ぼくと怪物三人組@トーキョーベイエナジーアイランド

alphapolis_20210224

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第一部 靴ひもは自分でむすぶ

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 島の夜は美しい。移植された草木はすっかり根を下ろして森になっている。ここらへんは木の間隔がひろく、ファーリーの操縦技術もあるのだろうが、パレットは引っかからず滑らかに歩いていた。
 そのうちに雲が薄くなってきて色付き視覚に充分なほどの光量になった。ゴーグルを調節して白飛びしないようにする。

 親指と人差し指を打ち合わせてタップ信号を送った。これから丘のエリアに入るので警戒態勢を一段階上げる。ここはよそのチームのなわばりだった。

 すぐにビクタからタップ信号が返ってきた。三人。前方の茂み。ウォーデもその報告を確認した。ほかにも不確定の感あり、三人だけじゃない。さて、どうする? 相手はビクタをやり過ごしてコンテナ狙いか。かといってこっちから手を出すわけにもいかない。他チームとの戦闘は目的ではない。
 ビクタには待て、ウォーデにはコンテナ近くにとタップ信号で指示した。ファーリーには通常時のように操縦しろと手振りした。パレットは速度も進路も脚運びも変えずに進み続ける。

 ぼこん、という鈍い音がしてパレットがゆれた。右前脚。ゴム弾。暴動鎮圧銃の改造ものか。ファーリーがパレットを伏せさせたと同時にウォーデが飛び出ていた。銃はガス圧式でかすかな音しかしないはずだが、場所の特定には十分だったようだ。
 それを見たビクタもどたどたと走った。ほどほどにするようタップ信号で指示しながらぼくもそっちへ行こうとした。ショックガンを抜く。
「坊っちゃんはここ」
 ファーリーがぼくと敵の間に立った。無視して前に出ようとすると、合わせて動いた。
「ガキじゃない。戦える」
「あいつらがおとりだったら? 前を見ながらうしろも見て」
 ぼくは赤くなった。戦闘の興奮で当然の行動を忘れていた。伏せたパレットの左後脚のむこうを確認する。ゴーグルの赤外線感度を上げた。

 火花が散って視界が真っ白になった。しまった、ショックガンだ。ふるえる体をなんとか抑えようとしたが、神経が誤信号を発し続けて自分の思うとおりにならない。
 ファーリーは? ウォーデ、ビクタは? いや、状況がわからないのにみんなを呼ぶわけにはいかない。
 誤信号が心臓をどうにかしたのだろう、急速に意識が遠のいていった。

 腕に叩かれるような痛みがはしった。回復薬だ。徐々にまわりが見えるようになってきた。みんなは? コンテナは?

 三人が笑っていた。

「敵は六名。対応完了。全員気絶。『丘の巨人』だった。最近のチームだね。まとめて転がしてきた。いつものようにカードはさんである。応募してくれるかな?」

 ファーリーはぼくを見下ろしている。ひざまくらされていた。あわてて起きるとみんなまた笑った。ゴーグルによると始まってから五分ほどしかたってなかった。

「気絶って言ってもちょっとは台所仕事もしたぞ。あいつらも包丁ふりまわしたし」ウォーデが手と爪の血を拭きながら言う。「それにしても、坊っちゃんの戦闘オンチも相当だな。ファーリーに聞いたが、隠れもせずに突っ立って見回してたんだって? そのせいでフィールド張るタイミングずれたって。なんでだ? 考えるのはうまいのに」

 何も言いかえせなかった。その通りだ。礼を言い、手間をかけさせた事を謝るべきだったが、ふくれっつらをしているだけだった。『戦闘オンチ』は気に食わない。

「コンバットは九十二秒。こっちダメージなし。あいつらノービス。もう歩けるか」
 ビクタはよけいな事を言い足さない。

「じゃ、行こうか」みんなにいつものおやつだ。

 全員立ち上がり、パレットも立った。

「すまない。それと、ありがとな」
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