The Outsider

橘樹太郎

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第1章:始まりの3年間

第3話:入隊

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 スレイがエヴォルドに降りてから次の日、クレイグが銃士隊訓練生として彼を応募した。

 それからというもの、スレイは彼主導の元、この世界で生活するための準備をした。

 自分の住む家を紹介され、早速ヴァートレスの村にある服屋に行き、銃士隊の制服を着るために身体の寸法を測ってもらった。

 食事やお金に関しては王国からの支給によって問題無く生活することができ、服はこの世界に降りた時に着ていたローブと全身のインナーから、クレイグの持ってきた無地のボタン付きシャツとズボンを貰った。

 お下がりではあるものの、スレイからすれば嬉しい事であり、彼は感謝した。

 しかし、彼は何も考えず銃士隊への入隊を決めてしまった事に対して思い悩む。

様々な職があるにも関わらず、彼は咄嗟に決めてしまったのだ。

「〔クレイグさんも一応は訓練期間に見極めるとは言っていたけど・・・〕」

 まだこの世界に慣れていない彼にとって、不安でしかなく、自分の判断力の甘さに悲観していたのだった。


 それから数日経ち、村にある馬車の停留所へ向かう。
そこには馬車が何台も停められており、馬車に何人もの若者が乗り込んで行く。彼も一台の馬車に乗り込んだ。

 スレイが馬車に乗り込むと、そこには彼を睨みつける少年がいた。

「あ・・・」

 そう、彼はクレイグと共にスレイを助けた少年、ジョッシュだった。

「あ、あの時は助けてくれて、ありがとう・・・」

 ぎこちない口調で感謝の言葉を話すスレイに返事をせず、彼はただ睨みつけていた。

「悪いね、彼緊張してるみたいなんだ」

 スレイに対し、彼の隣に座っている額にバンダナを巻いた緑髪の少年は、ジョッシュのフォローを入れた。

「おいおいジョッシュ、あまり天星人アウトサイダーを邪険に扱うなよ?」

 ジョッシュの隣に座っていたオールバックの少年が彼に肘打ちした。

「あ、あの・・・」

 スレイが弱々しい声で言った。

「ああ、俺の名前は"シェイル"、宜しくな」

 バンダナの少年が彼の言葉を察して名乗った。

「んで、君の目の前にいるのはジョッシュ、クレイグさんの息子だ」

 シェイルに紹介されてスレイが目の前を見ると、ジョッシュは彼から顔を背けた。

「で、そこにいるキザな人はヴィルト」

 彼がその隣の人に目を移すと、そこにいたオールバックの少年が腕を組みながら鼻で笑うように返事をした。

「君の名前は?」

 スレイはシェイルに名前を訊かれて、彼は自分の名前を言った。

「スレイです」

「スレイって言うんだ、宜しくな」

 シェイルは彼を見て笑う。すると、ヴィルトが彼の名前を聞いて口を開いた。

「へぇ、スレイって言うのか。天星人ってのは自分の名前を覚えていない奴が多いもんだと」

 確かに"スレイ"という名前は彼の本当の名前ではないが───自分の前世での記憶が曖昧である為、やむを得ずこの名前を名乗っているのだった。

「まぁ、そんな事どうだっていいがな」

 ヴィルトは笑いながらそう言う。彼にとって、あまり興味は無さそうだった。

 それからスレイ達を乗せた馬車はある場所に停まり、目的地に着いたようだった。


 スレイが馬車から出ると、そこには砦のような大きな建物があった。

「ここは?」

「此処がお前達が生活する事になる場所だ」

 スレイ達の後ろから声が聞こえ、四人が後ろを振り向くと、そこには見覚えのある人物が立っていた。

「親父!」

 ジョッシュが口を開くと、彼はクレイグに近づいて耳打ちをした。

「なんでスレイあいつがいるんだ?」

「なんでって、俺が勧誘したからだ」

「勧誘って・・・何でだよ」

「働き口としては良いと思うぞ? あいつはまだこの世界に来て数日しか経ってないし、ここで訓練を受けておけば一人で生きる事もできるんだぞ」

「そうかよ・・・」

 クレイグに耳打ちをした後、彼は不貞腐れた顔をしてスレイ達の方に戻って来る。
 どんな話が展開されていたにしろ、様子を見るにスレイ関連の話なのは、他の人にも分かりやすかった。

「今から挨拶を行うぞ。さぁ、行った行った」

 クレイグからそう言われて、スレイ達は砦の門を通過した。


 門を通過した若者達は、最初に村長の話を聞く事になった。

「ワシはヴァートレスの村で村長をしている"ベルトラン"だ。君達が入隊する事を皆歓迎している───」

 その村長は銃士隊の訓練をするスレイ達を歓迎した。


 話を聞き終わった後に、スレイ達はクレイグ達に案内されて、ある部屋に辿り着いた。

「此処がお前達の寝る部屋だ」

 そこは渡り廊下のように奥行きがある部屋だった。

「ここは戦争中に、アストリア王国の兵士達が身体や精神こころを休める為にいた場所だ。それぞれお前たちの名前が書いてあるトランクがベッドの上に置いてあるからそこがお前たちの寝所だ」

 クレイグの指示通り、訓練生達はそれぞれのベッドに向かう。スレイは奥にある左側のベッドを使う事になり、彼の隣には口に覆面をつけ、室内でもゴーグルを外さない謎の少年がいた。

 視線に気付いて覆面の少年はスレイを見返すと、気付かれた彼はすぐに頭を下げて挨拶する。しかし、それでも反応は無かった。


 銃士隊訓練生として共に暮らす仲間に挨拶を交わしていると、寝室の出入り口からクレイグが入って来た。

「今すぐ銃士隊服に着替えて広場に集合しろ、これから基礎訓練を始める」

 そう言ってすぐに訓練生たちは箱から服を取り出す。ジョッシュやヴィルトは早めに着替えてすぐ出て行った。


 それから少し経ち、スレイは銃士隊服に身を包み、広場で他の訓練生と共に立っていると、そこにクレイグが現れた。

「よし、揃ったな。これから改めて基礎訓練を始める」

 そう言った後に、彼は大声で指示した。
「今から俺に遅れず付いて来い!!」

 初めて下った命令に訓練生達は焦り、彼の後を付いていった。

 彼は先頭を走り、訓練生達は彼の後を追うように走った。

 スレイは走っている途中、自分の身体が軽く感じていた───数日前にこの世界へ転生したばかりだとはいえ、体力はちゃんとある事に彼は安心した。


 同じ頃、ジョッシュはヴィルトと並んで走っていた。彼らは他の訓練生と比べて、まだ体力は有り余っていた。

「お前、まだ体力あるんだな・・・」

「このぐらい走れなきゃ、銃士隊にはなれないからな・・・!」

ジョッシュがヴィルトを追い越した。

「───早駆けしてバテんなよ」

ヴィルトもジョッシュの後を追うように走って行った。


 クレイグの基礎訓練が終わった後のこと───訓練生は再び広場に戻っていた。

 どうやら砦の周りを一周していたようで、スレイは息を切らしながら、屈み込んでいた。

 訓練生は息を切らしたり呼吸が乱れていて、中にはその場で倒れ込んだり座り込んでいる者もおり、ジョッシュに至っては大の字になって倒れていた。

「だから言ったろ?」

「・・・ほざいてろ」

 彼がヴィルトに指を差してそう言った後、すぐに立ち上がった。

「次は筋力鍛錬だ、始めるぞ!!」

 クレイグから出た鬼のような言葉に訓練生達は絶望した。


 その後、基礎訓練を終えた訓練生の一同は食堂で夕食を取っていた。

 その日の食事はミルクシチューとパンで、シチューには豚バラ肉やブロッコリーなど、のバランスの良い具材が入っていた。

 美味そうな食事だが、基礎訓練が長時間だった為、訓練生の中には食欲が無かったり、基礎訓練で吐きそうになっている者もいるが、スレイは今のところ大丈夫だった。


 夕食を食べ終わった後のこと、訓練生達は、浴場で汗を洗い流すと、すぐ寝室へ戻って就寝していた。

 来て早々、友達作りをする暇無く突然の走る訓練だったのだから仕方ないのかもしれない。スレイは一人、ベッドに横たわりながらそう考えていた。

「〔訓練続きで大変だろうけど、頑張ろう〕」

 彼は心の中で自分を励ましながら目を閉じた。

 他の人が寝静まった後のこと、スレイはある時に目を覚ました。何かうめき声に近い声だった。

「〔何だろうか?〕」

 彼が恐る恐る体を起こして周りを見渡すと、ジョッシュがベッドの上でうずくまりながら震えていた。

 スレイは声をかけようとしたが、何故か自分を嫌っている事を思い出して声を掛けるのを辞めた。

「〔大丈夫だろうか・・・〕」

 ジョッシュを心配しながらも再び眠った。


 それからも訓練は続き、隊列走行や肉体鍛錬などの基礎訓練を行いながらも、エヴォルドについて学ぶ座学なども行った。

 スレイにとって、朝の早起きは慣れているかのように思えたが、それでも訓練は過酷さは変わらず、徐々に彼も疲労が取れなくなっていた。

 疲労感で足元がおぼつかなかったスレイが寝室を目指して歩いていると、彼は何かに躓いた。

「痛っ・・・」

 俯せに転んだスレイは、身体にじわじわと響くような痛みに小さく声を出した。
 そして、彼が体を起こして振り向くとそこにはジョッシュがいた。

「君は・・・」

 ジョッシュは舌打ちをしてスレイを睨みつており、スレイは気にしないようすぐ寝室へと向かった。


 それからというもの、スレイは訓練中も誰かからの視線を感じるような気がしていた。

 気にしないようにしていたが、度重なる訓練もあってか、彼の中ではある考えが出ていた。

「〔天星人って、普通じゃないから駄目なのかな・・・〕」

 その思いが彼を追い詰める。
思い込みではあるものの、その考えは簡単に捨てられるものではなかった。

「おい貴様!手が止まっているぞ!」

 そんな考えをしているせいか、腕が止まり、彼は教官に怒られた。

「す、すみません!!」

 スレイは再び素振りを再開する。今回の訓練は武器の素振りをする訓練で、教官の指示通りに素振りをしていた。

 何処かで他の訓練生からの声が聞こえてくるが、何を言っているか分からない。
彼は気にしないように訓練に専念したが、自分の心が危険な状態である事に気づいてなかった。

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