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51 夢見の国で逢いましょう①
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あまりの驚きに隼斗はぐふん、とむせ返る。
普段から落ち着いた色合いのデザインを好んでいたはずの姉が、金の縁取りのある純白の衣装に包まれている。
「私はもう行かねばなりません。ですが、お約束致します。必ずや皆様をお救いすると」
仰々しく囚人らに語りかけ、彼らは熱気を持ってそれに応える。それらをぼやりと聞いていると、着飾った姉がぐるりと振り返った。
「行くわよ」
口をぽかりと開けたままの隼斗の腕をがっしりと鷲づかみにし、そのまま牢の鍵を開ける。
大胆不敵な牢破りを、だれもとがめようとはしない。
「……姉ちゃん、ここでは何の役?」
父がギザの台地で、王の従兄弟ヘムオンと呼ばれていたことを思い返し、隼斗は鎌をかける。
「うるさいな、黙って歩け」
歩けと言う割には容赦なく引きずって、アカネは小さな部屋に隼斗を押し込んだ。
窓には厚い覆いがかけられ、外からの視界を遮っている。
来たか、と明かりのない部屋の奥で、だれかが声を上げた。油断しきっていた隼斗は、思わず姉の手を握る。平気よ、とアカネは普段では思いもよらない優しい声音を作った。
「あの方は、ツタンカーメン様。……私の、夫」
そのまま小さくほほ笑むと、映画やドラマの恋人同士がするように彼の背に腕を回した。
衣ずれの音と共に、鈴がしゃらりと音を立てる。どこか聞き覚えのある、鈴の音だった。
「シュン?」
隼斗の声など耳に入らないのか、それとも聞こえないフリをしているだけなのか、姉アンケセナーメンはそのままシュンの横顔に自らのほおを寄せる。
「ちょっと、姉ちゃん!」
姉は弾かれたように顔を上げ、夢から覚めたばかりの赤子のようにぽかりと口を開いた。
「あのさ、その、まったく状況が……のみ込めないんだけど」
急に申し訳ないような気分になって、隼斗は声をひそめる。
薄暗がりの中、窓辺から臨む月を背景に、シュンがすらりと背筋を伸ばした。
「迎えが遅くなって、すまなかった。アイとの交渉がうまくいかずに、時間がかかってしまったのだ」
「アイって……だれ? 悪い人? 敵なの?」
神官よ、と姉アンケセナーメンが答える。
普段から落ち着いた色合いのデザインを好んでいたはずの姉が、金の縁取りのある純白の衣装に包まれている。
「私はもう行かねばなりません。ですが、お約束致します。必ずや皆様をお救いすると」
仰々しく囚人らに語りかけ、彼らは熱気を持ってそれに応える。それらをぼやりと聞いていると、着飾った姉がぐるりと振り返った。
「行くわよ」
口をぽかりと開けたままの隼斗の腕をがっしりと鷲づかみにし、そのまま牢の鍵を開ける。
大胆不敵な牢破りを、だれもとがめようとはしない。
「……姉ちゃん、ここでは何の役?」
父がギザの台地で、王の従兄弟ヘムオンと呼ばれていたことを思い返し、隼斗は鎌をかける。
「うるさいな、黙って歩け」
歩けと言う割には容赦なく引きずって、アカネは小さな部屋に隼斗を押し込んだ。
窓には厚い覆いがかけられ、外からの視界を遮っている。
来たか、と明かりのない部屋の奥で、だれかが声を上げた。油断しきっていた隼斗は、思わず姉の手を握る。平気よ、とアカネは普段では思いもよらない優しい声音を作った。
「あの方は、ツタンカーメン様。……私の、夫」
そのまま小さくほほ笑むと、映画やドラマの恋人同士がするように彼の背に腕を回した。
衣ずれの音と共に、鈴がしゃらりと音を立てる。どこか聞き覚えのある、鈴の音だった。
「シュン?」
隼斗の声など耳に入らないのか、それとも聞こえないフリをしているだけなのか、姉アンケセナーメンはそのままシュンの横顔に自らのほおを寄せる。
「ちょっと、姉ちゃん!」
姉は弾かれたように顔を上げ、夢から覚めたばかりの赤子のようにぽかりと口を開いた。
「あのさ、その、まったく状況が……のみ込めないんだけど」
急に申し訳ないような気分になって、隼斗は声をひそめる。
薄暗がりの中、窓辺から臨む月を背景に、シュンがすらりと背筋を伸ばした。
「迎えが遅くなって、すまなかった。アイとの交渉がうまくいかずに、時間がかかってしまったのだ」
「アイって……だれ? 悪い人? 敵なの?」
神官よ、と姉アンケセナーメンが答える。
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