少年王と時空の扉

みっち~6画

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52 夢見の国で逢いましょう②

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「でもね、悪い人っていうのは否定しないわ。あいつはツタンカーメン様の地位さえ狙う、野心家よ。その上、王家の血も引いているから、やっかいなの」
 違いない、とシュンは豪快に笑う。
「星読みの預言者よ、おまえの名は?」
「隼斗」
 初めて会ったわけでもないのに、と隼斗は不満げに唇をとがらせた。
「ならば、隼斗。おまえに頼みがある。本来ならば、王が異国の者を頼ることなどしない。だが今は……星読みの預言者である、おまえの力が必要なのだ」
 隼斗は姉を見上げてからシュンを振り返り、もう一度、姉のいる方に体を向けた。
「よく聞いて。王家には、この黄金のメダルが代々受け継がれてきているの。凶星の現れるとき、それとまったく同じものをささげた男が現れ民を導くだろう、って。……そう、それよ」
 思わず、隼斗はメダルから手を離した。
「これが証拠? 待って、待ってよ。これは元々、シュンから預かったものじゃないか。ほら、ギザの台地で。覚えてないの? ぼくのメダルは、アムルに奪われてしまったから」
「おれはシュンではないし、メダルも渡していない」
 さらりと否定すると、シュンによく似た少年王は、改まって隼斗に向き直った。
「隼斗、星読みの預言者よ。預言者は、なんでも正しい答えを持っていると伝えられている。明日、神官アイは公の場でおまえに問うだろう。ここしばらく続く異国の戦士の侵入は、我が父である先々王、アクエンアテンの招いた災いであるのかどうか、と」
 隼斗は目をしばたたせた。何を言っているのか、まったく理解できない。
 姉アンケセナーメンが、すばやくふたりの合間に割って入った。
「先々王はね、それまで信じられてきた多神教をやめて、太陽神だけに祈るよう命じたの。でもね、改革を急ぎすぎて、国はとても混乱した。そうすれば、周りの国が黙っていないわ。次々に進入してきて、国土は荒れた。それを治めるには、すべてを元通りにして、国の政治を安定させるしかないでしょう?」
 隼斗は首をひねる。
「それじゃあ、悪いのは、その先々代だね。王様のくせにみんなを苦しめるなんて、ひどいと思う」
 隼斗のことばを聞いた少年王は、口元をゆがめて小さく破顔した。
「……預言者よ。明日も今の通り、はっきりと先々代の悪行を追及して欲しい」
 少年王は目を伏せた。まるで、自分のことばに傷ついているようだ、と隼斗は思った。
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