ユニコーンの眠る場所

みっち~6画

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2 あまがえるとゲーム②

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「命・尽きる・おまえ・すぐ」
 何を言われているのか、すぐには飲み込めない。
「今、なんて?」
「知らない・理由・分からない・答え」
 カエル男は、素知らぬ顔で淡々と単語を羅列した。
 いよいよ薄気味悪くなって背を向けたぼくに対して、カエル男はさらにたたみ掛けてくる。
「裁き・さまよう・永遠・永遠」
「やめろ!」
 懸命に走っているのに、様子を見ようと振り返ると、カエル男は同じ距離を保って付いてくる。
「なんでだよ!」
 いや、相手は足を動かしているようには見えないのだから、もしかしたら、ぼくのほうがこの場で足踏みしているだけなのだろうか。
 ――分からない。
 脱力した瞬間、けぶっていた雨の幕がわずかに晴れた。
 うわあ、と叫ぼうとしたのを無理に飲み込む。少しでも重さを加えると、落ちてしまうと思ったのだ。
 ぼくとカエル男は、高い雲の上から淡い光に包まれた街を見下ろしていたのだった。


 一年の半分以上を灰色の空で覆われる地方都市に生まれたぼくは、大学を卒業し、東京で就職し損ねた。
 自分が何をしたいのか、明確なビジョンも持たないまま、様々な業種の面接を受け、いくつかの不採用通知が届いた。
 落ちた、ということさえ明確でない場合もあった。
「おまえは何がしたいのだ」
 人に言われてようやく初心に帰り、運よく地元の女子高の非常勤講師に収まることができた。
 それから、地道にこつこつ働いてきた。
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