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「レイナお姉様……今の婚約者は無理なんです。ですから代わってください!」
「え? アルミアが望んで私の婚約を変えたのに、なぜです?」
「会うたびにうるっさくてたまらないんです! 毎回毎回お説教ばっかり。……ほんっとうに嫌なんです!」
なんだ、いつものワガママか。
私レイナ=ファルアーヌは、妹のワガママには毎回手をやいている。
アルミアがどうしてもとワガママをゴネ続け、両親が私の婚約者を無理やり変更したのだ。
そのお相手はジュライト=グレス公爵令息。
グレス様と一度しかお会いしたことはなかったが、人情があり優しく、物腰が低い。
そのようなグレス様だからこそ、なぜ婚約変更を受け入れたのかが気になっている。
もしかしたら、私が失礼なことをしていて愛想をつかせてしまったのかもしれないし。
「例えばどのようなことでお説教されたのですか?」
「えぇと……使用人さんが身につけていた綺麗なネックレスが欲しいって言ったら、婚約者に貰ったものだからダメと言われました。グレスさんに、その使用人さんをクビにして欲しいと文句を言ったら、怒られました」
食事のメニューが気に入らないだとか、社交ダンスのレッスンがめんどくさいだとか、公爵夫人教育がうんざりだとか。
アルミアのワガママが原因で、グレス様やグレス公爵たちがお説教をしたのだろう。改善しようと注意したのだから、むしろ良い人たちだと思う。
いっぽう私は……アルミアのワガママには何度も注意してきたことがあったが、今はなにも言えない立場だ。
アルミアのことを溺愛している両親から、厳しすぎる、もっと優しく、お姉ちゃんなのだから我慢しなさいなどと言われ続けてきた。
アルミアへ注意したことが原因で、両親の炎魔法で私の背中に火傷を負わされ、さらに氷結魔法で凍らされるなどといったことも。
このままだと命の危険もと感じてしまった。
それでも今回ばかりは言わなければ……。グレス様たちに迷惑をかけてしまうのはダメだ。
「……人の物を奪ったらダメですよ?」
「なっ!? レイナお姉様ってば酷すぎですわ! こんなにもわたくしの心はボロボロなのに、その上お説教ですか……!」
あ……これは危険なパターンだ。
アルミアが泣き崩れ、物にあたり始めた。
ここは私の部屋なんだけど……。
アルミアが、私の大事にしている装飾品にガンッと腕でなぎ払う。
その衝撃で装飾品が落ちてガシャンと割れてしまった。
割れたガラスがアルミアにもあたってしまったかもしれない。
「怪我はしていませんか!?」
「い……痛い! 血が出てきましたわ……」
えぐい音が鳴っていたからな……、よほど力を入れてしまったのだろう。その衝撃で手は紫色に変色し、足首はガラスが刺さった影響からか出血していた。
すぐに手当てをしなければと思い助けようとしたのだが、それをアルミアは拒んだ。
「全部……全部レイナお姉様のせいです! こんなに弱ったわたくしをいじめてくるのですから!」
今回ばかりは引き下がることはできない。
私一人にならば構わないけれど、迷惑をかける相手が別にいる。
「……今度ばかりはお相手側の判断も必要になってきますから。私個人ではどうすることもできませんよ」
「だったらお父様にお願いしてきます!」
そう言ってアルミアは痛そうな手をかばいながら、退室した。
無残に飛び散ったガラスを集め、私は一人ため息をつく。
「またお説教ですね……。もうファルアーヌ家から逃げたい……」
お父様とお母様はアルミアのことを溺愛しているため、彼女の言うことはなんでも聞いてしまう。
いっぽう私は、とある事件がきっかけで、娘扱いされなくなった。
家から逃げたいと思っても、貴族教育をほとんど受けさせてもらえなかったため、ほとんどが独学。
十六歳になっていながら夜会などの経験もなければ、人との交流すら滅多にさせてもらえない。
家にこもりっきりでやっていることと言えば、家の掃除や洗濯など。余った時間で魔導書を読んで勉強している。
いつか私が逃げ出した時に魔法を使えるようにするためだ。
ついにその時がやってきたのかもしれないと思っていた。
だが今回の婚約変更騒動が、私の人生を大きく変える出来事だったのだ。
「え? アルミアが望んで私の婚約を変えたのに、なぜです?」
「会うたびにうるっさくてたまらないんです! 毎回毎回お説教ばっかり。……ほんっとうに嫌なんです!」
なんだ、いつものワガママか。
私レイナ=ファルアーヌは、妹のワガママには毎回手をやいている。
アルミアがどうしてもとワガママをゴネ続け、両親が私の婚約者を無理やり変更したのだ。
そのお相手はジュライト=グレス公爵令息。
グレス様と一度しかお会いしたことはなかったが、人情があり優しく、物腰が低い。
そのようなグレス様だからこそ、なぜ婚約変更を受け入れたのかが気になっている。
もしかしたら、私が失礼なことをしていて愛想をつかせてしまったのかもしれないし。
「例えばどのようなことでお説教されたのですか?」
「えぇと……使用人さんが身につけていた綺麗なネックレスが欲しいって言ったら、婚約者に貰ったものだからダメと言われました。グレスさんに、その使用人さんをクビにして欲しいと文句を言ったら、怒られました」
食事のメニューが気に入らないだとか、社交ダンスのレッスンがめんどくさいだとか、公爵夫人教育がうんざりだとか。
アルミアのワガママが原因で、グレス様やグレス公爵たちがお説教をしたのだろう。改善しようと注意したのだから、むしろ良い人たちだと思う。
いっぽう私は……アルミアのワガママには何度も注意してきたことがあったが、今はなにも言えない立場だ。
アルミアのことを溺愛している両親から、厳しすぎる、もっと優しく、お姉ちゃんなのだから我慢しなさいなどと言われ続けてきた。
アルミアへ注意したことが原因で、両親の炎魔法で私の背中に火傷を負わされ、さらに氷結魔法で凍らされるなどといったことも。
このままだと命の危険もと感じてしまった。
それでも今回ばかりは言わなければ……。グレス様たちに迷惑をかけてしまうのはダメだ。
「……人の物を奪ったらダメですよ?」
「なっ!? レイナお姉様ってば酷すぎですわ! こんなにもわたくしの心はボロボロなのに、その上お説教ですか……!」
あ……これは危険なパターンだ。
アルミアが泣き崩れ、物にあたり始めた。
ここは私の部屋なんだけど……。
アルミアが、私の大事にしている装飾品にガンッと腕でなぎ払う。
その衝撃で装飾品が落ちてガシャンと割れてしまった。
割れたガラスがアルミアにもあたってしまったかもしれない。
「怪我はしていませんか!?」
「い……痛い! 血が出てきましたわ……」
えぐい音が鳴っていたからな……、よほど力を入れてしまったのだろう。その衝撃で手は紫色に変色し、足首はガラスが刺さった影響からか出血していた。
すぐに手当てをしなければと思い助けようとしたのだが、それをアルミアは拒んだ。
「全部……全部レイナお姉様のせいです! こんなに弱ったわたくしをいじめてくるのですから!」
今回ばかりは引き下がることはできない。
私一人にならば構わないけれど、迷惑をかける相手が別にいる。
「……今度ばかりはお相手側の判断も必要になってきますから。私個人ではどうすることもできませんよ」
「だったらお父様にお願いしてきます!」
そう言ってアルミアは痛そうな手をかばいながら、退室した。
無残に飛び散ったガラスを集め、私は一人ため息をつく。
「またお説教ですね……。もうファルアーヌ家から逃げたい……」
お父様とお母様はアルミアのことを溺愛しているため、彼女の言うことはなんでも聞いてしまう。
いっぽう私は、とある事件がきっかけで、娘扱いされなくなった。
家から逃げたいと思っても、貴族教育をほとんど受けさせてもらえなかったため、ほとんどが独学。
十六歳になっていながら夜会などの経験もなければ、人との交流すら滅多にさせてもらえない。
家にこもりっきりでやっていることと言えば、家の掃除や洗濯など。余った時間で魔導書を読んで勉強している。
いつか私が逃げ出した時に魔法を使えるようにするためだ。
ついにその時がやってきたのかもしれないと思っていた。
だが今回の婚約変更騒動が、私の人生を大きく変える出来事だったのだ。
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