【完結】無能聖女と呼ばれ婚約破棄された私ですが砂漠の国で溺愛されました

よどら文鳥

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温浴施設ができた

 国が運営する温浴施設がついに完成し、営業初日となる。
 カサラス王国には娯楽が全くなかったため、物珍しさから集まってくる人たちで溢れかえっていた。

 流石に水着を製作する段階にはなっていなかったので、私からの提案で温浴施設は男女別に入れるようにエリアを二つに分けたのだ。
 家族揃って入ることができないのが欠点だが、まずは温浴の楽しさと水に浸かって気持ち良くなる感覚を体験してもらいたい気持ちが先行していた。

「他人の胸なんて初めて見ましたわ」
「おっきい……」
「うぅ……私ってばこんなにぺったんこだったとは……」

 私が視察するのは女性専用エリアだけだ。
 やはり裸になることに抵抗があるようで、なかなか馴染めていないようである。
 先行して何人かが温浴に浸かりはじめる。
 気持ち良さそうな表情を見ていたお客さんを見て、恥ずかしがっていた人たちも全裸になって温浴に浸かりはじめるようになった。

「全身の力が抜けていくうぅ~」
「身体がポカポカしてくるわね」
「こんな凄いアイディア一体誰が考えたのかしらね」
「聖女様っていう噂よ」
「まぁ! リリア様ったら水だけでなく癒しも私たちに与えてくださったのね」

 こっそりと温浴施設の感想や会話を聞いているが、一部からの話を聞いていて恥ずかしくなってしまった。
 どうやら殆どの人達は満足しているようで一安心だ。

 仕事を失った魔道士たちの雇用も温浴施設が流行ってくれれば、炎属性の魔法の需要が大幅に増して起動に乗っかるだろう。
 一安心して、私も温浴施設でのんびりと浸かりたいところだが、今日は流石に遠慮しておく。

『水よ浄化したまえ』

 徐々に濁った色に変わってしまっていたのだ。
 これだけの人が集まったことと、初めての人たちだけで入っていたら当然すぐに水も汚れてしまう。

 今日は視察に加えて初めての浄化魔法を試しながら、浴槽のメンテナンスを行っていたのだ。
 あっという間に溜まっていた水が変色して透き通った綺麗な水に変わっていく。

 思ったよりも浄化魔法は魔力の消費が激しいようで、あまり連続で詠唱はできないかもしれない。
 人によって得意不得意な属性があるとイデアは言っていた。
 やはり、私は水の加護を与えられる聖女として、水属性が一番得意なのかもしれない。

 ♢

「想定以上の客入りで父上も大変喜ばれていた。これならばリリアの言うとおり、炎属性の魔道具の需要が従来の数倍になることは間違いないだろう」
「だと良いですね。私もホッとしています」

 今回、私から提案したことは初めてだった。
 エウレス皇国では恐れ多くて何も案を出せないでいたが、カサラス王国では勇気を出してみたのだ。
 言ってみてよかった、そう思っている。

「何度も言うが、リリアは責任を感じることはないぞ。むしろ、失敗を恐れずにどんどん案を出してくれると嬉しい」
「そうですか? だったら一つ提案がありますが……」
「ほう。なんでも言ってくれたまえ」

 カルム様は私に対しても他人に対しても優しすぎる。
 ときには先日のように無理をしてしまい、倒れてしまったくらいだ。
 相手を思うがばかりに自分自身を大事にできていない気がする。
 だからこそ、私も遠慮したり躊躇したりすることを止めるようになったのかもしれない。

「私も国務をお手伝いさせていただきたいのです」
「え!?」

 カルム様は驚いた表情をしているが、構わず喋り続けた。

「カルム様は無理をしすぎです。それに周りの人たちも……。カルム様の……いえ、国のお力になりたいのです」
「リリアの水の加護だけでも十分すぎるほどの力になっているのだが、更に何かしようとしてくれると言うのか」
「はい。むしろ何かしていたほうが私としては助かります。もちろん、無理をしない範囲ですが」

 無理をしない程度と、念のために付け加えておいた。
 これは私自身が国務で大変な目に遭っていたのと、カルム様にも無理をしないで欲しいという想いが混じってのことだ。
 カルム様もしばらく黙って考えていたのち、ゆっくりと頷いた。

「リリアがそこまで言ってくれるのならば……。実際問題で、国の環境が大きく変わった結果国がやることも多くなっていてな。だが無理はしないでほしい」
「それはカルム様もですけどね」

 よかった。
 これで午後の私の自由時間を有効活用できる。

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