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5 団長は見てしまった
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騎士として、どんな心情だろうが感情を持っていようとも、常に一定の実力を発揮していなければならない。
討伐任務になったとき、一瞬の油断や緊張の乱れが命に関わることもある。
さらには自分だけでなく周りの者達にまで被害が及ぶ可能性があるのだ。
だが、レントの悪態を知った直後ではさすがに普段通りに……というわけにはいかなかった。
模造刀の動きが普段よりも乱れてしまっている。
「どうした? シャーリー殿にしては珍しくぎこちないな」
私の動きにいち早く気がついたのはサーバー団長だ。
私の方へ近づき心配そうな表情をしている。
「申し訳ありません。わかってはいるんですが、私情が絡みました」
「完璧なはずのシャーリー殿ですら動きに乱れを起こさせてしまうとは……。レント氏も侮れんな」
「少し休んでも?」
「構わん」
今日のサイバー団長は不気味に優しい。
普段だったら「こんなことで休むなど騎士として恥を知れ」などと言っているはずだ。
隅に設置されている椅子に腰掛け深いため息を吐く。
団長も一緒に、そばにある椅子に腰掛けた。
「実はな……。酔っ払ってフラフラのレント氏を昨日の夜見かけたんだ。外なのにとんでもない行為までな」
「あぁ……マーヤという名前の女と一緒にいたんでしょうね」
「いや、よくは聞こえなかったが、サオリと読んでいたが」
「一晩で何人の女と……!!」
胃が破けそうなくらいストレスを感じる。
レントに対しては恋愛感情のカケラも感じなくなっている。
それでも、今までどうしてもっと早く気が付けなかったのかという情けなさからストレスを感じているのかもしれない。
「一応証拠として魔道具に映像を収めといたが」
「ありがとうございます」
「いや、俺も疑われている身だからな。自己防衛のために撮影させてもらっただけだ」
もう十分すぎるほどの証拠が集まっている。
あとは手続きだけ申し込めば離婚は当然として、慰謝料も相当な額を請求できるだろう。
これほどまでの不倫行為ならば今後レントが一生懸命働いたとしても払える額ではないような気がしてくる。
私の知ったことじゃないが。
「ここまでされると吹っ切れてきますね……。訓練に戻りますね」
レントはそういう男だった、離れてしまえば私は自由、そう思えば気持ちが楽になった。
「シャーリー殿は強いな。騎士とはいえ、家族に関することならば例外として優先するようにして良いとしているんだが、もちろん今回のような件でも精神的苦痛は想像を絶するだろう」
「そんなルールがあることは知りませんでした」
「表向きには皆に伝えていない。だが、家族は第一に優先するのが当然だ。家族を守れんような奴が騎士など務まるはずもあるまい」
「私の場合は相手のやっていたことが凄すぎたので精神的苦痛どころか呆れてしまったので吹っ切れたのかもしれませんね」
苦笑いをしながら訓練に戻った。
訓練は普段通りの動きに戻れた。
もう大丈夫だ。
本日の騎士としての任務が終わったあと、早速裁判の手続きを依頼してあっさりとやりとりが進んだ。
証拠見届け人として朝家に呼んでいた人がここで働いているということと、小さな村だから悪い噂が既に広まっていたのだ。
容赦ない準備が進んでいく。
討伐任務になったとき、一瞬の油断や緊張の乱れが命に関わることもある。
さらには自分だけでなく周りの者達にまで被害が及ぶ可能性があるのだ。
だが、レントの悪態を知った直後ではさすがに普段通りに……というわけにはいかなかった。
模造刀の動きが普段よりも乱れてしまっている。
「どうした? シャーリー殿にしては珍しくぎこちないな」
私の動きにいち早く気がついたのはサーバー団長だ。
私の方へ近づき心配そうな表情をしている。
「申し訳ありません。わかってはいるんですが、私情が絡みました」
「完璧なはずのシャーリー殿ですら動きに乱れを起こさせてしまうとは……。レント氏も侮れんな」
「少し休んでも?」
「構わん」
今日のサイバー団長は不気味に優しい。
普段だったら「こんなことで休むなど騎士として恥を知れ」などと言っているはずだ。
隅に設置されている椅子に腰掛け深いため息を吐く。
団長も一緒に、そばにある椅子に腰掛けた。
「実はな……。酔っ払ってフラフラのレント氏を昨日の夜見かけたんだ。外なのにとんでもない行為までな」
「あぁ……マーヤという名前の女と一緒にいたんでしょうね」
「いや、よくは聞こえなかったが、サオリと読んでいたが」
「一晩で何人の女と……!!」
胃が破けそうなくらいストレスを感じる。
レントに対しては恋愛感情のカケラも感じなくなっている。
それでも、今までどうしてもっと早く気が付けなかったのかという情けなさからストレスを感じているのかもしれない。
「一応証拠として魔道具に映像を収めといたが」
「ありがとうございます」
「いや、俺も疑われている身だからな。自己防衛のために撮影させてもらっただけだ」
もう十分すぎるほどの証拠が集まっている。
あとは手続きだけ申し込めば離婚は当然として、慰謝料も相当な額を請求できるだろう。
これほどまでの不倫行為ならば今後レントが一生懸命働いたとしても払える額ではないような気がしてくる。
私の知ったことじゃないが。
「ここまでされると吹っ切れてきますね……。訓練に戻りますね」
レントはそういう男だった、離れてしまえば私は自由、そう思えば気持ちが楽になった。
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苦笑いをしながら訓練に戻った。
訓練は普段通りの動きに戻れた。
もう大丈夫だ。
本日の騎士としての任務が終わったあと、早速裁判の手続きを依頼してあっさりとやりとりが進んだ。
証拠見届け人として朝家に呼んでいた人がここで働いているということと、小さな村だから悪い噂が既に広まっていたのだ。
容赦ない準備が進んでいく。
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