少年王と時空の扉

みっち~6画

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48 東の空に見た夢③

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 あわてて伸ばした指先が、メダルの表面をかすった。
「何をする!」
 ほお傷の男が気色ばむ。少しばかり歳を重ねているが、鍛え上げられた体躯を見ると、引退した軍人なのかも知れない。
「待て、話は終わっていない」
 ほお傷の男を制したシュンが、隼斗に向き直る。
「……落ち着け。おまえのメダルは、そこに」
 確かに、同じものが隼斗の胸元で揺れている。
「メダルがふたつ? じゃあそれ、アムルから取り返してきてくれたの? ……うわぁ!」
 シュンに飛びついて喜ぼうとする隼斗の足元に、深々と何かが突き刺さった。
 間一髪、飛びのいて衝撃をかわす。そこに、荒々しい気配をまとった兵士の一群が、草地の合間から躍り出てきた。
「ファラオ、こちらに」
 老人がすばやくシュンの腕を引いて後ろに下がった。
「待て、おまえはこっちだ!」
 続こうとした隼斗の肩を、ほお傷の男が、上から押さえつける。
「あっ、待ってよ!」
 なおも続こうとする隼斗の腕を、屈強な兵士が捕らえた。
「行かせはせぬ!」
「貴様がファラオのお命をねらった狼藉者か!」
 散々ののしりながら、兵士は次々に隼斗を取り押さえた。
 老人らに守られ立ち去るシュンの後ろ姿を見送りながら、またやっかいな時代に送り込まれてしまった、と隼斗は目をしばたたせた。


 牢屋というものは、どこも暗くてじめりとしているものなのか。放り込まれた石畳の上で、隼斗はうめき声を上げた。
「なんだよ、ちくしょう!」
 引きずられてできた無数のすり傷をこすりながら、深いため息をつく。
 わずかに慣れてきた視線の先では、無数の先客が隼斗の様子をうかがっていた。
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