少年王と時空の扉

みっち~6画

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28 扉が開くとは限りません③

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 ふぅむ、と青スーツの男がため息をもらすのが聞こえた。
「しかし、まだ約束の時間が残っております。三つのクイズはどうなりましたか? ご家族の居場所は? たとえエレベーターが見えたとしても、時間になるまでは扉が開くとは限らないのです」
 抗議しようとした隼斗に、それでは、と非常な声が別れを告げる。
「ご健闘をお祈り致します」
 青スーツの男の声と共に、エレベーターはするりと消えた。
 再生、カチリ。 頭の中で、間抜けな声が響き渡る。
「何だよ、押して損した! ちくしょう!」
 いくら叫んでも、この危機を乗り越えられるわけではない。待て、のお預け状態を脱したサンドワームは、隼斗に鉄槌を加えようと嬉々として肢体をくねらせている。
「もう何もかも、最悪だ!」
 歴史好きの姉に押し切られたが、そもそも隼斗はエジプト展よりも、野球の試合を見に行きたかったのだ。
 野球なんてルールすら分からない、と口をとがらせていた姉も、球場は暑くて耐えられない、と頭を抱えていた母も、今では激しく後悔しているに違いない。
 どこか身を隠せる場所はないかと、隼斗は駆け出した。
 その動きに合わせるかのように、サンドワームもまた躍り上がる。大きな砂丘の真下まで逃げてきて、肩で息をした。これ以上、どこにも行けそうにない。
 凶悪な本性をむき出しにしたサンドワームは、じりじりと眼前に迫ってくる。
 おまえ、とささやくような声が隼斗の上に降った。
「そのまま動くなよ?」
 隼斗は慎重に、声の主を探した。
 砂丘の上。白銀の覆いで全身を包み込み、鋭い目元でこちらを観察している者がいる。
 彼はその黒々としたひとみで、挑むように隼斗を見下ろした。風が吹くたび大仰に布が舞って、まるで架空の世界の住人のように思える。
「おれの言うとおりにするか? ならば、助けてやれるかも知れないが」
 その声には、他者を威圧する静かな威厳に満ちていた。
「あやつの目は退化している。物音のするほうに攻撃をしかけているだけだ、闇雲にな」
 隼斗がうなずくのを確認し、彼は優美なしぐさで懐から鈴をしゃらりと取り出した。
「息を止め、何があってもそこから……動くな」
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