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39 策士が策に溺れる世の中です④
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雨でぬれた前髪をかき上げ、アムルはそのまま隼斗をにらみ据えてくる。そのひとみが、胸の辺りで止まった。
「……へぇ? 黄金は、もうひとつあるのか」
口角をつり上げ奇妙な笑い顔を作ったアムルは、太い腕を隼斗の胸元に伸ばした。
「だめだ! これはシュンから借りた大事なものなんだから!」
精いっぱいの抵抗のつもりで、雨で重くなった砂の泥をアムルに向けて投げつけた。半笑いのアムルの指先が、メダルに触れる。
びくりと身を強張らせた隼斗だったが、当のアムルはそのままずるずると後ろに下がっていった。
「行け、隼斗! 力の限り、走り抜け!」
ヘムオンの衣装を振り乱した父が、アムルの首に食らいついたまま、叫んだ。
「でも、父さん……」
こみ上げてくる熱いものをなんとかこらえ、ぼう然と格闘するふたりを見つめた。
「行けぇ!」
その強い一撃が、アムルのアゴに決まる。
あわてて加勢しようと飛び出そうとした隼斗の腕を、何者かが押さえ付けた。そのまま広場を引きずられ、群衆に紛れる。
砂地に出て、前を行く見覚えのある後ろ姿を見つめながら、隼斗は何度もしゃくり上げて、思うまま涙をこぼした。
「シュン……どうして……?」
彼の背は答えない。
そのままふたり、並んで砂地を歩き続けた。やがてたどり着いた砂丘のふもとに、扉の開いたエレベーターが待っている。
「さぁ、お早くお乗りください。ここで一生を送る覚悟なら、別に止めやしませんけどね」
隼斗は放心したまま、ぼんやり青スーツの男を見上げていた。
「どうです、なかなかスリリングな展開で楽しめ……て……あの、ええっと。なぜ泣くのです?」
「まだ、みんな来ていない」
「最初に忠告させていただきましたでしょう? 乗り遅れれば置いていくと」
青スーツの男は、しゃがみ込んでしまった隼斗の肩をさする。
隼斗は、いまだピラミッドの方角をにらみ据えたままのシュンに、助けを請うような視線を送った。
シュンは、するり、と全身を包んでいた銀色の覆いを外す。その、素顔が見えた。
「……へぇ? 黄金は、もうひとつあるのか」
口角をつり上げ奇妙な笑い顔を作ったアムルは、太い腕を隼斗の胸元に伸ばした。
「だめだ! これはシュンから借りた大事なものなんだから!」
精いっぱいの抵抗のつもりで、雨で重くなった砂の泥をアムルに向けて投げつけた。半笑いのアムルの指先が、メダルに触れる。
びくりと身を強張らせた隼斗だったが、当のアムルはそのままずるずると後ろに下がっていった。
「行け、隼斗! 力の限り、走り抜け!」
ヘムオンの衣装を振り乱した父が、アムルの首に食らいついたまま、叫んだ。
「でも、父さん……」
こみ上げてくる熱いものをなんとかこらえ、ぼう然と格闘するふたりを見つめた。
「行けぇ!」
その強い一撃が、アムルのアゴに決まる。
あわてて加勢しようと飛び出そうとした隼斗の腕を、何者かが押さえ付けた。そのまま広場を引きずられ、群衆に紛れる。
砂地に出て、前を行く見覚えのある後ろ姿を見つめながら、隼斗は何度もしゃくり上げて、思うまま涙をこぼした。
「シュン……どうして……?」
彼の背は答えない。
そのままふたり、並んで砂地を歩き続けた。やがてたどり着いた砂丘のふもとに、扉の開いたエレベーターが待っている。
「さぁ、お早くお乗りください。ここで一生を送る覚悟なら、別に止めやしませんけどね」
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「どうです、なかなかスリリングな展開で楽しめ……て……あの、ええっと。なぜ泣くのです?」
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「最初に忠告させていただきましたでしょう? 乗り遅れれば置いていくと」
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隼斗は、いまだピラミッドの方角をにらみ据えたままのシュンに、助けを請うような視線を送った。
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