15 / 17
15、ミミナの過去1
しおりを挟む
「風邪とは違うような雰囲気もあって……。ひとまず安静に寝かせつつ、食事も栄養のあるものを用意しています」
「いや、かなり危険かもしれない! 至急会わせてほしい!」
「感染症などだとシークベット公爵様も危険になってしまうかもしれませんよ?」
「構わん。それにその症状を私は痛いほど知っているし、解決策も知っている。確認をしたい」
言われてみたらシークベット公爵様は回復治癒魔法を使えるお方だった。
きっと魔法で治してくれるかもしれない。
そう思ってすぐにクルウス専用の部屋へ案内した。
寝たままのクルウスがその状態で挨拶をしてくる。
「まーま。えーと、でゅーる?」
「こらっ。ちゃんと『様』とつけるのです」
「まーまさま」
そうじゃない。内心かわいいと思いつつも、これはとんでもなくシークベット公爵様に対して失礼な行為である。
私がシークベット公爵様に謝るも、今はそんなことはどうでもいいし気にすることではないと言われた。
小さな子であっても王都でこんな発言をしたら、本来ならなにかしらの罰があるというのに。
「……言葉は喋れる。食事も摂れる。だが、起きれなくて歩けない状態なのだな?」
「そのとおりです」
「ほかになにか気がついたことはあるか?」
「そうですね……」
足に異常はないのに、なぜか歩けない。急に嘔吐することがある。クルウス自身の回復魔法で治せなかった。
思い当たる節を全て伝えると、ますます顔色が青くなっていく。
「このままではクルウスは死んでしまうかもしれない」
「えっ!?」
「私も一度この病にかかっている……。治してくれたのがミミナだよ……」
「え、そんな……覚えがないです」
さすがに人違いだと思った。
人違いのまま私のことを好きだったとなればこんなことは言いたくない。
だが、根っからに優しいシークベット公爵様のことを騙していくこともしたくなかった。
たとえ今後好きじゃなくなられたとしてもはっきりと言っておく。
しかし、シークベット公爵様は私が治したことに間違いないと言い張る。
「私がミミナのことをずっと好きで、なおかつ誰からの縁談も受け入れられなかった理由だ。ミミナはかつて私を救ってくれた」
「う、嘘ですよね」
「本当だよ。だが知らないのも無理はない。ミミナの記憶を失ってしまっているからなんだ」
「どうしてそのことを……」
実のところ、私は五歳くらいまでの記憶が全くない。
その少しあとに母親が亡くなり一人露頭に迷っていた。
まさか母親が亡くなってしまったこともなにか関係があるのだろうか……。
「先に言っておく。当時の宮廷魔術師の診断では、この病にかかったあとの余命は半年から一年。だから、今すぐに……ということはおそらくない。だからミミナには当時なにがあったのか、先に話しておきたい」
「は……はい」
いきなり余命宣告され、とてもじゃないが落ち着いていられない。
だが、シークベット公爵様が真剣そのものだし、なんらかの理由で治った。
つまり、シークベット公爵様が治せるのだと思い、感情を必死に押さえた。今は聞くことに専念する。
クルウスはまだ言葉を深くは知らないが、念のために部屋を移動した。
「これから話すことは、回復魔法や治癒魔法を使える人間が極端に少ない理由だ。もちろん既存の魔法学本にも参考書にも載っていない内容になる」
「……承知しました。黙秘を守ります」
「今クルウスがかかっているのは、回復治癒魔法特性がある人間にしかかかることがなく、放置すれば死に至る病だ」
必死に涙を堪えて話を聞くことだけに専念する。
一字たりとも聞き逃さないように集中した。
「これはまだ解明されていないことだが、人間には本来使うことができない特殊な力を連発することによって起こりやすくなる病だと聞かされていた」
「で……ではクルウスも回復魔法を使わないようにしていたら、こうはならなかったのですか……?」
「そうかもしれない。だが、私が前回来たときにはすでに村人たち全員に回復魔法を使っている状況だと聞いてしまった。すでに私が過去にやっていた回数よりも多い。だから頻繁に様子を見にこようと思っていたのだよ」
教えてくれなかったのも優しさなのかもしれない。
もしも前回会ったときにいきなり回復魔法を使わない方がいいと言われてもピンとこなかったと思う。
前回無理をするなと言っていた理由がこのことだったのだと初めて理解した。
「治す方法がたったひとつだけある。それがミミナから教わったことだよ」
「なんでもします! もしもシークベット公爵様の病も私が治したのだとしたら、クルウスを治したい……!」
「それは無理だ。今できるのは私だけになる」
「え……?」
言っていることがよくわからない。
だが、わからないなりにも治すすべを知りたい。
「やり方を話す前に、ミミナが記憶を失う前のことを伝えておきたい」
「は、はい……」
「本当に私にとって大事なことなんだ。これはミミナにはどうしても知っておいてもらいたい。もちろん疑っても構わない」
こんな状況で嘘を話すような人ではない。
だが、どうして今このタイミングで急に話すようになったのかが引っかかっていた。
「いや、かなり危険かもしれない! 至急会わせてほしい!」
「感染症などだとシークベット公爵様も危険になってしまうかもしれませんよ?」
「構わん。それにその症状を私は痛いほど知っているし、解決策も知っている。確認をしたい」
言われてみたらシークベット公爵様は回復治癒魔法を使えるお方だった。
きっと魔法で治してくれるかもしれない。
そう思ってすぐにクルウス専用の部屋へ案内した。
寝たままのクルウスがその状態で挨拶をしてくる。
「まーま。えーと、でゅーる?」
「こらっ。ちゃんと『様』とつけるのです」
「まーまさま」
そうじゃない。内心かわいいと思いつつも、これはとんでもなくシークベット公爵様に対して失礼な行為である。
私がシークベット公爵様に謝るも、今はそんなことはどうでもいいし気にすることではないと言われた。
小さな子であっても王都でこんな発言をしたら、本来ならなにかしらの罰があるというのに。
「……言葉は喋れる。食事も摂れる。だが、起きれなくて歩けない状態なのだな?」
「そのとおりです」
「ほかになにか気がついたことはあるか?」
「そうですね……」
足に異常はないのに、なぜか歩けない。急に嘔吐することがある。クルウス自身の回復魔法で治せなかった。
思い当たる節を全て伝えると、ますます顔色が青くなっていく。
「このままではクルウスは死んでしまうかもしれない」
「えっ!?」
「私も一度この病にかかっている……。治してくれたのがミミナだよ……」
「え、そんな……覚えがないです」
さすがに人違いだと思った。
人違いのまま私のことを好きだったとなればこんなことは言いたくない。
だが、根っからに優しいシークベット公爵様のことを騙していくこともしたくなかった。
たとえ今後好きじゃなくなられたとしてもはっきりと言っておく。
しかし、シークベット公爵様は私が治したことに間違いないと言い張る。
「私がミミナのことをずっと好きで、なおかつ誰からの縁談も受け入れられなかった理由だ。ミミナはかつて私を救ってくれた」
「う、嘘ですよね」
「本当だよ。だが知らないのも無理はない。ミミナの記憶を失ってしまっているからなんだ」
「どうしてそのことを……」
実のところ、私は五歳くらいまでの記憶が全くない。
その少しあとに母親が亡くなり一人露頭に迷っていた。
まさか母親が亡くなってしまったこともなにか関係があるのだろうか……。
「先に言っておく。当時の宮廷魔術師の診断では、この病にかかったあとの余命は半年から一年。だから、今すぐに……ということはおそらくない。だからミミナには当時なにがあったのか、先に話しておきたい」
「は……はい」
いきなり余命宣告され、とてもじゃないが落ち着いていられない。
だが、シークベット公爵様が真剣そのものだし、なんらかの理由で治った。
つまり、シークベット公爵様が治せるのだと思い、感情を必死に押さえた。今は聞くことに専念する。
クルウスはまだ言葉を深くは知らないが、念のために部屋を移動した。
「これから話すことは、回復魔法や治癒魔法を使える人間が極端に少ない理由だ。もちろん既存の魔法学本にも参考書にも載っていない内容になる」
「……承知しました。黙秘を守ります」
「今クルウスがかかっているのは、回復治癒魔法特性がある人間にしかかかることがなく、放置すれば死に至る病だ」
必死に涙を堪えて話を聞くことだけに専念する。
一字たりとも聞き逃さないように集中した。
「これはまだ解明されていないことだが、人間には本来使うことができない特殊な力を連発することによって起こりやすくなる病だと聞かされていた」
「で……ではクルウスも回復魔法を使わないようにしていたら、こうはならなかったのですか……?」
「そうかもしれない。だが、私が前回来たときにはすでに村人たち全員に回復魔法を使っている状況だと聞いてしまった。すでに私が過去にやっていた回数よりも多い。だから頻繁に様子を見にこようと思っていたのだよ」
教えてくれなかったのも優しさなのかもしれない。
もしも前回会ったときにいきなり回復魔法を使わない方がいいと言われてもピンとこなかったと思う。
前回無理をするなと言っていた理由がこのことだったのだと初めて理解した。
「治す方法がたったひとつだけある。それがミミナから教わったことだよ」
「なんでもします! もしもシークベット公爵様の病も私が治したのだとしたら、クルウスを治したい……!」
「それは無理だ。今できるのは私だけになる」
「え……?」
言っていることがよくわからない。
だが、わからないなりにも治すすべを知りたい。
「やり方を話す前に、ミミナが記憶を失う前のことを伝えておきたい」
「は、はい……」
「本当に私にとって大事なことなんだ。これはミミナにはどうしても知っておいてもらいたい。もちろん疑っても構わない」
こんな状況で嘘を話すような人ではない。
だが、どうして今このタイミングで急に話すようになったのかが引っかかっていた。
12
あなたにおすすめの小説
【完結】旦那は堂々と不倫行為をするようになったのですが離婚もさせてくれないので、王子とお父様を味方につけました
よどら文鳥
恋愛
ルーンブレイス国の国家予算に匹敵するほどの資産を持つハイマーネ家のソフィア令嬢は、サーヴィン=アウトロ男爵と恋愛結婚をした。
ソフィアは幸せな人生を送っていけると思っていたのだが、とある日サーヴィンの不倫行為が発覚した。それも一度や二度ではなかった。
ソフィアの気持ちは既に冷めていたため離婚を切り出すも、サーヴィンは立場を理由に認めようとしない。
更にサーヴィンは第二夫妻候補としてラランカという愛人を連れてくる。
再度離婚を申し立てようとするが、ソフィアの財閥と金だけを理由にして一向に離婚を認めようとしなかった。
ソフィアは家から飛び出しピンチになるが、救世主が現れる。
後に全ての成り行きを話し、ロミオ=ルーンブレイス第一王子を味方につけ、更にソフィアの父をも味方につけた。
ソフィアが想定していなかったほどの制裁が始まる。
大好きなあなたが「嫌い」と言うから「私もです」と微笑みました。
桗梛葉 (たなは)
恋愛
私はずっと、貴方のことが好きなのです。
でも貴方は私を嫌っています。
だから、私は命を懸けて今日も嘘を吐くのです。
貴方が心置きなく私を嫌っていられるように。
貴方を「嫌い」なのだと告げるのです。
お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。
四季
恋愛
お前は要らない、ですか。
そうですか、分かりました。
では私は去りますね。
寡黙な貴方は今も彼女を想う
MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。
ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。
シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。
言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。
※設定はゆるいです。
※溺愛タグ追加しました。
【完結】好きでもない私とは婚約解消してください
里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。
そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。
婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。
他の人を好きになったあなたを、私は愛することができません
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私シーラの婚約者レヴォク第二王子が、伯爵令嬢ソフィーを好きになった。
第三王子ゼロアから聞いていたけど、私はレヴォクを信じてしまった。
その結果レヴォクに協力した国王に冤罪をかけられて、私は婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。
追放された私は他国に行き、数日後ゼロアと再会する。
ゼロアは私を追放した国王を嫌い、国を捨てたようだ。
私はゼロアと新しい生活を送って――元婚約者レヴォクは、後悔することとなる。
彼女の離縁とその波紋
豆狸
恋愛
夫にとって魅力的なのは、今も昔も恋人のあの女性なのでしょう。こうして私が悩んでいる間もふたりは楽しく笑い合っているのかと思うと、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになりました。
※子どもに関するセンシティブな内容があります。
【完結】お前を愛することはないとも言い切れない――そう言われ続けたキープの番は本物を見限り国を出る
堀 和三盆
恋愛
「お前を愛することはない」
「お前を愛することはない」
「お前を愛することはない」
デビュタントを迎えた令嬢達との対面の後。一人一人にそう告げていく若き竜王――ヴァール。
彼は新興国である新獣人国の国王だ。
新獣人国で毎年行われるデビュタントを兼ねた成人の儀。貴族、平民を問わず年頃になると新獣人国の未婚の娘は集められ、国王に番の判定をしてもらう。国王の番ではないというお墨付きを貰えて、ようやく新獣人国の娘たちは成人と認められ、結婚をすることができるのだ。
過去、国の為に人間との政略結婚を強いられてきた王族は番感知能力が弱いため、この制度が取り入れられた。
しかし、他種族国家である新獣人国。500年を生きると言われる竜人の国王を始めとして、種族によって寿命も違うし体の成長には個人差がある。成長が遅く、判別がつかない者は特例として翌年の判別に再び回される。それが、キープの者達だ。大抵は翌年のデビュタントで判別がつくのだが――一人だけ、十年近く保留の者がいた。
先祖返りの竜人であるリベルタ・アシュランス伯爵令嬢。
新獣人国の成人年齢は16歳。既に25歳を過ぎているのに、リベルタはいわゆるキープのままだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる