少年王と時空の扉

みっち~6画

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29 扉が開くとは限りません④

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 鈴は、銀色の細工がふたつ。それぞれ、赤と黒のリボンで結ばれている。
 隼斗はそれに、見覚えがあった。ところが、どこで見たのかまるで思い出せない。隼斗が考えている間に、男は鈴を口元に軽く当て、何事か小さく祈った。
 次に、たっぷりとした布地の合間から、細長い棒切れを取り出した。彼がそれを器用に使い、砂地を移動するのを見て、「ああ、杖か」と隼斗は思い当たる。
「ケガをしてるの? だったら、あんなバケモノと戦えるわけがないよね」
 いつでも助太刀できるように、中腰になって腕のタブレットを構えた。大きく息を整える。
 不安げな隼斗の心配をよそに、彼は大仰な仕草で杖を振り上げ、砂地を叩きつけた。サンドワームの巨体がゆっくりと向きを変えたのを確認し、鈴を振る。
「ここに来い。そう、こっちだ」
 息を殺して見守る隼斗の前で、彼はサンドワームを砂丘の下へと誘い込んだ。そこは、先ほどまでエレベーターのあった場所だ。まるで円を描くように、砂が中央に向かって流れている。
「砂が動いている? ……流砂!」
 それは、飲み込まれたら最後、いくらあがいても沈んでいくという恐ろしいトラップだ。
 音も無く、隼斗の腕のタブレットが震えた。液晶画面に大文字が映し出される。
『視力の弱いサンドワームの退治の仕方は?』
『その① 危険な流砂を避け、音を立てないように別々の方向にそっと離れる』
『その② わざと音を立てて誘導し、流砂に落として沈める』
 エレベーターが出現したときと同じく、世界は動きを止め、隼斗の回答を待っている。
「あのバケモノ、ここでなんとかしないと、きっとまた現れる。それに、きっと彼は……」
 そっと、液晶画面をタップした。

 男は、文字通り天高く鈴を投げ上げた。つられた巨体が、空中に躍り上がる。しゃらしゃら音を立てながら鈴は砂地に落ち、隼斗がまたたきをする間もなく沈み込み始めた。
 続いて、サンドワームが巨体をうねらせ、ずぶずぶと砂にのみ込まれていく。その姿が完全に視界から消えたとき、隼斗は声をしぼり出すようにしてうなった。
 礼を述べると、「気にすることはない」とそっけない反応が返る。名前を聞こうとして、彼とことばが通じ合っていることに思い当たった。
「あの……」
 エレベーターのことを知っているのか、と隼斗は聞こうとした。
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