47 / 74
47 東の空に見た夢②
しおりを挟む
「歓迎する」
先ほどと一転して笑みを浮かべるシュンを前に、隼斗の頭は混乱の頂点に達した。
短刀を収めてくれたのはいいが、なぜ初めて会ったかのような顔をするのか、まるで理解できない。
シュン、と呼びかけてみても、ギザの台地で見せた親しげな様子など、今の彼からはうかがえない。冷たいひとみが、じっくりと隼斗を観察しているのが分かる。
そこに、騒ぎを聞きつけたらしい老人とほお傷の男が近づいてきた。
「どうしよう、見つかった! ねえ、シュン?」
それでもシュンは微動だにせず、彼らが最後の葦をかき分けるのを待った。
まずいことになったぞ、と隼斗はいつでも駆け出せる体勢を取る。
「……これは、いったいなんたることか」
ほとんど独白のように、老人が放心した。
「言い伝えは真だったか。本当に、預言者様が現れるとは。すぐに王宮に使いを出してツタンカーメン様に報告を……」
「その必要はありませんな」
あとに続いたほお傷の男が、片手を上げる。
「なんと?」
「ファラオならば、そこにおいでです」
つられた隼斗の視線の先には、思案顔のシュンが立ち尽くしていた。
「……えっ、シュン? どういうこと? ファラオって、王様?」
ふらりと足を踏み出した隼斗を、ほお傷の男がにらみ据える。
「待て、動くな。こんな子供が予言者なわけがない。偽物だ! そなた、だれに頼まれたのだ」
何を言うか、とすぐさま老人が擁護した。
「あのメダルを見よ。代々伝えられしものと、瓜二つではないか」
皆の視線が隼斗の胸元に集まった。ふぅむ、とほお傷の男が不満げにうなる。
おまえ、とシュンが、ゆるりと口を開く。
「我らはおまえに話があるのだ」
シュンは真正面から隼斗を見据えた。
その胸元に、自分と同じ黄金のメダルが輝いているのを見つけ、隼斗は飛び上がる。
「なんで? いつの間に! それ、そのメダル。ぼくの……え?」
先ほどと一転して笑みを浮かべるシュンを前に、隼斗の頭は混乱の頂点に達した。
短刀を収めてくれたのはいいが、なぜ初めて会ったかのような顔をするのか、まるで理解できない。
シュン、と呼びかけてみても、ギザの台地で見せた親しげな様子など、今の彼からはうかがえない。冷たいひとみが、じっくりと隼斗を観察しているのが分かる。
そこに、騒ぎを聞きつけたらしい老人とほお傷の男が近づいてきた。
「どうしよう、見つかった! ねえ、シュン?」
それでもシュンは微動だにせず、彼らが最後の葦をかき分けるのを待った。
まずいことになったぞ、と隼斗はいつでも駆け出せる体勢を取る。
「……これは、いったいなんたることか」
ほとんど独白のように、老人が放心した。
「言い伝えは真だったか。本当に、預言者様が現れるとは。すぐに王宮に使いを出してツタンカーメン様に報告を……」
「その必要はありませんな」
あとに続いたほお傷の男が、片手を上げる。
「なんと?」
「ファラオならば、そこにおいでです」
つられた隼斗の視線の先には、思案顔のシュンが立ち尽くしていた。
「……えっ、シュン? どういうこと? ファラオって、王様?」
ふらりと足を踏み出した隼斗を、ほお傷の男がにらみ据える。
「待て、動くな。こんな子供が予言者なわけがない。偽物だ! そなた、だれに頼まれたのだ」
何を言うか、とすぐさま老人が擁護した。
「あのメダルを見よ。代々伝えられしものと、瓜二つではないか」
皆の視線が隼斗の胸元に集まった。ふぅむ、とほお傷の男が不満げにうなる。
おまえ、とシュンが、ゆるりと口を開く。
「我らはおまえに話があるのだ」
シュンは真正面から隼斗を見据えた。
その胸元に、自分と同じ黄金のメダルが輝いているのを見つけ、隼斗は飛び上がる。
「なんで? いつの間に! それ、そのメダル。ぼくの……え?」
0
あなたにおすすめの小説
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
ママのごはんはたべたくない
もちっぱち
絵本
おとこのこが ママのごはん
たべたくないきもちを
ほんに してみました。
ちょっと、おもしろエピソード
よんでみてください。
これをよんだら おやこで
ハッピーに なれるかも?
約3600文字あります。
ゆっくり読んで大体20分以内で
読み終えると思います。
寝かしつけの読み聞かせにぜひどうぞ。
表紙作画:ぽん太郎 様
2023.3.7更新
カリンカの子メルヴェ
田原更
児童書・童話
地下に掘り進めた穴の中で、黒い油という可燃性の液体を採掘して生きる、カリンカという民がいた。
かつて迫害により追われたカリンカたちは、地下都市「ユヴァーシ」を作り上げ、豊かに暮らしていた。
彼らは合言葉を用いていた。それは……「ともに生き、ともに生かす」
十三歳の少女メルヴェは、不在の父や病弱な母に代わって、一家の父親役を務めていた。仕事に従事し、弟妹のまとめ役となり、時には厳しく叱ることもあった。そのせいで妹たちとの間に亀裂が走ったことに、メルヴェは気づいていなかった。
幼なじみのタリクはメルヴェを気遣い、きらきら輝く白い石をメルヴェに贈った。メルヴェは幼い頃のように喜んだ。タリクは次はもっと大きな石を掘り当てると約束した。
年に一度の祭にあわせ、父が帰郷した。祭当日、男だけが踊る舞台に妹の一人が上がった。メルヴェは妹を叱った。しかし、メルヴェも、最近みせた傲慢な態度を父から叱られてしまう。
そんな折に地下都市ユヴァーシで起きた事件により、メルヴェは生まれてはじめて外の世界に飛び出していく……。
※本作はトルコのカッパドキアにある地下都市から着想を得ました。
未来スコープ ―キスした相手がわからないって、どういうこと!?―
米田悠由
児童書・童話
「あのね、すごいもの見つけちゃったの!」
平凡な女子高生・月島彩奈が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。
それは、未来を“見る”だけでなく、“課題を通して導く”装置だった。
恋の予感、見知らぬ男子とのキス、そして次々に提示される不可解な課題──
彩奈は、未来スコープを通して、自分の運命に深く関わる人物と出会っていく。
未来スコープが映し出すのは、甘いだけではない未来。
誰かを想う気持ち、誰かに選ばれない痛み、そしてそれでも誰かを支えたいという願い。
夢と現実が交錯する中で、彩奈は「自分の気持ちを信じること」の意味を知っていく。
この物語は、恋と選択、そしてすれ違う想いの中で、自分の軸を見つけていく少女たちの記録です。
感情の揺らぎと、未来への確信が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第2作。
読後、きっと「誰かを想うとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる