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27 ビスマスの卵⑥
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ステンレス製の鍋を抱えたルゥが部屋に戻るのを待ち、大河は簡易コンロに着火した。ぐつぐつ煮立ってから、ビスマスのインゴットを中に入れる。
不思議そうに見つめる大河に、ルーレットは「レアメタルですよ」と優しくささやいた。
「卵型の器を持ってきてください」
ルーレットの指示で、熱せられたビスマスを流し込んでいく。
「表面が固まったら、真ん中に穴を開けましょう」
固まり切っていないものを鍋に戻して冷やすと、美しい虹色の結晶があらわになった。
ビスマス結晶を手の中で転がし、大河は満足そうにうなずく。
「どうかな、ルーレット。きれいに色が出たと思うんだけど」
「ふぅむ。良い出来です。あとはそれを……」
突然腰骨の辺りに衝撃を感じ、大河はビスマス結晶を取り落としそうになった。
「危ないよ、ルゥ。どうしたんだ?」
「やっぱりあたしは嫌。ルーレットと離れたくないよ!」
苦し気に絞り出したルゥの声音に、大河はぼう然とする。
「何を言っているんだ。これを完成させて届ければ、光の玉がもらえるだろ? そうしたら、さまよい人の影響を受けた伽藍堂も、元の姿に戻って……」
「ルーレットを犠牲にして?」
犠牲、と大河は口の中で繰り返す。
「……ルゥ? 何を言っているのか、おれには分からない」
ことばに詰まったルゥは、大きく頭を振ってから、ぎゅう、と天井をにらみ上げた。
「ルーレットはね、自分が犠牲になることで、光の玉を作り出そうとしているんだよ」
ぼう然と柱時計を見つめていると、ルーレットがかろうじて横目で大河をとらえ、優し気にその名を呼んだ。
「大河君。君は分かってくれますね? こうすることが、わしにとって無上の喜びなのです。この姿になって、半世紀あまり。わしはようやく、あの方のところに届けてもらえるのです」
「届けて……もらえる?」
ハッと身をこわばらせる。
「つまり、ルーレットは伽藍堂の……」
「ええ、未完成の商品なのです」
不思議そうに見つめる大河に、ルーレットは「レアメタルですよ」と優しくささやいた。
「卵型の器を持ってきてください」
ルーレットの指示で、熱せられたビスマスを流し込んでいく。
「表面が固まったら、真ん中に穴を開けましょう」
固まり切っていないものを鍋に戻して冷やすと、美しい虹色の結晶があらわになった。
ビスマス結晶を手の中で転がし、大河は満足そうにうなずく。
「どうかな、ルーレット。きれいに色が出たと思うんだけど」
「ふぅむ。良い出来です。あとはそれを……」
突然腰骨の辺りに衝撃を感じ、大河はビスマス結晶を取り落としそうになった。
「危ないよ、ルゥ。どうしたんだ?」
「やっぱりあたしは嫌。ルーレットと離れたくないよ!」
苦し気に絞り出したルゥの声音に、大河はぼう然とする。
「何を言っているんだ。これを完成させて届ければ、光の玉がもらえるだろ? そうしたら、さまよい人の影響を受けた伽藍堂も、元の姿に戻って……」
「ルーレットを犠牲にして?」
犠牲、と大河は口の中で繰り返す。
「……ルゥ? 何を言っているのか、おれには分からない」
ことばに詰まったルゥは、大きく頭を振ってから、ぎゅう、と天井をにらみ上げた。
「ルーレットはね、自分が犠牲になることで、光の玉を作り出そうとしているんだよ」
ぼう然と柱時計を見つめていると、ルーレットがかろうじて横目で大河をとらえ、優し気にその名を呼んだ。
「大河君。君は分かってくれますね? こうすることが、わしにとって無上の喜びなのです。この姿になって、半世紀あまり。わしはようやく、あの方のところに届けてもらえるのです」
「届けて……もらえる?」
ハッと身をこわばらせる。
「つまり、ルーレットは伽藍堂の……」
「ええ、未完成の商品なのです」
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