56 / 61
自業自得
「一杯につき銀貨一枚で取引を行いましょう」
「なんだって⁉︎」
「驚くことでもないでしょう? 我々の国がそちらの国から水を購入する際、一杯銀貨三枚と言っていたではありませんか。半額以下で驚いているのですか?」
「ぐ……それは……」
そんな高値で水を買い取っていたなんて知らなかった。
銀貨一枚で水を買うにしても、樽十個分くらいが相場なはず。
ぼったくりもいいところだ。
カルム様はあえてラファエルにそう提案しているだけだとは思うが。
「仕方がない。銀貨一枚で水をくれ」
ラファエルは、水を勢いよく飲み干した。
すると、生き返ったような表情をしていた。
「カルム王よ、取引がしたい」
「どんな取引を?」
「リリアを返してほしいのだ」
「却下だ!」
カルム様は即答で返事をした。
だが、ラファエルは必死に喰いついてきたのだ。
「仕方がない……。受け取った財宝の三分の一を返すからどうだ?」
「却下だ!」
またしても即答だ。
痺れを切らしたラファエルは、徐々に顔が強張っていく。
「そもそも、カルム王がリリアが聖女だと言わないで取引を持ちかけたのだろう⁉︎ こんな卑怯なやり方で奪って満足か?」
「何をおっしゃっているのですか。私は何度も確認しましたよ? リリアは聖女でその力は偉大だと。それでもリリアを捨てるというのなら、国の財宝を渡してでも引き取りたいと」
「そうだっけ……?」
「貴国の大臣たちも私の発言で笑っていましたよね。よく覚えていますとも」
「過去のことはどうでもよい。ともかく、現在我が国は雨が降らず大変なのだ。リリアが必要になってしまったのだよ」
あまりにも図々しく身勝手な発言ばかりだったから、つい私も声を出してしまった。
「またあの地獄のような生活を考えたら戻る気にはなれません。それに、今はこうしてカルム様の側に付き添うことが私の使命でありますのでお引き取りください」
「なんだと⁉︎ 貴様、私に対しては何も身体の奉仕をしなかったくせにその薄っぺらい体格の男は抱くとでもいうのか⁉︎」
「はぁ……そんなことをこの場で言うとはな。ラファエル皇王には呆れてしまうよ」
カルム様が大きくため息を吐いた。
「今をもって宣言する。金輪際エウレス皇国とは二度と関わらぬ。国交断絶だ。其方も二度とこの地に足を踏み入れるでないぞ!」
「い、いや、それは困る。このままでは私は皇王としてやれず、民も隣国へ移民してしまうかもしれないんだ」
「リリアに対しての暴挙、失言。本来ならばこの場で処刑になることをしたのだぞ」
カルム様がこんなにも声を荒げているなんて初めてだ。
私のことでここまで怒ってくれることが嬉しいが、少々怖い部分もある。
「くそう……人の弱みにつけこみおって……」
「おっと、我が国でも移民の受け入れは構わぬぞ? ただし、聖女リリアのことを悪く言うような者は拒否する」
「おのれ……。誰がこんな国に助けを求めるものか!」
ラファエルは悔しそうな表情をしながら玉座の間から姿を消した。
「ふぅ……。ところでリリアよ、あぁは言ったものの民は心配だ。やはりエウレス皇国にまで水の加護を与えるのは難しいのか?」
「無理ですね……。距離が離れていますし、それに元々エウレス皇国は本来ここよりも人が住めるような環境ではなかったと聞いたことがあります」
「そうか。あのような者が皇王でなければ、向こうとも仲良くすることだってできたかもしれぬというのに。だが、いずれあの者は皇王の座から下されそうな気もするがな……」
「国のためにはその方がいいんですけれどね」
当時、私はエウレス皇国の王族貴族、そして民衆からも散々酷い言葉をかけられてきた。
当時の婚約相手がまともな人だったらそんなことにもならなかったのかもしれない。
今更エウレス皇国の心配をしても仕方がないが、ラファエルが皇王になってしまった以上、滅ぶのも時間の問題なんじゃないだろうか。
そんな予感がしていたのだった。
「なんだって⁉︎」
「驚くことでもないでしょう? 我々の国がそちらの国から水を購入する際、一杯銀貨三枚と言っていたではありませんか。半額以下で驚いているのですか?」
「ぐ……それは……」
そんな高値で水を買い取っていたなんて知らなかった。
銀貨一枚で水を買うにしても、樽十個分くらいが相場なはず。
ぼったくりもいいところだ。
カルム様はあえてラファエルにそう提案しているだけだとは思うが。
「仕方がない。銀貨一枚で水をくれ」
ラファエルは、水を勢いよく飲み干した。
すると、生き返ったような表情をしていた。
「カルム王よ、取引がしたい」
「どんな取引を?」
「リリアを返してほしいのだ」
「却下だ!」
カルム様は即答で返事をした。
だが、ラファエルは必死に喰いついてきたのだ。
「仕方がない……。受け取った財宝の三分の一を返すからどうだ?」
「却下だ!」
またしても即答だ。
痺れを切らしたラファエルは、徐々に顔が強張っていく。
「そもそも、カルム王がリリアが聖女だと言わないで取引を持ちかけたのだろう⁉︎ こんな卑怯なやり方で奪って満足か?」
「何をおっしゃっているのですか。私は何度も確認しましたよ? リリアは聖女でその力は偉大だと。それでもリリアを捨てるというのなら、国の財宝を渡してでも引き取りたいと」
「そうだっけ……?」
「貴国の大臣たちも私の発言で笑っていましたよね。よく覚えていますとも」
「過去のことはどうでもよい。ともかく、現在我が国は雨が降らず大変なのだ。リリアが必要になってしまったのだよ」
あまりにも図々しく身勝手な発言ばかりだったから、つい私も声を出してしまった。
「またあの地獄のような生活を考えたら戻る気にはなれません。それに、今はこうしてカルム様の側に付き添うことが私の使命でありますのでお引き取りください」
「なんだと⁉︎ 貴様、私に対しては何も身体の奉仕をしなかったくせにその薄っぺらい体格の男は抱くとでもいうのか⁉︎」
「はぁ……そんなことをこの場で言うとはな。ラファエル皇王には呆れてしまうよ」
カルム様が大きくため息を吐いた。
「今をもって宣言する。金輪際エウレス皇国とは二度と関わらぬ。国交断絶だ。其方も二度とこの地に足を踏み入れるでないぞ!」
「い、いや、それは困る。このままでは私は皇王としてやれず、民も隣国へ移民してしまうかもしれないんだ」
「リリアに対しての暴挙、失言。本来ならばこの場で処刑になることをしたのだぞ」
カルム様がこんなにも声を荒げているなんて初めてだ。
私のことでここまで怒ってくれることが嬉しいが、少々怖い部分もある。
「くそう……人の弱みにつけこみおって……」
「おっと、我が国でも移民の受け入れは構わぬぞ? ただし、聖女リリアのことを悪く言うような者は拒否する」
「おのれ……。誰がこんな国に助けを求めるものか!」
ラファエルは悔しそうな表情をしながら玉座の間から姿を消した。
「ふぅ……。ところでリリアよ、あぁは言ったものの民は心配だ。やはりエウレス皇国にまで水の加護を与えるのは難しいのか?」
「無理ですね……。距離が離れていますし、それに元々エウレス皇国は本来ここよりも人が住めるような環境ではなかったと聞いたことがあります」
「そうか。あのような者が皇王でなければ、向こうとも仲良くすることだってできたかもしれぬというのに。だが、いずれあの者は皇王の座から下されそうな気もするがな……」
「国のためにはその方がいいんですけれどね」
当時、私はエウレス皇国の王族貴族、そして民衆からも散々酷い言葉をかけられてきた。
当時の婚約相手がまともな人だったらそんなことにもならなかったのかもしれない。
今更エウレス皇国の心配をしても仕方がないが、ラファエルが皇王になってしまった以上、滅ぶのも時間の問題なんじゃないだろうか。
そんな予感がしていたのだった。
あなたにおすすめの小説
ゴースト聖女は今日までです〜お父様お義母さま、そして偽聖女の妹様、さようなら。私は魔神の妻になります〜
嘉神かろ
恋愛
魔神を封じる一族の娘として幸せに暮していたアリシアの生活は、母が死に、継母が妹を産んだことで一変する。
妹は聖女と呼ばれ、もてはやされる一方で、アリシアは周囲に気付かれないよう、妹の影となって魔神の眷属を屠りつづける。
これから先も続くと思われたこの、妹に功績を譲る生活は、魔神の封印を補強する封魔の神儀をきっかけに思いもよらなかった方へ動き出す。
婚約破棄の上に家を追放された直後に聖女としての力に目覚めました。
三葉 空
恋愛
ユリナはバラノン伯爵家の長女であり、公爵子息のブリックス・オメルダと婚約していた。しかし、ブリックスは身勝手な理由で彼女に婚約破棄を言い渡す。さらに、元から妹ばかり可愛がっていた両親にも愛想を尽かされ、家から追放されてしまう。ユリナは全てを失いショックを受けるが、直後に聖女としての力に目覚める。そして、神殿の神職たちだけでなく、王家からも丁重に扱われる。さらに、お祈りをするだけでたんまりと給料をもらえるチート職業、それが聖女。さらに、イケメン王子のレオルドに見初められて求愛を受ける。どん底から一転、一気に幸せを掴み取った。その事実を知った元婚約者と元家族は……
〖完結〗聖女の力を隠して生きて来たのに、妹に利用されました。このまま利用されたくないので、家を出て楽しく暮らします。
藍川みいな
恋愛
公爵令嬢のサンドラは、生まれた時から王太子であるエヴァンの婚約者だった。
サンドラの母は、魔力が強いとされる小国の王族で、サンドラを生んですぐに亡くなった。
サンドラの父はその後再婚し、妹のアンナが生まれた。
魔力が強い事を前提に、エヴァンの婚約者になったサンドラだったが、6歳までほとんど魔力がなかった。
父親からは役立たずと言われ、婚約者には見た目が気味悪いと言われ続けていたある日、聖女の力が覚醒する。だが、婚約者を好きになれず、国の道具になりたくなかったサンドラは、力を隠して生きていた。
力を隠して8年が経ったある日、妹のアンナが聖女だという噂が流れた。 そして、エヴァンから婚約を破棄すると言われ……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
ストックを全部出してしまったので、次からは1日1話投稿になります。
ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。
聖女の座を奪われてしまったけど、私が真の聖女だと思うので、第二の人生を始めたい! P.S.逆ハーがついてきました。
三月べに
恋愛
聖女の座を奪われてしまったけど、私が真の聖女だと思う。だって、高校時代まで若返っているのだもの。
帰れないだって? じゃあ、このまま第二の人生スタートしよう!
衣食住を確保してもらっている城で、魔法の勉強をしていたら、あらら?
何故、逆ハーが出来上がったの?
偽りの家族を辞めます!私は本当に愛する人と生きて行く!
ユウ
恋愛
伯爵令嬢のオリヴィアは平凡な令嬢だった。
社交界の華及ばれる姉と、国内でも随一の魔力を持つ妹を持つ。
対するオリヴィアは魔力は低く、容姿も平々凡々だった。
それでも家族を心から愛する優しい少女だったが、家族は常に姉を最優先にして、蔑ろにされ続けていた。
けれど、長女であり、第一王子殿下の婚約者である姉が特別視されるのは当然だと思っていた。
…ある大事件が起きるまで。
姉がある日突然婚約者に婚約破棄を告げられてしまったことにより、姉のマリアナを守るようになり、婚約者までもマリアナを優先するようになる。
両親や婚約者は傷心の姉の為ならば当然だと言う様に、蔑ろにするも耐え続けるが最中。
姉の婚約者を奪った噂の悪女と出会ってしまう。
しかしその少女は噂のような悪女ではなく…
***
タイトルを変更しました。
指摘を下さった皆さん、ありがとうございます。
私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!
近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。
「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」
声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。
※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です!
※「カクヨム」にも掲載しています。
婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない
nanahi
恋愛
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?