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第1章:始まりの3年間
第8話:進級試験
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スレイが銃士隊訓練生となってから数ヶ月が経った。エヴォルドにおける時間の流れや暦は、ある別世界と同じように進んでいた。
それから12月、アストリア王国に雪が降っている頃で、スレイは自分の家でくつろいでいた。
数日前から訓練は休みで、彼はジョッシュやレーヴァと共に自分や二人の家の掃除を手伝った。
それからある日のこと、彼が自分の家に居ると、誰かが玄関の扉を叩いた。
「はい、今出ます」
扉を開けると、そこには防寒着を着たジョッシュやレーヴァがいた。
「おはよう、スレイ君」
「スレイ、今日が何の日か分かるか?」
彼は二人に挨拶してから今日が何なのか考え、答えを思いついた。
「今日は・・・年越し前の祝日?」
「そう、大正解だ」
「それでね、もし良ければスレイ君もジョッシュの家で年越さないかって聞きに来たの」
スレイは今日が年越し前日だと聞いて納得した。
「良いの?」
彼の確認に、二人は笑顔で頷いた。
「あっ、まだ年越しまでに時間あるからまずは城下町にでも行こうぜ」
「私とジョッシュについて来て」
スレイは言われるがまま二人に付いて行った。
三人は城下町に着き、年越しまでの暇潰しをしていた。
その途中でギルドの建物前に来て、ある人物と会った。
「あら、誰かと思えばジョッシュにスレイ君じゃない」
後ろと振り向くと、そこには冬服を着たアイネがいた。
「アイネか。今一人か?」
「いいえ、広場で友達と会うのよ」
「なーんだ、そうだったのか」
アイネがジョッシュと話をしていると、彼女は彼の隣にいたレーヴァに注目した。
「あれ、ジョッシュの"彼女"さん?」
アイネは冗談まじりにそう言うと、レーヴァはすぐに違うと言った。
「違うわ、私は彼と幼馴染なの」
彼女はそう言って誤魔化したが、スレイから見てもレーヴァの頬は少し赤らめていたように感じた。
「奇遇ね、私も彼と幼馴染なの」
二人の女子はお互いに笑顔を返した。
ジョッシュはこの状況に困惑し、スレイは蚊帳の外であるように、一人その光景を眺める事しかできなかった。
「あっ、いけない。友達待たせているから行くね」
アイネは約束を思い出して、三人に別れを告げて去っていった。
「さてと、俺たちも広場にでも行くか?」
「残念だけどもう時間よ」
レーヴァは懐に入れていた懐中時計を手に取り、それを覗きながら言った。
「そうか・・・まぁ仕方ないか」
「うん、そうだね」
三人は村に戻り、ジョッシュの家に着くと、そこにはテーブル上のレイアウトをしているレーナと、料理を作っていたカルロがいた。
「あっ、お姉ちゃんだ!」
レーナが窓を見て、帰ってきたレーヴァに気付く。
彼女はテーブルのレイアウトを中断し、ジョッシュの家から出て自分の姉に走り寄った。
「お姉ちゃん、お帰りなさい!」
彼女はレーヴァに抱き付いた。
「うん、ただいま」
レーヴァも自分の妹に抱き返した。それを見て、スレイとジョッシュはお互いに顔を合わせながら笑った。
ジョッシュの家に入った三人は、それぞれテーブルのレイアウトや料理を手伝う。レーヴァはカルロに代わり料理を作っていた。
「すまんな、レーヴァ」
「良いんですよ、これぐらい」
彼女は、カルロから料理を引き継いだのにも関わらず、滞りなく進めていた。6人分の料理を作るのをカルロだけに任せるのは申し訳ないとは思ったのだろう。
それからあまり時間が経たない内に料理が完成した。
新年前の献立は、ブルーロブスターのグリル、豚、牛、鶏肉のグリル、あとはヴァートレスの村で収穫された野菜のサラダや、竜ヒレを出汁に使ったスープで、スレイやジョッシュは卓上に置かれた料理を見て、子供のような純粋な眼差しで眺めていた。
「まだ食べちゃダメよ」
「分かってるって」
ジョッシュとレーヴァが話していると、クレイグも帰って来た。
「おう、親父」
帰ってきたクレイグをジョッシュが出迎えた。
「すまん、待たせたな」
「料理が冷める前で良かったですね。出来たてですよ」
「すまんな」
「どうぞ、席はこちらです」
彼がレーヴァに言われた席に着き、食卓を囲んだところで食べ始めた。
スレイ達は食べながらそれぞれ話をする。最近の状況から話が進み、料理の感想も話の合間に出ていた。卓上を囲んでいる6人共、料理については満足していた。
料理を食べ終わった後のこと、レーヴァとレーナが食器や皿を洗い、カルロは一度、自分の家に戻った。クレイグは自室に戻って休み、スレイはジョッシュと雑談をしていた。
「最近、何か思い出せたか?」
ジョッシュがスレイにそう言った。
スレイがエヴォルドに来てから1年も経っており、彼自身もこの1年は長く感じた。
「少しだけ思い出せたような気がする・・・」
「へぇ、どんな記憶だ?」
「確か・・・俺が前にいた世界は、長方形の柱みたいな建物が何本も建ってて、馬が引っ張らない馬車みたいなのもあったような気がする・・・」
「馬が引っ張らない馬車?魔法で動いてるのか?」
「分からないけど・・・どうなんだろう、一種の魔法と言えるのかな・・・」
「うーん・・・不思議な世界だな」
「そうだよな・・・」
「あれは?」
ジョッシュが唐突に話を変える。彼にとって相当気になる事があったようだ。
「あれって?」
「銃だよ銃。確か、天星人の世界から銃が伝わったんだよな?」
「俺はよく分からないけど・・・その世界では剣や槍から銃に変わってるんだ」
「ほう、銃が主流なんだな」
「うん」
「お前はその世界で何してたんだ?」
「働いていたよ」
「冒険者とかか?」
「いや、会社員・・・としてかな」
「カイシャイン?何だそれ?」
「色々あるけど、俺がやっていたのは書類を作ったりする仕事かな」
「ふーん、まるで冒険者ギルドの職員みたいだな」
「そうなのかな?」
「ああ」
「だったらそっちに───」
「お、おい、まだ辞めないでくれよ。まぁ、そっちの方が良いなら否定しないが・・・」
「冗談だよ」
スレイはジョッシュに冗談を言い、二人はお互いに顔を合わせて笑った。
彼が冗談を言えるようになったのは慣れて余裕が出たのか、最初の時と比べると表情も柔らかくなっていた。
「あれ、お姉ちゃんもう時間じゃない?」
レーナがレーヴァの腰に掛けた懐中時計を見て言った。
「えっ、本当?」
レーヴァが懐中時計を手に取って確認すると、年を越すまであと1分だった。
「あと1分ね」
「そろそろか・・・」
ジョッシュ達は家から出ていき、スレイも付いて行った。
そして1分後、城下町の方から花火が上がる。年を越した合図で、新年の幕開けだ。
「あけましておめでとう───みんな」
年越し後、スレイ達はそれぞれ自分の家に戻っていく。スレイが家に戻ると、彼は疲れ切っていたのかすぐに眠ってしまった。
建物が見える。
長方形の建物。
俺はそこに行く。
一日一日同じことの繰り返し。
何かを忘れているような気がする。
自分は誰で、何なんだ、何を忘れているのか───。
スレイが夢から目を覚ます。彼は自分が見た初夢に対して、彼は不思議な感覚を覚えた。
まるでそれは、何かを忘れているような違和感で、ベッドに座り直したスレイは、俯きながら溜め息を吐いた。
休日が明け、訓練所に戻ってからクレイグから訓練生にある話がされた。
「3月上旬に進級試験を行う。
これの合否によって、お前達が訓練生から候補生に上がれるか決まる。
詳細についてはエントランスにある掲示板に貼ってあるからよく確認しろ」
その話が終わった後、訓練生達は騒々しくなった。
これを合格しないと、訓練生から候補生に昇級できず、銃士隊から離れてしまう。
特にジョッシュなどは不安だった。
「ああ、来ちまったよ・・・」
「どうした? 怖気付いたか?」
「うるせぇ、怖かねぇよ!」
「まぁまぁ」
ヴィルトの言葉に激昂するジョッシュをスレイが宥めた。
スレイ達が寝床に戻ると、それぞれ試験について考えていた。
───楽観的に考える者もいれば、絶望したような表情で俯いている者もいて、スレイも内心では焦っていた。
それからというもの、進級試験に向けての訓練が始まった。
試験内容は主に実技で、段差などがあるアスレチックを時間内に駆け抜けてゴールまで向かうのが目的だが、その道中で、敵を模した案山子が高所や低所にいるので、それらをライフルや拳銃、そして銃剣で攻撃しないといけなかった。
「・・・というのが試験内容だ。誰か質問は?」
バートンから問われて、ミッチェルという訓練生が手を挙げた。
「ミッチェル、何の質問だ?」
「弾が無くなるとどうなるんですか?」
「弾が無くなっても試験は続くが、もし高台や低所にいる的は攻撃できなくなる。バヨネットも1人1本だから用心しろ」
それを聞いて、スレイの手から汗が滲み始めた。
「〔もし一体でも外せば───〕」
彼の不安はある意味、落ちることを意味していた───的を一体でも外せばその時点で不合格の確率は高くなる。折角の1年間が無駄になってしまうのだ。
「スレイ、大丈夫か?」
隣にいたシェイルが彼を見かねて声を掛ける。その表情は、具合が悪いように青白くなっていた。
「いや、大丈夫・・・」
スレイにとって、前いた世界では今よりも大人の筈だった。
これ以上のプレッシャーなら経験している筈───なのにも関わらず彼は震えが止まらなかった。
「〔精神的にも戻ったのかな・・・それともこれが本来の自分なのかな・・・〕」
変に思い悩んでいたスレイだが、今は進級試験合格に向けての訓練に励むべきだと思い、訓練を始めた。
訓練を始めたスレイを最初に待っていたのは、高所に続く縦に細長い台だった。
この狭い足場を歩いて上まで行かなくてはならない。滑ると一貫の終わり、それが高くなっていくほど身に染みて分かる。彼は平静さを保ちながらも早めに突破した。
それを突破しても次からが本番だった。次に待っていたのは、障害物や狭い足場のある道で、ここの障害物は何箇所か乗り越えないといけないように設置されている為、もし此処で手間取っていると時間のロスになってしまうのだ。
案の定スレイは障害物を乗り越えるのに手間取ってしまい、焦りながらもスレイはゴール直前のところまでたどり着いた。
ゴールに辿り着くには、地上まで垂らしているロープに金具をつけて降りないといけない為、高所が苦手ならあまりにも酷な事だった。
なんとかゴールまで辿り着いたスレイだが、辿り着いた時点で、柱時計の砂は殆ど下に落ちていた。
「だいぶ手間取っていたが、最初はそんなものだ」
バートンがフォローを入れながら言ったが、彼にとって、まだ不安は拭えなかった。
それから次の日、次の日とやっていき、何日か後から、本番と同じような試験が始まった。
本番を想定した試験では、的の案山子が配置されていた。
中には鎧や兜を身につけている案山子もいる為、銃弾を命中させたとしても弾かれてしまう可能性がある。正確に当てないといけない雰囲気が漂う中、再びスレイの出番になった。
「今度こそ・・・!」
スレイは最初の難所を突破する道中の案山子を撃った。
案山子は、低所にいたりもする為、嫌でも下を見なくてはならない。吹き止まない風に曝されるスレイは、拳銃を構えて案山子を撃つ。
しかし、手が震えていたせいか、銃弾を外してしまった。
銃を撃った反動で、スレイは少し後ろに仰け反りバランスを崩しそうになるが、なんとか耐えてバランスを戻し、もう一度標準を定めて撃つ。2発目はなんとか胴体に当たり、彼はひとまず前に進んだ。
その後は、障害物や狭い足場を突破しながら案山子に当てていく。
しかし、何発か外してしまい、時間の方を気にしていたスレイは諦めてゴールに向かった。
落ち込むスレイを心配して、ジョッシュが励ました。
「大丈夫だって、まだ試験まで猶予はある」
「・・・でも俺は、ジョッシュやヴィルトのように上手くいかないよ」
「俺とかは訓練生になる前からこんな感じの事はしてたしなぁ・・・」
「どうすれば上手くなるんだろう?」
「的の位置覚えるとか?」
しかし、的の位置は人によって配置が変わる。高台にいた的が低所にいたりする為、覚えたとしても変わっていれば意味がなかった。
「でも人によって違うからなぁ・・・」
「まぁ、的の数は10体だから位置については運次第だな」
「うーん・・・」
その後、スレイは訓練時に、他の訓練生の状況を見ていた。
手慣れているジョッシュやヴィルト、それに覆面の少年などは無難に突破している。
スレイは寝床で、気持ちを落ち着かせる為に手帳を読んでいた。
その手帳は、クレイグから渡された時から御守りのように持っていて、メモ帳として使っていた。
「〔どうすれば良いんだろう・・・〕」
心の中で呟いていると、誰かが起き始めた。
「よぉ、まだ寝てなかったのか?」
「何というか・・・」
ヴィルトが手帳に書いたメモを見ると、彼は鼻で笑った。
「何かおかしい事あった?」
「いや、書いてるのは偉いが・・・あんまり考え過ぎんなよ」
「でも・・・」
「お前の訓練見てたけど、焦りながら銃撃ってる時あるよな」
「確かに・・・」
「一旦落ち着いてから撃ってみな、何でも良いからまず焦らん方がいい。
あと、考えるんじゃなくて感覚で撃ってみな」
「ああ・・・分かった」
スレイはヴィルトに言われたことを一応記録し、ヴィルトは再び寝床に戻った。
それから本番当日となり、訓練は1日2人ずつ行われた。スレイの前にジョッシュやヴィルトなどが試験に臨んだが、彼らは難無く突破していた───彼はプレッシャーに耐えつつも、試験に臨んだ。
「今度こそ・・・」
自分を奮い立たせるスレイに、ジョッシュが後ろから右肩を軽く叩いた。
「おう、気張ってけよ」
「ああ」
彼は親友からの励ましを貰い、装備を整えた。
彼がスタートラインの前に立ったところで、バートンが合図を出して試験は始まる。砂時計による制限時間は約5分、それまでに全ての的に命中させ、ゴールに辿り着かないといけなかった。
最初の上に続く細長い足場の上を歩き、次のコースになる前の低所で案山子がいて、しかも鎧を着ていた。
「〔一呼吸置いてから感覚で・・・撃つ〕」
右腰のホルスターから拳銃を取り出して、それを1体目の案山子に撃つ。
すると、案山子の頭に命中したようで、命中したと同時に、素材の藁が少し散った。
スレイは命中したところまでは見ずにそのまま進んだ。
次のコースでは高所や低所にも案山子がいた。
残りの案山子は9体、合格する為には全部命中させないといけない。スレイは拳銃から左肩に掛けたライフルに持ち替え、照準を合わせながら撃った。
何発か外したが、6体の案山子には命中した。残り3体は道の途中にいる。
スレイは左手に銃剣を持ち、右手には拳銃を持って、両腕を交差させる。
これは銃士隊における近接と中距離戦闘を予想した持ち方だ。
バヨネットを近くの案山子に刺して、鎧や兜を着た案山子に拳銃を撃つ。そして、再び走りながら最後の案山子に拳銃を撃って通り過ぎ、ロープに金具を取り付けて下に降りた。
そして、ゴールまで辿り着きスレイの試験は終わりを迎える。
それから日が経っていくうちに彼の後に行う訓練生も次々に試験が終わった。
それから数日後、クレイグに一人ずつ呼ばれ、スレイの番になった。
「スレイ、よく頑張ったな。お前は合格だ」
彼はそう言われて、笑顔で感謝して出て行った。
出て行った後、彼は合否を訊かれて本当の事を言った。
「おお、やったな!」
「凄いじゃん!」
「流石だな」
「みんなもおめでとう!」
ジョッシュやシェイル、ヴィルトらと共にお互いの合格や健闘を祝った。
しかし、まだ銃士隊になれるわけではない───彼らにとって、ここからが本番でもあった。
それから12月、アストリア王国に雪が降っている頃で、スレイは自分の家でくつろいでいた。
数日前から訓練は休みで、彼はジョッシュやレーヴァと共に自分や二人の家の掃除を手伝った。
それからある日のこと、彼が自分の家に居ると、誰かが玄関の扉を叩いた。
「はい、今出ます」
扉を開けると、そこには防寒着を着たジョッシュやレーヴァがいた。
「おはよう、スレイ君」
「スレイ、今日が何の日か分かるか?」
彼は二人に挨拶してから今日が何なのか考え、答えを思いついた。
「今日は・・・年越し前の祝日?」
「そう、大正解だ」
「それでね、もし良ければスレイ君もジョッシュの家で年越さないかって聞きに来たの」
スレイは今日が年越し前日だと聞いて納得した。
「良いの?」
彼の確認に、二人は笑顔で頷いた。
「あっ、まだ年越しまでに時間あるからまずは城下町にでも行こうぜ」
「私とジョッシュについて来て」
スレイは言われるがまま二人に付いて行った。
三人は城下町に着き、年越しまでの暇潰しをしていた。
その途中でギルドの建物前に来て、ある人物と会った。
「あら、誰かと思えばジョッシュにスレイ君じゃない」
後ろと振り向くと、そこには冬服を着たアイネがいた。
「アイネか。今一人か?」
「いいえ、広場で友達と会うのよ」
「なーんだ、そうだったのか」
アイネがジョッシュと話をしていると、彼女は彼の隣にいたレーヴァに注目した。
「あれ、ジョッシュの"彼女"さん?」
アイネは冗談まじりにそう言うと、レーヴァはすぐに違うと言った。
「違うわ、私は彼と幼馴染なの」
彼女はそう言って誤魔化したが、スレイから見てもレーヴァの頬は少し赤らめていたように感じた。
「奇遇ね、私も彼と幼馴染なの」
二人の女子はお互いに笑顔を返した。
ジョッシュはこの状況に困惑し、スレイは蚊帳の外であるように、一人その光景を眺める事しかできなかった。
「あっ、いけない。友達待たせているから行くね」
アイネは約束を思い出して、三人に別れを告げて去っていった。
「さてと、俺たちも広場にでも行くか?」
「残念だけどもう時間よ」
レーヴァは懐に入れていた懐中時計を手に取り、それを覗きながら言った。
「そうか・・・まぁ仕方ないか」
「うん、そうだね」
三人は村に戻り、ジョッシュの家に着くと、そこにはテーブル上のレイアウトをしているレーナと、料理を作っていたカルロがいた。
「あっ、お姉ちゃんだ!」
レーナが窓を見て、帰ってきたレーヴァに気付く。
彼女はテーブルのレイアウトを中断し、ジョッシュの家から出て自分の姉に走り寄った。
「お姉ちゃん、お帰りなさい!」
彼女はレーヴァに抱き付いた。
「うん、ただいま」
レーヴァも自分の妹に抱き返した。それを見て、スレイとジョッシュはお互いに顔を合わせながら笑った。
ジョッシュの家に入った三人は、それぞれテーブルのレイアウトや料理を手伝う。レーヴァはカルロに代わり料理を作っていた。
「すまんな、レーヴァ」
「良いんですよ、これぐらい」
彼女は、カルロから料理を引き継いだのにも関わらず、滞りなく進めていた。6人分の料理を作るのをカルロだけに任せるのは申し訳ないとは思ったのだろう。
それからあまり時間が経たない内に料理が完成した。
新年前の献立は、ブルーロブスターのグリル、豚、牛、鶏肉のグリル、あとはヴァートレスの村で収穫された野菜のサラダや、竜ヒレを出汁に使ったスープで、スレイやジョッシュは卓上に置かれた料理を見て、子供のような純粋な眼差しで眺めていた。
「まだ食べちゃダメよ」
「分かってるって」
ジョッシュとレーヴァが話していると、クレイグも帰って来た。
「おう、親父」
帰ってきたクレイグをジョッシュが出迎えた。
「すまん、待たせたな」
「料理が冷める前で良かったですね。出来たてですよ」
「すまんな」
「どうぞ、席はこちらです」
彼がレーヴァに言われた席に着き、食卓を囲んだところで食べ始めた。
スレイ達は食べながらそれぞれ話をする。最近の状況から話が進み、料理の感想も話の合間に出ていた。卓上を囲んでいる6人共、料理については満足していた。
料理を食べ終わった後のこと、レーヴァとレーナが食器や皿を洗い、カルロは一度、自分の家に戻った。クレイグは自室に戻って休み、スレイはジョッシュと雑談をしていた。
「最近、何か思い出せたか?」
ジョッシュがスレイにそう言った。
スレイがエヴォルドに来てから1年も経っており、彼自身もこの1年は長く感じた。
「少しだけ思い出せたような気がする・・・」
「へぇ、どんな記憶だ?」
「確か・・・俺が前にいた世界は、長方形の柱みたいな建物が何本も建ってて、馬が引っ張らない馬車みたいなのもあったような気がする・・・」
「馬が引っ張らない馬車?魔法で動いてるのか?」
「分からないけど・・・どうなんだろう、一種の魔法と言えるのかな・・・」
「うーん・・・不思議な世界だな」
「そうだよな・・・」
「あれは?」
ジョッシュが唐突に話を変える。彼にとって相当気になる事があったようだ。
「あれって?」
「銃だよ銃。確か、天星人の世界から銃が伝わったんだよな?」
「俺はよく分からないけど・・・その世界では剣や槍から銃に変わってるんだ」
「ほう、銃が主流なんだな」
「うん」
「お前はその世界で何してたんだ?」
「働いていたよ」
「冒険者とかか?」
「いや、会社員・・・としてかな」
「カイシャイン?何だそれ?」
「色々あるけど、俺がやっていたのは書類を作ったりする仕事かな」
「ふーん、まるで冒険者ギルドの職員みたいだな」
「そうなのかな?」
「ああ」
「だったらそっちに───」
「お、おい、まだ辞めないでくれよ。まぁ、そっちの方が良いなら否定しないが・・・」
「冗談だよ」
スレイはジョッシュに冗談を言い、二人はお互いに顔を合わせて笑った。
彼が冗談を言えるようになったのは慣れて余裕が出たのか、最初の時と比べると表情も柔らかくなっていた。
「あれ、お姉ちゃんもう時間じゃない?」
レーナがレーヴァの腰に掛けた懐中時計を見て言った。
「えっ、本当?」
レーヴァが懐中時計を手に取って確認すると、年を越すまであと1分だった。
「あと1分ね」
「そろそろか・・・」
ジョッシュ達は家から出ていき、スレイも付いて行った。
そして1分後、城下町の方から花火が上がる。年を越した合図で、新年の幕開けだ。
「あけましておめでとう───みんな」
年越し後、スレイ達はそれぞれ自分の家に戻っていく。スレイが家に戻ると、彼は疲れ切っていたのかすぐに眠ってしまった。
建物が見える。
長方形の建物。
俺はそこに行く。
一日一日同じことの繰り返し。
何かを忘れているような気がする。
自分は誰で、何なんだ、何を忘れているのか───。
スレイが夢から目を覚ます。彼は自分が見た初夢に対して、彼は不思議な感覚を覚えた。
まるでそれは、何かを忘れているような違和感で、ベッドに座り直したスレイは、俯きながら溜め息を吐いた。
休日が明け、訓練所に戻ってからクレイグから訓練生にある話がされた。
「3月上旬に進級試験を行う。
これの合否によって、お前達が訓練生から候補生に上がれるか決まる。
詳細についてはエントランスにある掲示板に貼ってあるからよく確認しろ」
その話が終わった後、訓練生達は騒々しくなった。
これを合格しないと、訓練生から候補生に昇級できず、銃士隊から離れてしまう。
特にジョッシュなどは不安だった。
「ああ、来ちまったよ・・・」
「どうした? 怖気付いたか?」
「うるせぇ、怖かねぇよ!」
「まぁまぁ」
ヴィルトの言葉に激昂するジョッシュをスレイが宥めた。
スレイ達が寝床に戻ると、それぞれ試験について考えていた。
───楽観的に考える者もいれば、絶望したような表情で俯いている者もいて、スレイも内心では焦っていた。
それからというもの、進級試験に向けての訓練が始まった。
試験内容は主に実技で、段差などがあるアスレチックを時間内に駆け抜けてゴールまで向かうのが目的だが、その道中で、敵を模した案山子が高所や低所にいるので、それらをライフルや拳銃、そして銃剣で攻撃しないといけなかった。
「・・・というのが試験内容だ。誰か質問は?」
バートンから問われて、ミッチェルという訓練生が手を挙げた。
「ミッチェル、何の質問だ?」
「弾が無くなるとどうなるんですか?」
「弾が無くなっても試験は続くが、もし高台や低所にいる的は攻撃できなくなる。バヨネットも1人1本だから用心しろ」
それを聞いて、スレイの手から汗が滲み始めた。
「〔もし一体でも外せば───〕」
彼の不安はある意味、落ちることを意味していた───的を一体でも外せばその時点で不合格の確率は高くなる。折角の1年間が無駄になってしまうのだ。
「スレイ、大丈夫か?」
隣にいたシェイルが彼を見かねて声を掛ける。その表情は、具合が悪いように青白くなっていた。
「いや、大丈夫・・・」
スレイにとって、前いた世界では今よりも大人の筈だった。
これ以上のプレッシャーなら経験している筈───なのにも関わらず彼は震えが止まらなかった。
「〔精神的にも戻ったのかな・・・それともこれが本来の自分なのかな・・・〕」
変に思い悩んでいたスレイだが、今は進級試験合格に向けての訓練に励むべきだと思い、訓練を始めた。
訓練を始めたスレイを最初に待っていたのは、高所に続く縦に細長い台だった。
この狭い足場を歩いて上まで行かなくてはならない。滑ると一貫の終わり、それが高くなっていくほど身に染みて分かる。彼は平静さを保ちながらも早めに突破した。
それを突破しても次からが本番だった。次に待っていたのは、障害物や狭い足場のある道で、ここの障害物は何箇所か乗り越えないといけないように設置されている為、もし此処で手間取っていると時間のロスになってしまうのだ。
案の定スレイは障害物を乗り越えるのに手間取ってしまい、焦りながらもスレイはゴール直前のところまでたどり着いた。
ゴールに辿り着くには、地上まで垂らしているロープに金具をつけて降りないといけない為、高所が苦手ならあまりにも酷な事だった。
なんとかゴールまで辿り着いたスレイだが、辿り着いた時点で、柱時計の砂は殆ど下に落ちていた。
「だいぶ手間取っていたが、最初はそんなものだ」
バートンがフォローを入れながら言ったが、彼にとって、まだ不安は拭えなかった。
それから次の日、次の日とやっていき、何日か後から、本番と同じような試験が始まった。
本番を想定した試験では、的の案山子が配置されていた。
中には鎧や兜を身につけている案山子もいる為、銃弾を命中させたとしても弾かれてしまう可能性がある。正確に当てないといけない雰囲気が漂う中、再びスレイの出番になった。
「今度こそ・・・!」
スレイは最初の難所を突破する道中の案山子を撃った。
案山子は、低所にいたりもする為、嫌でも下を見なくてはならない。吹き止まない風に曝されるスレイは、拳銃を構えて案山子を撃つ。
しかし、手が震えていたせいか、銃弾を外してしまった。
銃を撃った反動で、スレイは少し後ろに仰け反りバランスを崩しそうになるが、なんとか耐えてバランスを戻し、もう一度標準を定めて撃つ。2発目はなんとか胴体に当たり、彼はひとまず前に進んだ。
その後は、障害物や狭い足場を突破しながら案山子に当てていく。
しかし、何発か外してしまい、時間の方を気にしていたスレイは諦めてゴールに向かった。
落ち込むスレイを心配して、ジョッシュが励ました。
「大丈夫だって、まだ試験まで猶予はある」
「・・・でも俺は、ジョッシュやヴィルトのように上手くいかないよ」
「俺とかは訓練生になる前からこんな感じの事はしてたしなぁ・・・」
「どうすれば上手くなるんだろう?」
「的の位置覚えるとか?」
しかし、的の位置は人によって配置が変わる。高台にいた的が低所にいたりする為、覚えたとしても変わっていれば意味がなかった。
「でも人によって違うからなぁ・・・」
「まぁ、的の数は10体だから位置については運次第だな」
「うーん・・・」
その後、スレイは訓練時に、他の訓練生の状況を見ていた。
手慣れているジョッシュやヴィルト、それに覆面の少年などは無難に突破している。
スレイは寝床で、気持ちを落ち着かせる為に手帳を読んでいた。
その手帳は、クレイグから渡された時から御守りのように持っていて、メモ帳として使っていた。
「〔どうすれば良いんだろう・・・〕」
心の中で呟いていると、誰かが起き始めた。
「よぉ、まだ寝てなかったのか?」
「何というか・・・」
ヴィルトが手帳に書いたメモを見ると、彼は鼻で笑った。
「何かおかしい事あった?」
「いや、書いてるのは偉いが・・・あんまり考え過ぎんなよ」
「でも・・・」
「お前の訓練見てたけど、焦りながら銃撃ってる時あるよな」
「確かに・・・」
「一旦落ち着いてから撃ってみな、何でも良いからまず焦らん方がいい。
あと、考えるんじゃなくて感覚で撃ってみな」
「ああ・・・分かった」
スレイはヴィルトに言われたことを一応記録し、ヴィルトは再び寝床に戻った。
それから本番当日となり、訓練は1日2人ずつ行われた。スレイの前にジョッシュやヴィルトなどが試験に臨んだが、彼らは難無く突破していた───彼はプレッシャーに耐えつつも、試験に臨んだ。
「今度こそ・・・」
自分を奮い立たせるスレイに、ジョッシュが後ろから右肩を軽く叩いた。
「おう、気張ってけよ」
「ああ」
彼は親友からの励ましを貰い、装備を整えた。
彼がスタートラインの前に立ったところで、バートンが合図を出して試験は始まる。砂時計による制限時間は約5分、それまでに全ての的に命中させ、ゴールに辿り着かないといけなかった。
最初の上に続く細長い足場の上を歩き、次のコースになる前の低所で案山子がいて、しかも鎧を着ていた。
「〔一呼吸置いてから感覚で・・・撃つ〕」
右腰のホルスターから拳銃を取り出して、それを1体目の案山子に撃つ。
すると、案山子の頭に命中したようで、命中したと同時に、素材の藁が少し散った。
スレイは命中したところまでは見ずにそのまま進んだ。
次のコースでは高所や低所にも案山子がいた。
残りの案山子は9体、合格する為には全部命中させないといけない。スレイは拳銃から左肩に掛けたライフルに持ち替え、照準を合わせながら撃った。
何発か外したが、6体の案山子には命中した。残り3体は道の途中にいる。
スレイは左手に銃剣を持ち、右手には拳銃を持って、両腕を交差させる。
これは銃士隊における近接と中距離戦闘を予想した持ち方だ。
バヨネットを近くの案山子に刺して、鎧や兜を着た案山子に拳銃を撃つ。そして、再び走りながら最後の案山子に拳銃を撃って通り過ぎ、ロープに金具を取り付けて下に降りた。
そして、ゴールまで辿り着きスレイの試験は終わりを迎える。
それから日が経っていくうちに彼の後に行う訓練生も次々に試験が終わった。
それから数日後、クレイグに一人ずつ呼ばれ、スレイの番になった。
「スレイ、よく頑張ったな。お前は合格だ」
彼はそう言われて、笑顔で感謝して出て行った。
出て行った後、彼は合否を訊かれて本当の事を言った。
「おお、やったな!」
「凄いじゃん!」
「流石だな」
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しかし、まだ銃士隊になれるわけではない───彼らにとって、ここからが本番でもあった。
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