【完結】用済みで殺されかけた魔女が幸せを掴んでのんびり暮らすまで〜全属性魔法を使いこなし、王様の不治の病を治したら重宝されました〜

よどら文鳥

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ソフィアはまた褒められる

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「まさか彼らがすぐに動くとは予想外でしたよ……。もう少し計画的に指揮するかと思っていたのですが……」
「お気になさらず……」
「陛下の横にいた魔導師を捕らえるのに時間がかかってしまい、結果的にソフィア様を危険な目にあわせてしまいました。申し訳ありません」
「捕まえたのですね」
「これだけ十分な証拠がありますから。今まで陛下からも悪事を暴き証拠を掴めれば捕らえるよう頼まれてはいました。今回ソフィア様のおかげで捕まえられたようなものです」

 こんな形で役に立てたなら、まぁいいか。
 それよりも、私は先程のアーヴァイン様の機敏な動きが脳裏から離れないでいた。

「さきほどのアーヴァイン様、とてもカッコ良かったです」
「な……、なにを言っているのですか。当然のことをしたまでです」

 アーヴァイン様が当然のように言っている仕草もかっこいい。
 というか、なにをしてもかっこいい。

「これからはなにがあろうとも、ソフィア様のそばから離れないような作戦を立てていくよう心がけたいと思います」
「つまり、ずっと一緒にいられるということですか?」
「まぁ……、そういうことです」

 嬉しすぎてとろけてしまいそうだ。
 捕らえられた一味が連行されていくところを見ながら、私はアーヴァイン様と手を繋ぎながら見送っていた。

 ♢

「ソフィア殿よ、此度の貢献もまことに感謝する」
「いえ、今回私はなにもしていませんので……」

 また玉座の間で国王陛下から感謝されてしまった。
 今回は先日の襲撃にあって返り討ちにした件である。
 だが、これに関しては私はほとんどなにもしていないし、アーヴァイン様たち騎士団が捕まえたのだ。

「ソフィア殿だからこそ頼れる部分もあった。おかげで魔導師たちを一網打尽にできたうえ、さらなる発見もあったのだ」
「そうなんですか……。それはそれは……」
「だが、少々ソフィア殿に関係する酷な発見でもあってだな……」

 国王陛下が珍しく悩ましい表情を浮かべていた。

「まずはひとつ謝ることがある。ソフィア殿の過去を知ってしまったのだ」
「あ……はい。なんとなく予想はしていました」
「その上で、ゼノ伯爵に関しては、国から制裁を加えることとなった。魔導師と深く関わりがあったのでな」
「そうだったのですか……」
「そこで、ひとつ頼みたいことがある」

 国王陛下からお願いされることは慣れてきた。
 私も喜んで協力はしたい。
 なにをお願いされるのだろう。

「情報によれば、ゼノ伯爵の管理している領地の周りがモンスターで埋め尽くされ、中に入ることができない状況らしい。そこで、ソフィア殿にも領地へ向かって欲しい」
「いつの間に……?」
「ソフィア殿の力が領地になくなったからだと弟は言っていた」
「そう言われてみれば、私にはモンスターを寄せ付けない力があると教えてもらってましたね……」

 伯爵の管理している領地が大変なことになっているなんて知らなかった……。
 だが、モンスターを寄せ付けない私が領地に行ったとしても、討伐はできないだろう。
 なんのために行くのか陛下に聞いてみた。

「モンスターを無理に倒す目的ではない。ソフィア殿がいれば安全に現地へ向かい、帰ることもできるのであろう?」
「多分そうだと思います」
「今回は、伯爵の逮捕にともない、領地の民も混乱を招く。そのため、王都から何人か領地の管理をさせる者を派遣させる。極力安全な移動が大事なのだよ。これはソフィア殿にしかできない頼みだ」
「わかりました。領地まで安全に移動できるよう、私も同行します」
「すまないが、よろしく頼む」

 久しぶりに故郷へ帰ることになるのか。
 ゼノ伯爵とは二度と会いたくはなかったが、彼を捕らえる目的ならば協力しなければという気持ちになってしまった。
 私もゼノ伯爵に対しては怒りがないわけではないのだから。

 ♢

「アーヴァイン様も一緒に行けるのですね!」
「もちろんです。ソフィア様のそばから離れないと言ったでしょう」

 目的が目的なだけに、笑顔で喜ぶわけにはいかない。
 だが心の中では、むしろ楽しい旅になるのではないかとウキウキさえしてしまった。
 いつもの騎士団メンバーと、領地へ派遣させる人たちで目的地へ向かった。

 もし、私がまだ元気に生きていて、王都で楽しく生活していることをゼノ伯爵が知ったら、どんな顔をするのだろうか……。
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