【完結】無能聖女と呼ばれ婚約破棄された私ですが砂漠の国で溺愛されました

よどら文鳥

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元気になってもらいたい

 今のカルム様の力では私の腕を振り解けない。
 それほど疲労で衰弱してしまっているらしい。

「もしも私が不眠不休で水の加護を与えなければいけない、となったらどうしますか?」
「無論無理するなと言うし、何か私にも手伝えることがあればやろうと言うだろう! 当然のことだ」

 例え話でも、カルム様がそう言ってくれることに私はとても嬉しかった。

「今そういう気持ちなんですよ、私……」

 カルム様は起き上がろうとするのをやめて、再びベッドに横になった。

「カルム様、私もこの件はお手伝いさせていただけませんか?」
「しかし……リリアは十分すぎるほど働いてもらっているのだし」
「ルビーとともに国中の水を反映させる行動は無理のない範囲で毎日行なっております。現状、昼から夜までは仕事がありません。私もその時間で何か行うべきかと」
「国を救ってくれたリリアにこれ以上は……」

 カルム様の優しさと気遣いはとても嬉しい。でも、こういう状況では素直に喜べなかった。

「カルム様達が休まずに国務をされている中、どうやって私に休めと? とてもじゃありませんが心配で休めません。それに、この件で解決できそうな方法もあるかもしれませんよ」
「本当か!?」
「温浴施設が間も無く内装も完成しますよね?」
「あぁ。だが既にそこで働いてもらう魔道士は既に足りてしまっている」

 水をお湯に変える魔道士が既に集まっているのは知っている。

「今の王都の環境ならば、各家庭で小さな温浴施設……お風呂場とでも言いましょうか。きっと流行するかと思います。そうなったら炎属性の魔道具が爆発的に流行ると思うんです」
「なるほど……。先読みすると一理ありそうだ。魔道士たちにはその魔道具の製造を依頼するというわけか」

 あまり長く会話していると、カルム様の体調がまた悪くなってしまいそうな雰囲気がある。

「ともかく今は一旦休んでください。明日はルビーと共に帰ったらすぐにこちらへ来ますから」
「すまない……リリアよ。ちょっとこちらへ来てくれないだろうか?」
「はい?」

 カルム様の指をさした場所はカルム様のベッドの上、超至近距離だ。
 よくわからないまま言われたとおりにカルム様の真横に座る。

「リリアよ……いつもありがとう」

 そう言って私の手をギュッと握ってくれた。
 まだこういう免疫がない私にとって、嬉しすぎて心臓が破裂してしまいそうだ。

「いつかまたリリアと一緒に……ダンスを昔の……」
「カルム様?」

 何かを言いかけてくれていたようだが、喋らなくなってしまった。
 横を見るとスヤスヤと寝息をたてながら眠っていたのだ。
 徐々に私の手を握ってくれている握力も弱くなっていく。

「カッコいい……」

 最初ここへ連れてきたときのカルム様は青ざめていたが、今は安心したような表情をしている。

 カルム様の寝顔は今まで何度か見てきたが、ここまで至近距離で見るのは初めてだ。
 しかも同じベッドの上で……こんな間近で……。

 普段の表情も素敵なのだが、寝顔も美しい。
 カルム様のことを明らかに愛してしまっている。
 好きすぎて、この状況で頬にキスをしてしまいたいとも思ってしまう。

 いやいや、変なことを考えてはいけない!

 だが、もうしばらくだけ、触れている手を離さないで、今度は私がカルム様の手を握っておく。
 いつまでもこうしていたいが、ゆっくりと手を離してカルム様に布団をかける。
 そっと、病室を出ていった。

 カルム様の手の温もりをしばらく大事にしていた。

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