少年王と時空の扉

みっち~6画

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58 欲しいものは奪い取れ③

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 次の扉を押し開けると、「おや」としわがれた声が隼斗を迎えた。例のほお傷の男と共にナイルの川べりで隼斗を待ち受けていた、あの老人だ。
「もう謁見は終わったのですかな」
 部屋には小さな段差があって、その下に、たくさんの女官が控えている。
 その向こう側に、アンケセナーメンの衣装をまとったアカネがいた。
「ごめんね、いっしょに行けなくて。あたし、どうしてもやらなきゃいけないことがあったのよ」
 隼斗の説明が終わると、仕方ないわ、と吐き出すように姉は言った。
「先々王の都や像が破壊されたのは、有名な史実だもの。どうやったって、そういう結末になるはずよ。あんたのせいじゃない」
「でも、シュンはすごく怒って部屋を飛び出していったよ。このあとすぐ戦争らしいから、心配だよ」
 アカネは、すぐに離れて控えている老人に顔を向けた。
「戦争になるのですか」
 老人は慎重にうなずいて、それを肯定する。そうなの、とつぶやくアカネの手には、薄く色づいた紙片が握られていた。
「ツタンカーメン様は、戦車に乗っていかれるのよね?」
「もちろん、勇敢なるファラオは先頭に立って、戦におもむく方ですから」
 姉の指先が細かく震えているのに気づき、隼斗は不安になった。
「大丈夫だよ。戦争っていっても、側近がたくさんいるんでしょう? 暗殺される隙なんかないって」
「違うわ! 彼は暗殺されたんじゃないのよ。事故なの。馬で引く二輪戦車。そこから落ちて、重症を負うの。それが元で……亡くなるのよ」
 それも史実、と隼斗は尋ねた。
「考古学者たちが彼のミイラをCTスキャンして調べたから、まちがいないの。だから……彼は今まさにこれから……きっと……」
 死ぬんだわ、とアカネのぬれたひとみが、真正面から隼斗を捕らえた。
 くずれるようにその場にしゃがみ込んだ姉を支え、隼斗は思い出していた。
「……待って。そうだよ! さっき見たんだ、ぼく。戦車のところであやしい男を。あいつ、すごく嫌な目をしていた。あの神官やアムルと同じ、どろっとした目。あいつ、戦車に何か細工をしたんだ」
 姉ちゃん、と隼斗は姉の腕を取る。
「助けに行くよ?」
 泣きぬれた顔で弟を見やり、アカネは唇をかんだ。
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