【完結】用済みで殺されかけた魔女が幸せを掴んでのんびり暮らすまで〜全属性魔法を使いこなし、王様の不治の病を治したら重宝されました〜

よどら文鳥

文字の大きさ
5 / 40

5話 ソフィアは騎士と対談する

しおりを挟む
「うぅぅ……。あれ?」

 もふもふ。
 目を覚ますと地面がふかふかしていて気持ちよかった。
 どうやら天国に来たようだ。

 と……思ったのは気のせいだったのかもしれない。
 ふと周りを見てみると、さっき逃げていた一人の男が腕を組みながら目を瞑っていたのだ。

 私の目覚めに気がついたのか、すぐに目を覚ました。

「よかった。お目覚めのようですね」
「あれ……? 私……たしかケルベロスに殺されたはずでは」

 寝ぼけながら目をこすっていたら、男はクスクスと笑みを浮かべる。

「あなたのおかげで我々騎士団と護衛していた王女は救われたのですよ。ありがとうございました」
「救った……? えぇと、もしかして私がケルベロスを倒してしまったとか?」
「そうですよ、覚えていないのでしょうか? あれほどの火炎魔法は初めて見ました」

 初めての魔法だったしガムシャラだったからなぁ……。
 きっとまぐれ、もしくは初回限定サービスのようなもので一度だけは高火力なエネルギーを出せたのかもしれない。
 おそらく、私は魔法の発動で魔力を使い果たしてしまい倒れたのだろう。

「あなたが私を助けてくれたのですか?」
「はは、何度も言いますが助けられたのは私たちです。もっとも、倒れてしまったあなたを王宮へ運んだのは我々騎士団でありますが」
「王宮……!? ということは、ここは王都ですか?」
「そうですよ」

 なんというラッキーな展開!?
 命が助かった上に、いつのまにか目標だった王都へ運んでいただけたらしい。
 しっかりと周囲を見てみると、ふかふかの正体は高級そうなベッド。
 今まで奴隷任務のあとは外で寝る日々だったから、ベッドがこんなにもふかふかしているなんて知らなかった。
 それに、剣で斬られてボロボロだった服ではなく、綺麗な服に変化していた。

「ありがとうございます。申し遅れましたが私はソフィアです」
「騎士団のアーヴァインと申します。あ、まだゆっくりと休まれたほうが良いでしょう。魔力の枯渇で倒れたようですからね。十日ほどはゆっくりされたほうが良いかと」
「私、いったいどれくらい気を失っていましたか?」

 本の知識しかないが、魔力の枯渇だとしたら十日以上は目眩や吐き気、頭痛を伴い、立ち上がることさえ大変らしい。
 だが、私の身体にそのような症状は一切ない。

 ケルベロスに魔法をかけた場所は、王都が全く見えないようなところで、目を覚ました今はベッドの上。
 既に十日以上は経過しているのではないだろうか。

「三日ですね。ここの客間の使用許可は降りていますので、ゆっくり休んでください」
「三日ですか!?」
「そんなに驚かなくとも……。それともなにか大事な予定でも?」
「い……、いえ。そうではないのですが……」

 これは気まずいことになった。
 私が気を失った原因は魔力の枯渇ではないからだ。
 きっと、おっかないモンスターを目の当たりにして失神でもしてしまったのだろう。
 しかも三日間も意識を失った上に騎士団から失神の介護までしてしていただいて……。

「申し訳ありません……」
「なぜ謝るのです?」
「私の倒れた原因が恐怖による失神だからです。それなのに迷惑をかけてしまって……」
「ソフィアさんが倒れてしまった直後に同行していた医師にも診てもらいましたが、魔力の枯渇だと言っていましたよ」
「へ……? でも私、もう元気ですよ。ほら」

 ベッドから起き上がり、歩いてみた。
 私の身体になんら異常はなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

家族から冷遇されていた過去を持つ家政ギルドの令嬢は、旦那様に人のぬくもりを教えたい~自分に自信のない旦那様は、とても素敵な男性でした~

チカフジ ユキ
恋愛
叔父から使用人のように扱われ、冷遇されていた子爵令嬢シルヴィアは、十五歳の頃家政ギルドのギルド長オリヴィアに助けられる。 そして家政ギルドで様々な事を教えてもらい、二年半で大きく成長した。 ある日、オリヴィアから破格の料金が提示してある依頼書を渡される。 なにやら裏がありそうな値段設定だったが、半年後の成人を迎えるまでにできるだけお金をためたかったシルヴィアは、その依頼を受けることに。 やってきた屋敷は気持ちが憂鬱になるような雰囲気の、古い建物。 シルヴィアが扉をノックすると、出てきたのは長い前髪で目が隠れた、横にも縦にも大きい貴族男性。 彼は肩や背を丸め全身で自分に自信が無いと語っている、引きこもり男性だった。 その姿をみて、自信がなくいつ叱られるかビクビクしていた過去を思い出したシルヴィアは、自分自身と重ねてしまった。 家政ギルドのギルド員として、余計なことは詮索しない、そう思っても気になってしまう。 そんなある日、ある人物から叱責され、酷く傷ついていた雇い主の旦那様に、シルヴィアは言った。 わたしはあなたの側にいます、と。 このお話はお互いの強さや弱さを知りながら、ちょっとずつ立ち直っていく旦那様と、シルヴィアの恋の話。 *** *** ※この話には第五章に少しだけ「ざまぁ」展開が入りますが、味付け程度です。 ※設定などいろいろとご都合主義です。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】熟成されて育ちきったお花畑に抗います。離婚?いえ、今回は国を潰してあげますわ

との
恋愛
2月のコンテストで沢山の応援をいただき、感謝です。 「王家の念願は今度こそ叶うのか!?」とまで言われるビルワーツ侯爵家令嬢との婚約ですが、毎回婚約破棄してきたのは王家から。  政より自分達の欲を優先して国を傾けて、その度に王命で『婚約』を申しつけてくる。その挙句、大勢の前で『婚約破棄だ!』と叫ぶ愚か者達にはもううんざり。  ビルワーツ侯爵家の資産を手に入れたい者達に翻弄されるのは、もうおしまいにいたしましょう。  地獄のような人生から巻き戻ったと気付き、新たなスタートを切ったエレーナは⋯⋯幸せを掴むために全ての力を振り絞ります。  全てを捨てるのか、それとも叩き壊すのか⋯⋯。  祖父、母、エレーナ⋯⋯三世代続いた王家とビルワーツ侯爵家の争いは、今回で終止符を打ってみせます。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結迄予約投稿済。 R15は念の為・・

婚約破棄されましたが、お兄様がいるので大丈夫です

榎夜
恋愛
「お前との婚約を破棄する!」 あらまぁ...別に良いんですよ だって、貴方と婚約なんてしたくなかったですし。

聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~

夏見ナイ
恋愛
侯爵令嬢リリアーナは、王太子に「地味で役立たず」と婚約破棄され、食糧難と魔物に脅かされる最果ての辺境へ追放される。しかし彼女には秘密があった。それは前世日本の記憶と、食べた者を癒し強化する【奇跡の料理】を作る力! 絶望的な状況でもお人好しなリリアーナは、得意の料理で人々を助け始める。温かいスープは病人を癒し、栄養満点のシチューは騎士を強くする。その噂は「氷の辺境伯」兼騎士団長アレクシスの耳にも届き…。 最初は警戒していた彼も、彼女の料理とひたむきな人柄に胃袋も心も掴まれ、不器用ながらも溺愛するように!? さらに、美味しい匂いに誘われたもふもふ聖獣たちも仲間入り! 追放令嬢が料理で辺境を豊かにし、冷徹騎士団長にもふもふ達にも愛され幸せを掴む、異世界クッキング&溺愛スローライフ! 王都への爽快ざまぁも?

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。

112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。 エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。 庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──

学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?

今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。 しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。 が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。 レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。 レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。 ※3/6~ プチ改稿中

【完結】本物の聖女は私!? 妹に取って代わられた冷遇王女、通称・氷の貴公子様に拾われて幸せになります

Rohdea
恋愛
───出来損ないでお荷物なだけの王女め! “聖女”に選ばれなかった私はそう罵られて捨てられた。 グォンドラ王国は神に護られた国。 そんな“神の声”を聞ける人間は聖女と呼ばれ、聖女は代々王家の王女が儀式を経て神に選ばれて来た。 そして今代、王家には可愛げの無い姉王女と誰からも愛される妹王女の二人が誕生していた…… グォンドラ王国の第一王女、リディエンヌは18歳の誕生日を向かえた後、 儀式に挑むが神の声を聞く事が出来なかった事で冷遇されるようになる。 そして2年後、妹の第二王女、マリアーナが“神の声”を聞いた事で聖女となる。 聖女となったマリアーナは、まず、リディエンヌの婚約者を奪い、リディエンヌの居場所をどんどん奪っていく…… そして、とうとうリディエンヌは“出来損ないでお荷物な王女”と蔑まれたあげく、不要な王女として捨てられてしまう。 そんな捨てられた先の国で、リディエンヌを拾ってくれたのは、 通称・氷の貴公子様と呼ばれるくらい、人には冷たい男、ダグラス。 二人の出会いはあまり良いものではなかったけれど─── 一方、リディエンヌを捨てたグォンドラ王国は、何故か謎の天変地異が起き、国が崩壊寸前となっていた…… 追記: あと少しで完結予定ですが、 長くなったので、短編⇒長編に変更しました。(2022.11.6)

処理中です...