追放された元貴族令嬢は隠し子を幸せにするために平穏な村で仲良く子育てしています 〜追放した貴族たちは仲悪く破滅していきます〜

よどら文鳥

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16、ミミナの過去2

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「私が六歳のときだった。幼いながらも将来のために王都の視察でミミナ当時住んでいたであろう近辺を護衛と共に巡回していたときのことだよ」

 シークベット公爵様は私よりひとつ年上だったはず。つまり私が五歳のときになる。
 記憶がない時期と一致していた。

「急に歩けなくなってね。すさまじい吐き気も伴って道端で泥のように寝込んでしまったのだよ。護衛も必死になってくれていたが、私の場合とにかく吐き気が酷かった。動かさないよう頼み込みその場でしばらく様子見だったよ」
「クルウスが歩けなくなった初日と同じです……」

 ということはシークベット公爵様自身の魔法でも治せなかったのだろう。

「宮廷魔術師を呼んでくれてね。そのとき私の現状を知ることができた。もう助からないと。だが、父上にも母上にも心配だけはかけたくなくて、余命のことは言わなかった。それは宮廷魔術師や護衛にも喋らないように伝えていたよ」

 余命宣告の辛さは今私が一番理解している。
 家族がいざそうなってしまうと、どうしようもなく辛い苦しみに襲われてしまっているからだ。
 先ほどまでは謎の病と思っていたときの方が、心配はしていたものの精神的にも安定していた。

「当時の私はワガママだったからね。最期に恋だけはしてみたかった。おそらくミミナも引くと思うが」
「いいえ。どんな発言であっても受け入れます」
「貴族同士で恋はできない。平民と貴族との婚約もできない。そう教えられていたから、あえて二度と会うことのないであろう平民と恋がしてみたかった。仮に両想いになってしまっても、諦めがつくと思っていてね……。もちろん当時の考えであって、今はそのような非道な考えは持っていないよ」

 幼少期の考えを今も反映していたらキリがない。
 クルウスも成長してくれたら今の危険な思考や発言もしなくなると願っている。
 過去はあくまで過去であって、むしろ当時はこうだったんだよと素直に話してくれているほうが嬉しい。
 ますますシークベット公爵様のことが好きになっている。

「その相手がミミナだった。歩けなくなってしまった私相手でも気にせずに仲良くしてくれたのだよ」
「過去の私がうらやましい……」
「ミミナと話して何日かしてからだった。一緒に遊んでいるときに突然吐き気が伴って、ミミナに対して盛大に吐いてしまった……。当然ながらミミナの服も顔も汚してしまったよ」

 そんなの洗えばどうにでもなる。
 それよりも当時のシークベット公爵様は、さぞ辛かったのだろう……。

「だがミミナは嫌な顔ひとつせず、背中を摩ってくれた。これがどれほど申し訳なくて、どれほどありがたかったか……」
「それで治ったのですか?」
「いや、大事なのはその直後だよ。ミミナはこう言ったんだ。『わたし、回復魔法が使えるから治すね』と」
「え!? 私が……ですか!?」

 魔力適性のない私。さすがにそれは違うだろうとつい聞いてしまう。

「そうだよ。だが、回復魔法をかけてくれたのだろうが効かなかった」
「つまり……シークベット公爵様の回復魔法でもクルウスは治せないということですか……」
「いや、そうではない。当時のミミナはさらにもう一度かけてくれたのだよ。その……くちづけで」
「はいいっ!?」

 衝撃的なことを聞いて大きな声を出してしまった。
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