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小頭はBL 4
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「お願い」
棚を整理していた鉄男はレジに急いだ。
「いらっしゃいませ」
「ハイライト二箱」
客は橘樹邸に向かう後藤だった。
「西田君て言うの?」
「はい、よろしくお願いします」
後藤は晶子からコンビニに女みたいな男がいると聞いていた。
「女の子に間違われるでしょ?」
鉄男は顔を赤らめて笑みを浮かべている。この質問が一番嫌いだった。「男?」と聞かれた方がいい。
「でも声は男っぽいね」
後藤に悪気はない。思ったことをそのまま声に変えてしまう。ある意味正直者だが馬鹿が付く。鉄男は笑みを絶やさず堪えている。
「ありがとうございます」
レジを打って煙草を渡した。
「家は何処、この辺?」
鉄男は答えるべきか迷った。
「俺はこの先の寮に住んでる。まあ困ったことがあったら相談に乗るよ。狭い町だからさ、まあ頑張りなよ」
第一印象は最悪だが悪い男ではなさそうである。後藤の出で立ちは乗馬ズボンに唐草模様の鯉口ダボシャツ。駐車場に停めたダンプに今泉神輿同好会のステッカーが貼ってあるのに気付いた。
「あの」
ドアを出る後藤に声を掛けた。
「なに?」
「それ、そのステッカー」
「ああ、神輿同好会?」
「はい、誰でも参加出来るんですか?」
「ああ、今泉の人なら誰でも参加出来るよ。今年からうちの小頭が会長だから。担ぎたいのお神輿?」
鉄男が頷いた。
「明日の晩に練習するからよかったら来な。このずっと先に小松組の看板があるから。5:30.に来ればいい、一緒に乗っかって行けばいいさ」
ダンプが走りだす。カントリーのバスが急停車した。客が前のめりになる。カントリーの運転手は昨日ガードレールに突っ込んだ。その時も小松組のダンプが原因である。
「安全運転を心がけましょう」
後藤が擦れ違いざまに声を掛けた。
「そりゃこっちの科白だよ」
後藤は軽くクラクションを叩いた。
「ロープは三本持っていく。それから安全帯だ。やり方出すからな、コノキリとさん木を五本、それから指金と水糸」
やり方とは構造物の基礎を決める定規である。コノキリはカケヤの小型で木槌である。さん木を適当な長さに切りそれをコノキリで地面に打ち込む。レベルを出してぬき板を打ち付ける、それがやり方である。町場では構造物の全ての基準となる。置き場の道具は種類別にきれいに棚に並べてある。小道具は壁に釘を打ち付け掛けてある。先代からの教えで道具を粗末にする奴はろくな職人になれないと厳しくしつけられた。
「小頭、残念じゃありませんか?」
康介がにやけ顔で訊いた。
「何が?」
「何がって、橘樹夫人ですよ。今日行けばもっと大胆に誘ってきたかもしれませんね、あっ痛」
にやけた康介の頭をコノキリで軽く叩いた。
「お前も好きだねえ、お前のおふくろさんぐらいの歳だぞ橘樹夫人は」
「俺意外と年増が好みなんです」
「ばか野郎、おふくろさんが泣くぞ」
「小頭は我慢出来ますか?」
康介の股間は既に膨れていた。橘樹夫人のことを想い出していた。
「お前、これから安寿様のとこに行くんだぞ。安寿様は仏に仕える身だ。そんなの見られたら首になるぞ。姐さんが昨夜言ってた。いい仕事らしい。俺はあんまり金のことに口出ししたくないけど、小松の売り上げが落ちているのは分かる。火の車だ。頭はおっとりしているから細かいことに気が付かない。一昨日の生コンも計算がずぼらだから余らせた。チリも積もれば山となるだ。この山切は成功させないとな。それにはお前の股間を鎮めるのが先決だ」
健司は都合よく康介のせいにした。本音は康介の行為を見たかったのである。昨日帰りのダンプの中で康介に咥えられた。その感触が忘れられなかった。
「抜いていいですか?」
「仕方ねえだろ、安寿様のためだ」
健司が引き戸を閉めた。
「それじゃ」
康介は乗馬ズボンを下げた。一物は既にパンツの窓から突き出している。健司に背を向けて始めた。健司は康介の尻を見ている。18歳の白い尻が揺れている。健司の性が目覚めた。康介のすぐ後ろで乗馬ズボンを下げた。康介に倣った。肘の高さから角度まで稽古で練習したかのように動きが連動している。康介は健司の行為に気付いていない。健司はギリギリまで近付く。そして横から覗き込む。康介の手の動きが早くなると尻の動きも早くなる。尻が欲しい。健司は初めて自分の性に正直になった。俺は男が好きなんだ。小松組で働き始めた16歳の頃からそうだった。先代に憧れたのではなく先代を愛してしまったのかもしれない。しかし男稼業を磨く中でずっと隠し続けていた。12年間の耐え忍んだ性は、昨日康介の行為によって完全に花開いた。
「橘樹ふじ~ん」
康介が果てた。康介が果てる時に尻が屈んだ。その時健司のソレと尻が触れた。
「うううっワオッ」
康介の尻に触れて我慢出来ずにそのまま挿し込んでしまった。康介が気付いた。振り返る。
「ご、御免」
健司がすぐに抜いた。
「お前の尻がさ、橘樹夫人の尻に被った」
健司が言い訳をした。
「そのまま押し込んでみてください」
「なに?」
「なんか感じるものがあるんです」
康介は昨日ダンプの車内で発展した健司との関係から自分の中にある何かが目覚めたのかもしれないと感じていた。
「もう一度そのまま押し込んでください、小頭お願いします。自分を確認してみたいんです。小頭は男の尻には興味がないでしょうが、橘樹夫人の尻と思ってもう一度挿し込んでみてください」
康介と破廉恥な関係を深めた健司はそうそうチャンスがないと思った。
「そりゃ俺は男に興味はない。だけど若い衆の面倒はみなきゃならない。康介のお袋さんからも宜しく頼まれている。そんなお前のたっての頼みなら断るわけにはいかないだろう。こうか、これでいいのか」
チャンスは健司のために訪れた。男好きだがずっと隠し続けて来た。そして康介の尻がまさに目の前にある。ゆっくりと突き上げた。壁にぶち当たる。二人ともどうしたらいいのか分からない。康介が尻を突き出した。そこを健司が突き上げた。
「そこまでにしてください」
康介が前に飛び跳ねた。
「ど、どうした急に?」
もう少しだった。健司の先っぽは寂しそうに濡れている。
「トイレに行って来ます」
康介がトイレに行った隙にすっきりした。
「今日はこれで我慢しろ、俺達の運命はこんなもんさ」
健司は萎むジュニアに言って聞かせた。
「あれ、あの子」
小松組の看板の下に立っているのは西田鉄男である。今朝方後藤から神輿同好会の練習の話を聞いた。鉄男はお神輿に興味があった。
「あなた、コンビニの子でしょ?」
晶子は気付いて声を掛けた。
「こんにちは」
「どうしたの?」
鉄男は経緯を話した。
「今日じゃないよ明日だよ」
鉄男は気持ちが逸るばかりに今日だと思い込んでいた。
「ああ、そうですか、私の勘違いです。明日また来ます」
「急ぐのかい、折角だからお茶でも飲んで行きな。うちの小頭が同好会の会長だから、話だけでも聞いて行けばいいさ。あんた家は何処?」
「団地に上がる道路の手前です。アパートの裏に小川が流れています」
「そうかい、その川は砂押川って言うんだよ。昔この辺りはダムの底だからさ。さあ入んな、蚊に喰われるよその白い足を」
晶子に続いて若い衆の食堂に入った。
「尚子、麦茶入れておくれ」
尚子が厨房から顔を出した。
「こんにちはお邪魔しています」
尚子は鉄男を見て微笑んだ。どう見ても悪いことが出来る人物じゃない。どちらかと言うと騙され易いタイプと尚子の第一印象である。
「あたし尚子、あんたは?」
「西田鉄男です。今泉に越して来て二週間です。宜しくお願いします」
「こちらこそ」
鉄男は尚子のやさしさに触れた。丁寧な言葉使いではないが初対面の相手にストレスを与えない。恐らく尚子は自分の性を分かってくれている。鉄男は不安を感じずに接することが出来そうな気がした。今泉に来て初めての友達は尚子であって欲しい。
「尚子さんはずっとこの辺りで」
話が途切れるのが恐かった。ずっと尚子と喋り続けてこのまま次に会う約束までしたくなった。
「そうずっと、父が秋田からここに来たのが30年前でね、母と一緒になってすぐ出来たのがあたし」
鉄男は30年と言う短さに少しショックを受けた。鎌倉に暮らすとび職の家庭。鎌倉と言うと歴史を感じる町。その町で職人をしているには短い気がした。
「鉄男君は何処から来たの、実家は?」
尚子は厨房から出て鉄男の対面に座った。不思議な魅力を感じた。
「私の生まれは北海道の標津と言う町です。高校を中退して東京に出てきました。ずっと鎌倉に憧れていて、住むなら鎌倉にしようってやっと夢が叶ったんですけど」
「それが今泉でがっかりしたわけだ」
「ええ」
二人は笑った。
「そりゃそうよねえ、お寺と神社と海、それが鎌倉のイメージだもんね、それが今泉じゃちょっと外れる、ちょっとどこじゃないか」
「でもいい人ばかりで良かった。あなたと知り合えてほっとしました」
鉄男は本心を明かした。
「あたしもよ。いい友達になれそうな気がする」
ダンプが駐車場に停まる。
「ただいま、あれ、君はコンビニの子だよね、どうしたの?」
後藤が鉄男の訪問に驚いている。
「私の早とちりで今日だと勘違いしていました」
「ああ神輿の練習ね、明日って俺言ったよね」
後藤はもしかした自分が今日と言ったのではないかと不安を募らせた。
「鉄男君ゆっくりして行けば、ご飯でも食べにいけばいいわ」
尚子が食事の支度に厨房に戻る。
「いえ、お店に戻ります。店長一人じゃかわいそうだし」
「そう、明日来てね」
鉄男は外に出た。もう一台のダンプが入って来た。健司が降りた。
「康介、弁当箱忘れるな」
「はい」
健司と鉄男が擦れ違う。
「こんにちは」
鉄男が挨拶した。
「こんにちは」
擦れ違うときに肩が触れた。
「小頭、道具はどうしますか?」
「明日も使うからシートだけ掛けといてくれ」
鉄男に小頭と聞こえた。
「あのう、お神輿の会長さんですか?」
「ええ、同好会の会長をしていますが」
「私、お神輿を担ぎたいんです。仲間に入れますか?」
健司は女だと思っていた。会話すると声が意外と太い。それでもまだ女だろうと接した。
棚を整理していた鉄男はレジに急いだ。
「いらっしゃいませ」
「ハイライト二箱」
客は橘樹邸に向かう後藤だった。
「西田君て言うの?」
「はい、よろしくお願いします」
後藤は晶子からコンビニに女みたいな男がいると聞いていた。
「女の子に間違われるでしょ?」
鉄男は顔を赤らめて笑みを浮かべている。この質問が一番嫌いだった。「男?」と聞かれた方がいい。
「でも声は男っぽいね」
後藤に悪気はない。思ったことをそのまま声に変えてしまう。ある意味正直者だが馬鹿が付く。鉄男は笑みを絶やさず堪えている。
「ありがとうございます」
レジを打って煙草を渡した。
「家は何処、この辺?」
鉄男は答えるべきか迷った。
「俺はこの先の寮に住んでる。まあ困ったことがあったら相談に乗るよ。狭い町だからさ、まあ頑張りなよ」
第一印象は最悪だが悪い男ではなさそうである。後藤の出で立ちは乗馬ズボンに唐草模様の鯉口ダボシャツ。駐車場に停めたダンプに今泉神輿同好会のステッカーが貼ってあるのに気付いた。
「あの」
ドアを出る後藤に声を掛けた。
「なに?」
「それ、そのステッカー」
「ああ、神輿同好会?」
「はい、誰でも参加出来るんですか?」
「ああ、今泉の人なら誰でも参加出来るよ。今年からうちの小頭が会長だから。担ぎたいのお神輿?」
鉄男が頷いた。
「明日の晩に練習するからよかったら来な。このずっと先に小松組の看板があるから。5:30.に来ればいい、一緒に乗っかって行けばいいさ」
ダンプが走りだす。カントリーのバスが急停車した。客が前のめりになる。カントリーの運転手は昨日ガードレールに突っ込んだ。その時も小松組のダンプが原因である。
「安全運転を心がけましょう」
後藤が擦れ違いざまに声を掛けた。
「そりゃこっちの科白だよ」
後藤は軽くクラクションを叩いた。
「ロープは三本持っていく。それから安全帯だ。やり方出すからな、コノキリとさん木を五本、それから指金と水糸」
やり方とは構造物の基礎を決める定規である。コノキリはカケヤの小型で木槌である。さん木を適当な長さに切りそれをコノキリで地面に打ち込む。レベルを出してぬき板を打ち付ける、それがやり方である。町場では構造物の全ての基準となる。置き場の道具は種類別にきれいに棚に並べてある。小道具は壁に釘を打ち付け掛けてある。先代からの教えで道具を粗末にする奴はろくな職人になれないと厳しくしつけられた。
「小頭、残念じゃありませんか?」
康介がにやけ顔で訊いた。
「何が?」
「何がって、橘樹夫人ですよ。今日行けばもっと大胆に誘ってきたかもしれませんね、あっ痛」
にやけた康介の頭をコノキリで軽く叩いた。
「お前も好きだねえ、お前のおふくろさんぐらいの歳だぞ橘樹夫人は」
「俺意外と年増が好みなんです」
「ばか野郎、おふくろさんが泣くぞ」
「小頭は我慢出来ますか?」
康介の股間は既に膨れていた。橘樹夫人のことを想い出していた。
「お前、これから安寿様のとこに行くんだぞ。安寿様は仏に仕える身だ。そんなの見られたら首になるぞ。姐さんが昨夜言ってた。いい仕事らしい。俺はあんまり金のことに口出ししたくないけど、小松の売り上げが落ちているのは分かる。火の車だ。頭はおっとりしているから細かいことに気が付かない。一昨日の生コンも計算がずぼらだから余らせた。チリも積もれば山となるだ。この山切は成功させないとな。それにはお前の股間を鎮めるのが先決だ」
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「抜いていいですか?」
「仕方ねえだろ、安寿様のためだ」
健司が引き戸を閉めた。
「それじゃ」
康介は乗馬ズボンを下げた。一物は既にパンツの窓から突き出している。健司に背を向けて始めた。健司は康介の尻を見ている。18歳の白い尻が揺れている。健司の性が目覚めた。康介のすぐ後ろで乗馬ズボンを下げた。康介に倣った。肘の高さから角度まで稽古で練習したかのように動きが連動している。康介は健司の行為に気付いていない。健司はギリギリまで近付く。そして横から覗き込む。康介の手の動きが早くなると尻の動きも早くなる。尻が欲しい。健司は初めて自分の性に正直になった。俺は男が好きなんだ。小松組で働き始めた16歳の頃からそうだった。先代に憧れたのではなく先代を愛してしまったのかもしれない。しかし男稼業を磨く中でずっと隠し続けていた。12年間の耐え忍んだ性は、昨日康介の行為によって完全に花開いた。
「橘樹ふじ~ん」
康介が果てた。康介が果てる時に尻が屈んだ。その時健司のソレと尻が触れた。
「うううっワオッ」
康介の尻に触れて我慢出来ずにそのまま挿し込んでしまった。康介が気付いた。振り返る。
「ご、御免」
健司がすぐに抜いた。
「お前の尻がさ、橘樹夫人の尻に被った」
健司が言い訳をした。
「そのまま押し込んでみてください」
「なに?」
「なんか感じるものがあるんです」
康介は昨日ダンプの車内で発展した健司との関係から自分の中にある何かが目覚めたのかもしれないと感じていた。
「もう一度そのまま押し込んでください、小頭お願いします。自分を確認してみたいんです。小頭は男の尻には興味がないでしょうが、橘樹夫人の尻と思ってもう一度挿し込んでみてください」
康介と破廉恥な関係を深めた健司はそうそうチャンスがないと思った。
「そりゃ俺は男に興味はない。だけど若い衆の面倒はみなきゃならない。康介のお袋さんからも宜しく頼まれている。そんなお前のたっての頼みなら断るわけにはいかないだろう。こうか、これでいいのか」
チャンスは健司のために訪れた。男好きだがずっと隠し続けて来た。そして康介の尻がまさに目の前にある。ゆっくりと突き上げた。壁にぶち当たる。二人ともどうしたらいいのか分からない。康介が尻を突き出した。そこを健司が突き上げた。
「そこまでにしてください」
康介が前に飛び跳ねた。
「ど、どうした急に?」
もう少しだった。健司の先っぽは寂しそうに濡れている。
「トイレに行って来ます」
康介がトイレに行った隙にすっきりした。
「今日はこれで我慢しろ、俺達の運命はこんなもんさ」
健司は萎むジュニアに言って聞かせた。
「あれ、あの子」
小松組の看板の下に立っているのは西田鉄男である。今朝方後藤から神輿同好会の練習の話を聞いた。鉄男はお神輿に興味があった。
「あなた、コンビニの子でしょ?」
晶子は気付いて声を掛けた。
「こんにちは」
「どうしたの?」
鉄男は経緯を話した。
「今日じゃないよ明日だよ」
鉄男は気持ちが逸るばかりに今日だと思い込んでいた。
「ああ、そうですか、私の勘違いです。明日また来ます」
「急ぐのかい、折角だからお茶でも飲んで行きな。うちの小頭が同好会の会長だから、話だけでも聞いて行けばいいさ。あんた家は何処?」
「団地に上がる道路の手前です。アパートの裏に小川が流れています」
「そうかい、その川は砂押川って言うんだよ。昔この辺りはダムの底だからさ。さあ入んな、蚊に喰われるよその白い足を」
晶子に続いて若い衆の食堂に入った。
「尚子、麦茶入れておくれ」
尚子が厨房から顔を出した。
「こんにちはお邪魔しています」
尚子は鉄男を見て微笑んだ。どう見ても悪いことが出来る人物じゃない。どちらかと言うと騙され易いタイプと尚子の第一印象である。
「あたし尚子、あんたは?」
「西田鉄男です。今泉に越して来て二週間です。宜しくお願いします」
「こちらこそ」
鉄男は尚子のやさしさに触れた。丁寧な言葉使いではないが初対面の相手にストレスを与えない。恐らく尚子は自分の性を分かってくれている。鉄男は不安を感じずに接することが出来そうな気がした。今泉に来て初めての友達は尚子であって欲しい。
「尚子さんはずっとこの辺りで」
話が途切れるのが恐かった。ずっと尚子と喋り続けてこのまま次に会う約束までしたくなった。
「そうずっと、父が秋田からここに来たのが30年前でね、母と一緒になってすぐ出来たのがあたし」
鉄男は30年と言う短さに少しショックを受けた。鎌倉に暮らすとび職の家庭。鎌倉と言うと歴史を感じる町。その町で職人をしているには短い気がした。
「鉄男君は何処から来たの、実家は?」
尚子は厨房から出て鉄男の対面に座った。不思議な魅力を感じた。
「私の生まれは北海道の標津と言う町です。高校を中退して東京に出てきました。ずっと鎌倉に憧れていて、住むなら鎌倉にしようってやっと夢が叶ったんですけど」
「それが今泉でがっかりしたわけだ」
「ええ」
二人は笑った。
「そりゃそうよねえ、お寺と神社と海、それが鎌倉のイメージだもんね、それが今泉じゃちょっと外れる、ちょっとどこじゃないか」
「でもいい人ばかりで良かった。あなたと知り合えてほっとしました」
鉄男は本心を明かした。
「あたしもよ。いい友達になれそうな気がする」
ダンプが駐車場に停まる。
「ただいま、あれ、君はコンビニの子だよね、どうしたの?」
後藤が鉄男の訪問に驚いている。
「私の早とちりで今日だと勘違いしていました」
「ああ神輿の練習ね、明日って俺言ったよね」
後藤はもしかした自分が今日と言ったのではないかと不安を募らせた。
「鉄男君ゆっくりして行けば、ご飯でも食べにいけばいいわ」
尚子が食事の支度に厨房に戻る。
「いえ、お店に戻ります。店長一人じゃかわいそうだし」
「そう、明日来てね」
鉄男は外に出た。もう一台のダンプが入って来た。健司が降りた。
「康介、弁当箱忘れるな」
「はい」
健司と鉄男が擦れ違う。
「こんにちは」
鉄男が挨拶した。
「こんにちは」
擦れ違うときに肩が触れた。
「小頭、道具はどうしますか?」
「明日も使うからシートだけ掛けといてくれ」
鉄男に小頭と聞こえた。
「あのう、お神輿の会長さんですか?」
「ええ、同好会の会長をしていますが」
「私、お神輿を担ぎたいんです。仲間に入れますか?」
健司は女だと思っていた。会話すると声が意外と太い。それでもまだ女だろうと接した。
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