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38 策士が策に溺れる世の中です③
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アムルの様子をうかがうも、彼は目を伏せたまま動かない。そこで隼斗は、さらに体重を前に移動させた。腕を伸ばす。
殺したのか、とくぐもった声音が薄暗闇の中で響いた。
隼斗は、びくりと身を強張らせる。ぎらついたアムルのひとみが、至近距離で隼斗を見上げた。
「おまえ、本物のヘムオン様を……殺したのか」
いまだ雨は、やむ気配を見せない。
隼斗の額を直撃した雨粒は、そのままほおを伝ってアゴの先から流れていった。
先ほどまでの、うろたえた姿と打って変わり、凶悪な怒りに包まれたアムル。その腕が、するりと隼斗の手首を押さえつけた。
ばかなことを、と父ヘムオンが反論する。
「黙れ、偽者!」
真っ赤なひとみをぎらつかせたアムルは、いよいよ力を込めて言い放った。
「尊きファラオの従兄弟君……、大切な星派の遺志を受け継ぐヘムオン様に、なんたることを!」
砂漠にあり得ない豪雨が吹きすさび、隼斗の身をたたきつける。
「痛い……離せよ!」
きつく手首を捕らえられたまま、隼斗はあらん限りの力で抵抗した。
「その男はヘムオン様ではない! こいつ共々捕まえてくれ、すぐにだ!」
がなり声でわめき立てるアムルは、兵士らが偽ヘムオンではなく自らを捕らえようと動き出したと見るや、半狂乱になってメダルを振り回した。
「ウソだと思うのならこれに触れてみろ、真実が聞こえるぞ!」
おまえたち、と冷静な声音で父が兵士らに語りかける。
「おまえたち、偽りの戯言に踊らされるではないぞ。いいか、ここは私に任せ、クフ王をお守りするのだ。行け!」
指示を受けた兵士らは、すぐさまファラオのいるテントの中に駆け込んでいった。
チッと舌打ちしたアムルは、腹いせに凶暴な力を隼斗の腕に加える。体をひねって逃げようとするが、まったく振り払うことができない。
「息子を放せ」
父が上腕を膨らませて、気色ばんだ。
「ほぅ、息子ね」
目を細めて口元を引きつらせたアムルは、隼斗の肩を激しく突き飛ばす。
殺したのか、とくぐもった声音が薄暗闇の中で響いた。
隼斗は、びくりと身を強張らせる。ぎらついたアムルのひとみが、至近距離で隼斗を見上げた。
「おまえ、本物のヘムオン様を……殺したのか」
いまだ雨は、やむ気配を見せない。
隼斗の額を直撃した雨粒は、そのままほおを伝ってアゴの先から流れていった。
先ほどまでの、うろたえた姿と打って変わり、凶悪な怒りに包まれたアムル。その腕が、するりと隼斗の手首を押さえつけた。
ばかなことを、と父ヘムオンが反論する。
「黙れ、偽者!」
真っ赤なひとみをぎらつかせたアムルは、いよいよ力を込めて言い放った。
「尊きファラオの従兄弟君……、大切な星派の遺志を受け継ぐヘムオン様に、なんたることを!」
砂漠にあり得ない豪雨が吹きすさび、隼斗の身をたたきつける。
「痛い……離せよ!」
きつく手首を捕らえられたまま、隼斗はあらん限りの力で抵抗した。
「その男はヘムオン様ではない! こいつ共々捕まえてくれ、すぐにだ!」
がなり声でわめき立てるアムルは、兵士らが偽ヘムオンではなく自らを捕らえようと動き出したと見るや、半狂乱になってメダルを振り回した。
「ウソだと思うのならこれに触れてみろ、真実が聞こえるぞ!」
おまえたち、と冷静な声音で父が兵士らに語りかける。
「おまえたち、偽りの戯言に踊らされるではないぞ。いいか、ここは私に任せ、クフ王をお守りするのだ。行け!」
指示を受けた兵士らは、すぐさまファラオのいるテントの中に駆け込んでいった。
チッと舌打ちしたアムルは、腹いせに凶暴な力を隼斗の腕に加える。体をひねって逃げようとするが、まったく振り払うことができない。
「息子を放せ」
父が上腕を膨らませて、気色ばんだ。
「ほぅ、息子ね」
目を細めて口元を引きつらせたアムルは、隼斗の肩を激しく突き飛ばす。
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