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イデアの過保護

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「……その格好ではダメ。ルビーちゃんの背に乗るのであれば、スカートの中に見えても良いパンツを履かなければ下から丸見え」

 私の保護者同然になっているイデア 。
 彼女の徹底っぷりは凄まじいものがある。
 今日はカルム様とお出かけデートをするので、普段着ないような服を選んだのだが、真っ先にイデアに止められてしまった。

「私のなんか誰も見ないと思うけど」
「……いえ、自分で気づいていないだけ。リリアは可愛い! リリアの下着を見ようとするものは私が絶対に許さない! とにかく、その服がいいならこれも履くこと!」
「は……はい」

 言われたとおりにスカートの中に黒の短パンも着用した。
 確かに膝上二十センチの水色ワンピースでルビーに乗るのは、少々危険だったかもしれない。

「……あぁ、これは鼻血モノ。カルム様もこれならイチコロ」
「可愛いから選んだんだけど……」
「……良い! かわいい!! 余計なライバルが増えないことを祈る」

 言っている意味はわかるのだが、イデアは言い過ぎだろう。
 エウレス皇国では全くと言って良いほど男運も無ければ恋愛をしたことすらない。
 ラファエルとの婚約も政略的なものだったし、本人には悪いが好きになったわけではなかった。

「……リリア、出かける前に一つだけ良い?」

 足元と胸元にやたら目線を向けているイデアが、ようやく私の顔を見てきた。

「魔力は自然に回復していく。でも、体内に蓄えている魔力を全て使い切ると数日間は寝たきりになるから気をつけて。まぁリリアの魔力なら問題ないとは思う。でも念のため」
「わかったわ、ありがとう」

 余程心配してくれているのだろう。
 聖なる力も使いすぎると似たようなことになるから、調整はできると思うのでおそらくは大丈夫だとは思うが。
 イデアにお礼を言ってから、カルム様との待ち合わせている王宮の出入口まで、歩いて向かった。

 ♢

「リリア!! そ……その格好は……!?」

 カルム様が相当動揺しているようだ。
 確かに王族貴族が着るような服ではなく、どちらかというと一般庶民の女の子が好んで着そうなワンピースである。
 私は元々聖女ではあっても一般庶民だし、今回は私の好みで選んだのだが……。

「申し訳ございません。あまり馴染みがありませんでしたよね……。着替えてきた方がよろしいですか?」
「むしろ良い! とても可愛い!!」
「へ!?」

 絶賛しながら、私の両手を強く握ってきたのだ。
 気絶してしまいそうなくらい嬉しかった。
 カルム様も顔を赤らめながら、私の顔をじっと見てきている。

「ル、ルビーに乗りますが、下は見えても平気なものを着用していますので」
「ならばひと安心だ……。リリアの下着を見ようとするものは絶対に許さんからな!!」

 そのセリフ、さっきイデアから聞いたばかりだ。
 私は苦笑いをしながら、肩に乗っかっているルビーを巨大化させた。

「確か、辺境地の『ビレーヌ』へ行く予定でしたね」
「あぁ。デインゲル王国から物資を仕入れる際に必ず寄る村なのだよ。辺境伯からの手紙が前回の報告でなかったのでな……。何も無ければ良いのだが」
「そ、そうですね。すぐに向かった方が良さそうですね」

 ルビーが高速で飛行を始めた。
 カルム様は知らないかもしれないが、そういうセリフを言ったときは、大抵何かあるものなのだ。
 あまり妙なフラグを作らないで欲しい……などとはとても言えなかった。
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