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37 策士が策に溺れる世の中です②
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待って、と隼斗は声を上げる。
「それは違うよ。父さんは、ぼくの父さんだよ。遠藤家の大黒柱でしょう? 星派とか、太陽派とか、何の話だよ!」
父ヘムオンの片まゆが、つり上がる。
「何が違うと申すか。我は、先王の遺児・ネフェルアァトが息子ヘムオンであるぞ」
ぽつり、と最初の一滴が隼斗のほおをぬらした。
「太陽派に殺された我が父の恨みを、このピラミッドに込め、星派のシンボルとするのだ」
次第に強まる雨足に、広場の群集たちが散りじりに離れていく。
ずぶぬれになりながらも隼斗は唇をかみ締め、父の顔を見つめ続けていた。
「帰ろうよ、父さん……帰らなきゃ」
その時、父ヘムオンの手の中にあったままのタブレットが、ぶるり、と震えたのが見えた。
「ぼく、もう我がまま言ったりしないから。もう、あの、家に帰ってさ、またキャッチボールとか……そういうの、やろうよ」
ぴっ、ぴっ、と小さなアラーム音が聞こえ、液晶画面のカウントダウンの数字が、一に減った。
「……帰るか」
放心したような父が、息を吐き出す。
「どうしたんだろうな、おれは。なんだか頭が痛い。ずきずきする。ああ、……もう時間がないな。早く母さんとお姉ちゃんを探して、エレベーターに乗らないと」
安心のため息をもらしながら、隼斗は遠くで様子をうかがっている兵士らを警戒し、さらにアムルの姿を探した。
「ヘムオン様」
先程よりずっと近い位置から、アムルが声を上げた。
「この度のこと、本当に申し訳ございませんでした。誤解を招く行動をしてしまったことは、完全に私の落ち度。深くお詫び致します。これを、今この場でお返し致します」
首から黄金のメダルを外したアムルは、まるでファラオへの献上品とでもいうような様相で差し出した。
父がそっと、隼斗の背中を押す。
隼斗はすぐに受け取ろうとしたが、目いっぱいに腕を伸ばしてもわずかに届かない。
半歩だけ、前に出た。それでもわずかに、メダルには届かない。そればかりか、先ほどよりもさらに遠くなった気さえする。
「それは違うよ。父さんは、ぼくの父さんだよ。遠藤家の大黒柱でしょう? 星派とか、太陽派とか、何の話だよ!」
父ヘムオンの片まゆが、つり上がる。
「何が違うと申すか。我は、先王の遺児・ネフェルアァトが息子ヘムオンであるぞ」
ぽつり、と最初の一滴が隼斗のほおをぬらした。
「太陽派に殺された我が父の恨みを、このピラミッドに込め、星派のシンボルとするのだ」
次第に強まる雨足に、広場の群集たちが散りじりに離れていく。
ずぶぬれになりながらも隼斗は唇をかみ締め、父の顔を見つめ続けていた。
「帰ろうよ、父さん……帰らなきゃ」
その時、父ヘムオンの手の中にあったままのタブレットが、ぶるり、と震えたのが見えた。
「ぼく、もう我がまま言ったりしないから。もう、あの、家に帰ってさ、またキャッチボールとか……そういうの、やろうよ」
ぴっ、ぴっ、と小さなアラーム音が聞こえ、液晶画面のカウントダウンの数字が、一に減った。
「……帰るか」
放心したような父が、息を吐き出す。
「どうしたんだろうな、おれは。なんだか頭が痛い。ずきずきする。ああ、……もう時間がないな。早く母さんとお姉ちゃんを探して、エレベーターに乗らないと」
安心のため息をもらしながら、隼斗は遠くで様子をうかがっている兵士らを警戒し、さらにアムルの姿を探した。
「ヘムオン様」
先程よりずっと近い位置から、アムルが声を上げた。
「この度のこと、本当に申し訳ございませんでした。誤解を招く行動をしてしまったことは、完全に私の落ち度。深くお詫び致します。これを、今この場でお返し致します」
首から黄金のメダルを外したアムルは、まるでファラオへの献上品とでもいうような様相で差し出した。
父がそっと、隼斗の背中を押す。
隼斗はすぐに受け取ろうとしたが、目いっぱいに腕を伸ばしてもわずかに届かない。
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