 だが、執事長の真剣な表情をながめ、事実であることを理解した。

「戯言を! 人が急に消えるような魔法など存在するわけがないだろう」
「し、しかし現実に……」
「むぅ……。特殊な固有魔法でも持っていたのか。だが、今まで逃げるようなことのなかった女だ。どうして今になって……」
「なぜあんなゴミのような女の失踪で焦られているのです?」

 ゴルザーフ国王は、『ヴィレーナに関しては道具として扱っていい、過労死したら燃やせばそれでいいほどゴミだから好きにしろ』と執事長や侍女たちに命じていた。
 ゴルザーフ国王のは、宝物を失ってしまったような表情を浮かべていた。
 執事長が気になるのも当然だった。

「馬鹿者! これからがあのゴミの利用価値を最大限に活かせるときなのだ。ようやくメビルス王国の王が妥協し、王金貨二千枚でひと月ほど貸し出すという契約が成立したばかりだ。当初の予定よりは割引となったが、それでも十分すぎるほどの臨時収入だ」
「王金貨二千枚もですか!?」
「そうだ。契約に関しては王金貨をメビルス王国へ取りに行き再びこちらへ戻ってきてからだ。全くもって馬鹿なメビルスの王だ。意味のない力を大金を出して要求するなど……」

 王宮に二千枚もの大金が入るとなれば、特別ボーナスも当然あるだろうと執事長は確信していた。
 だからこそ、ゴルザーフ国王同様に、執事長も焦りの表情を浮かべる。

「それは一大事です! 私どもも全力で王宮、いえ、王都中くまなく探します」
「あたりまえだ。息絶えるまで働いてもらうつもりだったが、まさかメビルスの王がこんな理不尽な交渉を受け入れるとは想定外だったからな……。なんとしてでも見つけ連れ戻すのだ」
「かしこまりました! ただちに!」
「おのれ……。こんなことになるのならもう少しだけ手厚くしておくべきだったのかもしれぬ……」

 王宮に仕え、なおかつヴィレーナの顔を知っている者たち全員で捜索が始まった。
 王金貨二千枚というワードを皆が知り、各自特別ボーナスに期待しただけに、全力の捜索になったのである。
 しかし、いつまでたってもヴィレーナを発見することはできなかった。
 神様の手によってヴィレーナが消え、ブブルル王国へ転移したことなど誰も知らない。

 ♢

 完全な行方不明となったまま、ヴィレーナが消えた日から十日が過ぎた。
 すでにゴルザーフ国王は、ヴィレーナが逃げたことに対してのストレスが限界だった。
 今までなにをしても逃げることがなかったからこそ、そのようなことは絶対にありえないと思い込んでいたからこそショックは大きい。

 それどころか、さらにブブルル王国には悲劇は起こる。
 長年ものあいだヴィレーナが毎日発動し続けていた結界も、効果がなくなってしまったのである。

「大変です陛下!!」
「どうしたのだ? まさか、ヴィレーナが死体で発見されたわけじゃあるまいな!?」
「もっと状況は悪いかもしれません! モンスターが……、モンスターが……」
「モンスター?」
「はい……。モンスターが出現する前兆の青色の光が王都近郊に出現しまして」
「くだらん」

 ゴルザーフ国王は、『なにをくだらないことを言っているのだ』といわんばかりの表情で嘲笑っていた。
 だが、王宮騎士団の真剣な表情をながめ、事実であることを理解した。

「馬鹿な……! 今まで王都近辺では十年以上そんなこと起きなかったではないか! 起きてもメビルス王国近郊の辺境地に出現する程度だったはず」
「しかし現実に……」
「と、とにかく緊急配備だ! 王宮所属の騎士団および魔導士全員で現地に向かい、被害が出る前に退治せよと伝えるのだ!」
「は、はい!」

 メビルス王国のカイン率いる騎士団であれば、モンスターの中でも最弱しかでないと言われる青色の前兆ならば、全く問題なく対処できる。
 しかし、モンスター討伐対策訓練などを全くせずに平和ボケして弱体化した騎士団や魔導士たちでは、総出であっても荷が重いのであった。

「くそう……。我が国ではモンスターに対する対策経費が全くかからなかったから優雅でいれたものを……。だが、たまたまの偶然だろう。起きても十年後だろうからあまり深く考える必要はない……か」

 ゴルザーフ国王は、ただの偶然だと言う過程で気に留めることはなかった。
 しかしそれから数日後、再び悪夢の前兆が王都近郊に出現することなど、誰も知らない。
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