【完結】聖女レイチェルは国外追放されて植物たちと仲良く辺境地でサバイバル生活します〜あれ、いつのまにかみんな集まってきた。あの国は大丈夫かな

よどら文鳥

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21話【Side】みんな辺境地へ

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 王都にて異変が起きていた。
 事態を重く受け止めた国王は、再び緊急会議を招集する。

「宰相よ、いったいどういうことだ? 王都から別の場所への移民希望が殺到しているではないか」
「妙な噂が流れているようです。例のゴミ同然として処分した辺境地で観光事業を始めたようで……。どうやら国を捨てて辺境国へと逃げる者が殺到のようです」

「バカか。俺も過去に一度、辺境地へ視察しに行ったことがあるが、草木生えていない地獄のような場所だった。わざわざそのようなところへ観光しにいくなど……、民衆どもは地獄のような環境を望むのか?」

 すでに国の予算は底をついていた。
 そのうえ人がいなくなってしまったことで税が入らなくなる。
 国王にとっては大打撃であった。

「植物のゆくえ調査はどうなっている? 辺境地にも送っただろう?」
「奇妙なことに、馬車だけが戻ってきていまして……」
「ばかな!! 馬だけが勝手に動くように育てたわけがないだろうが!! いや、それとも……」

 国王は辺境地で苦しい思いをした経験がある。
 命を落としてしまうかもしれないと思ったくらいだ。
 だからこそ、あらぬ方向に考えてしまうのだった。

「人を捨てて馬が逃げたか、もしくは人間が耐えられずに朽ちたのだろう。自力で帰ってこれるとは、さすが王宮で管理している馬だけのことはあって優秀だな」
「いえ、そういうことではないかと思うのですが……」

「宰相は俺の判断が間違っているとでもいうのか? そんなことよりも、一人でも王都に残すよう努力をさせるよう部下に命令して欲しいものだが」
「申しわけ……ございません。しかしながら、これ以上の国家予算を使うわけにはいきません。現場の我が国では、残りの予算で食料の仕入れをしなければなりませぬ」
「くそう、次から次へと余計な出費ばかり……」

 国王は苦悩していた。
 なにがなんでも野菜や植物を盗んだ犯人を捕まえ、人口が減った分の税の回収にだけ全力で考えていた。

 しかし数日後、国王にとって自体は最悪の方向へ進んでしまったのだった。



「ばばばばばば……ばかな……」

 国王は残された下っ端兵たちとともに唖然としていた。
 宰相までもが置き手紙だけを残して王都を去ってしまったのだ。

「植物や野菜が自らの意思で王都を出ただと……!? そんなバカな話があってたまるか」
「それだけではないっすよ。辺境地では楽園のような環境に変化しているようで、それを知った民どもはそちらへ逃げるように……」
「く……。まさか宰相までも裏切るとは」

 残された王都の人間たちだけで復興していくしか手段はなくなった。
 だが、まともな民間人のほとんどがフォラント公国へ移民している。
 残っている大半が荒くれ者や、国王の無茶な政策に対して報復を企んでいる者しかいないのだった。

「聖女っていたじゃあないっすか。どうやら、あの女が植物を元気にしたり会話したりしてこの王都に呼び寄せていたらしいっす」
「なんだと?」
「国王様は聖女は天候を変える存在だと民間人に教えを説いてたでしょう? そのせいで真実を知った民間人は大激怒。国を捨ててでも聖女のいる辺境地へ行ったんでしょうね」
「ふざけるでない! あの女はそのようなことを……」

 国王はここで初めて言い淀んだ。
 ふと、聖女レイチェルを追放した日の会話のやりとりを冷静に思い出していた。

「あの日、俺は頭に血がのぼっていたからろくに会話も聞かなかったが……。まさか、あのときレイチェルは自身の聖女のことを……」
「あぁ、心当たりあるんすね。じゃあ俺らもこんな王宮で仕えるのもばかばかしいんで消えますわ。お達者で」
「ちょっと待て! きさまらのような平民でも王宮で雇ってやったのだぞ。裏切るつもりか!?」
「そりゃあ最初はすげー仕事だと思って食いつきましたよ。でも、ろくに給金もねーし、この有様じゃあいずれ王都は滅びるでしょう。そんなところで仕えても意味ねーんで。俺らもどうにかして辺境地へ向かうつもりっす」

 国王はわらにすがる勢いで残された民間人を王宮に仕えさせた。
 今までまともに働いていたものは全員王都から離脱している。
 だが、せっかくやとった民間人ですら、まともに言うことなどできないほど国王への信頼がガタ落ちだった。

 国王は、ようやくことの重大さに気が……つくこともなかったのである。

「おのれ、どいつもこいつも俺の命令を聞けないクズどもめ。勝手にするが良い。そのかわり、支払う予定の給金も全て取り消しとする」
「別にいいっすよ。あ、短期間とはいえ王宮に立ち入れたんでお礼に良いことを教えてやりますよ。国王様のクビを狙っているやつら、大勢いるんで気をつけたほうがいいっすよ」
「な!?」

 下っ端兵は、そう言い残して王宮を去った。
 残された国王は、外に出ることもできず恐怖でなにもできなかったのだ。

 以後、王都に残された人々ですら国王の行方を見た者は誰もいなかった。
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