5 / 79
第一部 靴ひもは自分でむすぶ
五
しおりを挟む
丘を登りきってしまうと届け先が見下ろせた。建物の集合体は大小さまざまな箱が群れを成しているように見える。灯火は今夜も必要最低限。この島の上空を飛ぼうなどという奴はいない。
「もういいだろ」とウォーデ。たしかにそうだった。ぼくは手を上げて警戒態勢を解いた。
「もどしていいよ」と声をかけると、ビクタがハードモードを解除した。「ハングリー」とぼやいている。皮膚装甲化はエネルギー消費が大きい。
エネルギーという言葉から連想したのでファーリーの胸をちらりと見た。上着をはだけて暑そうにぱたぱたやっている。生体バッテリーは小さくなっていた。「ショックガンのせいで思ったより使ったみたい。坊っちゃんの分もフィールド張ったから」
ふん、と返事もせず箱の群れに目をもどした。自分たちを含め、この島の様々なものが生まれた工場兼研究所が並ぶ。
そして、さらにその向こうのもっと巨大な建物群を眺めた。エネルギーの話をするなら、あそこがそのメガ生産地だ。
「行こう。仕事すましちまおう。それとも朝まで原子炉ウォッチングかい?」
ウォーデが急かし、ぼくらは移動を再開した。
接触は向こうからだった。丘を下ったあたりで、虫のような細い二本脚に人の頭ほどの気球をつけた半浮遊式オートマトンがふらふらとした脚取りで近づいてきた。センサー・発声部がちょうどぼくの顔くらいの高さにあった。
「停止せよ。手を見えるようにひろげよ。ご用をおうかがいします」命令口調と丁寧な話し方がまじっていた。変な学習をしたのだろう。とにかく言うとおり手をひろげて上げた。みんなもそうした。
「お届けものです」視線操作で伝票データを胸に投影すると、ふらふらオートマトンがセンサーをかたむけて読み取った。
「ごくろうさまです。受け取り場所へはこう行ってください」ゴーグルに地図データが流れこんできた。「なお、指定した道を外れた場合無警告での攻撃が行われる。その結果についてインフィニティ・マザーは責任を負わない。理解したら声に出して答えよ」
「わかりました。道は外れません」
「地図どおりに歩く。はいはい」
「ああ、理解した。道だけ歩くよ」
「オーケー。まっすぐ」
ふらふらオートマトンはビクタのほうを向いた。「厳密にはまっすぐではありませんが、理解したものと解釈する。では通ってよろしい」そしてふらふらと去った。
いたるところから狙われているような居心地悪さを感じながらぼくらは進んだ。ほぼまっすぐな道だったし、雲はずっと薄かったので先が良く見えた。
指定された建物につくと、壁にはりついていた蟹オートマトンが荷を受け取りに来た。見た目より強力で標準コンテナを片手で持ち上げて背にのせた。伝票に受け取りの署名が書きこまれたと通知が来たので、送り主に配送完了を送信した。
「たしかに受け取りました。では失礼します」
蟹オートマトンはそのままバックで引っ込もうとしたが、急に停止した。
「あなたがた、チーム『カクブンレツ』の代表者は前へ。インフィニティ・マザーからです」
「もういいだろ」とウォーデ。たしかにそうだった。ぼくは手を上げて警戒態勢を解いた。
「もどしていいよ」と声をかけると、ビクタがハードモードを解除した。「ハングリー」とぼやいている。皮膚装甲化はエネルギー消費が大きい。
エネルギーという言葉から連想したのでファーリーの胸をちらりと見た。上着をはだけて暑そうにぱたぱたやっている。生体バッテリーは小さくなっていた。「ショックガンのせいで思ったより使ったみたい。坊っちゃんの分もフィールド張ったから」
ふん、と返事もせず箱の群れに目をもどした。自分たちを含め、この島の様々なものが生まれた工場兼研究所が並ぶ。
そして、さらにその向こうのもっと巨大な建物群を眺めた。エネルギーの話をするなら、あそこがそのメガ生産地だ。
「行こう。仕事すましちまおう。それとも朝まで原子炉ウォッチングかい?」
ウォーデが急かし、ぼくらは移動を再開した。
接触は向こうからだった。丘を下ったあたりで、虫のような細い二本脚に人の頭ほどの気球をつけた半浮遊式オートマトンがふらふらとした脚取りで近づいてきた。センサー・発声部がちょうどぼくの顔くらいの高さにあった。
「停止せよ。手を見えるようにひろげよ。ご用をおうかがいします」命令口調と丁寧な話し方がまじっていた。変な学習をしたのだろう。とにかく言うとおり手をひろげて上げた。みんなもそうした。
「お届けものです」視線操作で伝票データを胸に投影すると、ふらふらオートマトンがセンサーをかたむけて読み取った。
「ごくろうさまです。受け取り場所へはこう行ってください」ゴーグルに地図データが流れこんできた。「なお、指定した道を外れた場合無警告での攻撃が行われる。その結果についてインフィニティ・マザーは責任を負わない。理解したら声に出して答えよ」
「わかりました。道は外れません」
「地図どおりに歩く。はいはい」
「ああ、理解した。道だけ歩くよ」
「オーケー。まっすぐ」
ふらふらオートマトンはビクタのほうを向いた。「厳密にはまっすぐではありませんが、理解したものと解釈する。では通ってよろしい」そしてふらふらと去った。
いたるところから狙われているような居心地悪さを感じながらぼくらは進んだ。ほぼまっすぐな道だったし、雲はずっと薄かったので先が良く見えた。
指定された建物につくと、壁にはりついていた蟹オートマトンが荷を受け取りに来た。見た目より強力で標準コンテナを片手で持ち上げて背にのせた。伝票に受け取りの署名が書きこまれたと通知が来たので、送り主に配送完了を送信した。
「たしかに受け取りました。では失礼します」
蟹オートマトンはそのままバックで引っ込もうとしたが、急に停止した。
「あなたがた、チーム『カクブンレツ』の代表者は前へ。インフィニティ・マザーからです」
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-
半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる