【完結】転生社畜聖女は、前世の記憶と規格外魔力で隣国を再建します

よどら文鳥

文字の大きさ
28 / 33

28

しおりを挟む
「これも私の空属性のオリジナル魔法でして……、物の出し入れを自由に行えるんです。生きたままの人や動物を入れることはできませんが」
「まぁ……ヴィレーナならあり得るか……」
「ヴィレーナ様ですものね……」
「疑うような真似をしてしまい申しわけございませんでしたぁぁぁ!!!!」

 カイン騎士団長とチュリップは呆れ、御者は土下座をして謝ってきました。

「いえ、気にしないでください。ハッキリと言えなかった私もいけなかったのですから」

 私がそういうと、今度はカイン騎士団長とチュリップがまたもあの体勢になり、私に対して頭を下げてくるのです。

「二人とも、跪かないでください……」
「そうはいかない。国をも破壊できるであろう上級モンスターを退治したのだ。もはや国民誰もがヴィレーナを敬うのは当然のことだ」
「もうなにがなんでも一生ヴィレーナ様の侍女を努めたい所存であります! あなたさまはメビルス王国の誇りです!」

 だから倒したって言うのを躊躇っていたのに……。
 私はこのあと必死に説得して、今までどおりに仲良くしてくれるように土下座してお願いしました。

 二人の馬車に同乗して王宮に戻ります。
 道中、キーファウス殿下とも遭遇し、彼の群青色の瞳から安堵した眼を見て私もホッとします。

 さて、王宮に戻るとすぐに報告しなければですが……。
 カイン騎士団長が、国王陛下とキーファウス殿下に上級モンスターを討伐したことを報告してしまい、やはり跪かれてしまったのです。
 私がもう一度土下座をしたことは言うまでもないでしょう。

「それにしても、まさか本当に奇跡を起こしてくれるとは。私の婚約者になってほしいと言ったが、これでは釣り合わなさすぎる……」
「そんなことはありませんから」

 私はつい、なにも考えずにキーファウス殿下にそう言ってしまいました。

「あの大きな地震を起こしたバケモノを倒すようなヴィレーナ殿と息子が婚約とは私も華が高い」
「バケモノ……」
「この王宮にまで二度揺れが起こった。一度目は少々揺れた程度だったが、二度目は明らかに天変地異クラスだろう。よほどのバケモノだったのだろうな」
「…………」

 私は、なにも言えませんでした。
 おそらく二度目の揺れの原因は私で、山を破壊してしまったことを言う勇気がまだなかったのです。
 しかし、私の困った態度に鋭く感づいたのがキーファウス殿下でした。

「ち、父上……。ちょっと……」

 キーファウス殿下はあたふためきながら国王陛下の耳元でなにかを呟きます。
 すると、国王陛下も顔を真っ青にしながらガタガタと震えはじめました。
 これは間違いなく私が山を壊したことがバレてしまったに違いありません!

 大急ぎで私は国王陛下に土下座をします。

「すみませんでした!!」
「すまぬことを言ってしまった!!」
「「へ?」」

 なぜか私と国王陛下が同時に土下座をするという、前代未聞の異様な光景が広がったのです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女は王子たちを完全スルーして、呪われ大公に強引求婚します!

葵 すみれ
恋愛
今宵の舞踏会は、聖女シルヴィアが二人の王子のどちらに薔薇を捧げるのかで盛り上がっていた。 薔薇を捧げるのは求婚の証。彼女が選んだ王子が、王位争いの勝者となるだろうと人々は囁き交わす。 しかし、シルヴィアは薔薇を持ったまま、自信満々な第一王子も、気取った第二王子も素通りしてしまう。 彼女が薔薇を捧げたのは、呪われ大公と恐れられ、蔑まれるマテウスだった。 拒絶されるも、シルヴィアはめげない。 壁ドンで追い詰めると、強引に薔薇を握らせて宣言する。 「わたくし、絶対にあなたさまを幸せにしてみせますわ! 絶対に、絶対にです!」 ぐいぐい押していくシルヴィアと、たじたじなマテウス。 二人のラブコメディが始まる。 ※他サイトにも投稿しています

【完結】異世界から来た聖女ではありません!

五色ひわ
恋愛
 ミシュリーヌは、第四王子オーギュストの妃としてフルーナ王国の王宮で暮らしている。しかし、夫であるオーギュストがミシュリーヌの寝室に訪れることはない。ミシュリーヌは聖女の力を持っていたため、妻に望まれただけなのだ。それでも、ミシュリーヌはオーギュストとの関係を改善したいと考えている。  どうすれば良いのかしら?  ミシュリーヌは焦っていた。七年間かけて国中の水晶を浄化したことにより、フルーナ王国は平穏を取り戻しつつある。それは同時に聖女の力がこの国に必要なくなったことを意味していた。  このまま、オーギュストの優しさに縋ってお飾りの妻を続けるしかないのだろうか。思い悩むミシュリーヌの前に現れたのは、オーギュストの恋人を名乗る女性だった。 ・本編141話 ・おまけの短編 ①9話②1話③5話

異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)

深月カナメ
恋愛
十歳から十八歳まで聖女として、国の為に祈り続けた、白銀の髪、グリーンの瞳、伯爵令嬢ヒーラギだった。 そんなある日、異世界から聖女ーーアリカが降臨した。一応アリカも聖女だってらしく傷を治す力を持っていた。 この世界には珍しい黒髪、黒い瞳の彼女をみて、自分を嫌っていた王子、国王陛下、王妃、騎士など周りは本物の聖女が来たと喜ぶ。 聖女で、王子の婚約者だったヒーラギは婚約破棄されてしまう。 ヒーラギは新しい聖女が現れたのなら、自分の役目は終わった、これからは美味しいものをたくさん食べて、自由に生きると決めた。

聖女じゃないと追い出されたので、敵対国で錬金術師として生きていきます!

ぽっちゃりおっさん
恋愛
『お前は聖女ではない』と家族共々追い出された私達一家。 ほうほうの体で追い出され、逃げるようにして敵対していた国家に辿り着いた。 そこで私は重要な事に気が付いた。 私は聖女ではなく、錬金術師であった。 悔しさにまみれた、私は敵対国で力をつけ、私を追い出した国家に復讐を誓う!

虐げられ聖女の力を奪われた令嬢はチート能力【錬成】で無自覚元気に逆襲する~婚約破棄されましたがパパや竜王陛下に溺愛されて幸せです~

てんてんどんどん
恋愛
『あなたは可愛いデイジアちゃんの為に生贄になるの。  貴方はいらないのよ。ソフィア』  少女ソフィアは母の手によって【セスナの炎】という呪術で身を焼かれた。  婚約した幼馴染は姉デイジアに奪われ、闇の魔術で聖女の力をも奪われたソフィア。  酷い火傷を負ったソフィアは神殿の小さな小屋に隔離されてしまう。  そんな中、竜人の王ルヴァイスがリザイア家の中から結婚相手を選ぶと訪れて――  誰もが聖女の力をもつ姉デイジアを選ぶと思っていたのに、竜王陛下に選ばれたのは 全身火傷のひどい跡があり、喋れることも出来ないソフィアだった。  竜王陛下に「愛してるよソフィア」と溺愛されて!?  これは聖女の力を奪われた少女のシンデレラストーリー  聖女の力を奪われても元気いっぱい世界のために頑張る少女と、その頑張りのせいで、存在意義をなくしどん底に落とされ無自覚に逆襲される姉と母の物語 ※よくある姉妹格差逆転もの ※虐げられてからのみんなに溺愛されて聖女より強い力を手に入れて私tueeeのよくあるテンプレ ※超ご都合主義深く考えたらきっと負け ※全部で11万文字 完結まで書けています

〖完結〗聖女の力を隠して生きて来たのに、妹に利用されました。このまま利用されたくないので、家を出て楽しく暮らします。

藍川みいな
恋愛
公爵令嬢のサンドラは、生まれた時から王太子であるエヴァンの婚約者だった。 サンドラの母は、魔力が強いとされる小国の王族で、サンドラを生んですぐに亡くなった。 サンドラの父はその後再婚し、妹のアンナが生まれた。 魔力が強い事を前提に、エヴァンの婚約者になったサンドラだったが、6歳までほとんど魔力がなかった。 父親からは役立たずと言われ、婚約者には見た目が気味悪いと言われ続けていたある日、聖女の力が覚醒する。だが、婚約者を好きになれず、国の道具になりたくなかったサンドラは、力を隠して生きていた。 力を隠して8年が経ったある日、妹のアンナが聖女だという噂が流れた。 そして、エヴァンから婚約を破棄すると言われ…… 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 ストックを全部出してしまったので、次からは1日1話投稿になります。

幸せじゃないのは聖女が祈りを怠けたせい? でしたら、本当に怠けてみますね

柚木ゆず
恋愛
『最近俺達に不幸が多いのは、お前が祈りを怠けているからだ』  王太子レオンとその家族によって理不尽に疑われ、沢山の暴言を吐かれた上で監視をつけられてしまった聖女エリーナ。そんなエリーナとレオン達の人生は、この出来事を切っ掛けに一変することになるのでした――

虐げられた聖女は精霊王国で溺愛される~追放されたら、剣聖と大魔導師がついてきた~

星名柚花
恋愛
聖女となって三年、リーリエは人々のために必死で頑張ってきた。 しかし、力の使い過ぎで《聖紋》を失うなり、用済みとばかりに婚約破棄され、国外追放を言い渡されてしまう。 これで私の人生も終わり…かと思いきや。 「ちょっと待った!!」 剣聖(剣の達人)と大魔導師(魔法の達人)が声を上げた。 え、二人とも国を捨ててついてきてくれるんですか? 国防の要である二人がいなくなったら大変だろうけれど、まあそんなこと追放される身としては知ったことではないわけで。 虐げられた日々はもう終わり! 私は二人と精霊たちとハッピーライフを目指します!

処理中です...