少年王と時空の扉

みっち~6画

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49 東の空に見た夢④

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 例にならってメダルを取り上げられてしまい、またも理解できないことばの渦に放り込まれ、隼斗は不安で押しつぶされそうになる。
「なんでぼくが、シュンの命をねらわなきゃならないんだよ!」
 通じないことばをわめき散らす隼斗には、だれも近づいてこない。
「シュンはシュンだろ? なんでツタンカーメンなんだよ、もう! ああああああ」
 叫ぶだけ叫んでしまうと、次は妙に気分が落ち込んできた。
 ぐずぐず泣きじゃくる隼斗を見かねたのか、脚を引きずったヒゲ面の男が近づいてきた。涙目の隼斗の前に、硬いピザ生地のようなものをひと切れと、水の入った椀を差し出す。
「……ありがとう」
 男は戸惑うように首をかしげ、再び自分の居場所に戻っていった。
 それを目で追ううち、気がついた。ここにいる者たちは、隼斗の思い描く「囚人」のようには見えない。だれもが清潔そうな服装をしており、礼儀正しく決められた場所に座っている。
 声を荒げてわめく者など隼斗のほかにだれもなく、暗く沈んだ表情をのぞけば、外界の人びととなんら変わりはない。
 もしかして、と鉄格子にしがみついていた手を、隼斗はそろりと離す。
「みんな、ぼくみたいに、でっち上げられたウソの罪で捕まっているとか?」
 そう思うと、急に自分だけ暴れていたのが恥ずかしくなった。
 大人しく決められた場所に戻ると、膝を抱えて小さく丸まって座る。
 やがて、天井近くに開けられた明り取りの窓から光が差し込まなくなって、狭い空間は息苦しい暗闇に落ちた。
 震える肩を抱き、じっと天井をにらむ。
 月が浮かび上がり、そのわずかな明かりが、隼斗の顔を照らす。そのまま、むっつりと小さな月を眺めていると、風に乗った音楽が隼斗の耳に届いた。
「夢でも見ているのかな、ぼく」
 それは、隼斗になじみ深いアニメの主題歌だった。
 日曜日の早朝、それが見たいがために隼斗は寝ぼけ眼でテレビの前に座るのだ。
 いつまでも子供ね、とまゆをひそめる姉の顔が同時に思い浮かび、隼斗は唇をとがらせる。
「……それにしても、ヘタな歌だな」
 歌詞もまちがっているし、と隼斗は舌打ちした。声の主は、歩きながら歌っているのか、しだいに音が大きくなる。
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