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【3】筆頭魔導士、謝罪する
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「あ、あの、父さん。実は……」
まさか卑猥な夢のことを正直に言えるはずもなく、エスティーナはなんとか誤魔化そうとした。しかし、オズがエスティーナの言葉を遮るように口を開く。
「実は……、今までに土を使った魔術をする際、わたくしにはエスティーナという娘の姿が見えていた。会話も交わしたことがある。土の精霊かと思っていたが、実在していたことに驚いたのだ」
そのオズの言葉に、エスティーナは心の中で彼を褒めた。
「そ、そうなの! 私もたまに、オズ様っていう人が夢の中にでてくるなーって思ってたんだけど……」
「そうなのですか。出荷する土を詰めていたのはこのエスティーナなのです。なにか、そのことが魔術に影響したのかもしれませんね」
実際の夢の中のことなど予想もできないだろうし、ユングは二人の言い分を聞いて納得したように頷いた。
「客室までご案内いたします。長旅でお疲れでしょうから、まずはお部屋でごゆるりとおくつろぎください」
ユングが指示をすると、使用人がオズの荷物を持つ。階段を上る彼の後ろ姿を見ながら、ユングがエスティーナに耳打ちした。
「お前がお茶を持って行ってあげなさい」
「えっ!」
「よく分からないが、一応面識があるんだろう? お前が持って行ったほうがいいんじゃないのか?」
「それは、そうだけど……」
なんとなく顔を合わせづらい。お互いにあの夢の記憶があるのなら、非常に気まずい。
しかし、その理由を父親に説明することができず、エスティーナは渋々オズのところにお茶を持って行くことになった。
オズは夢の中ではそれはもう仲睦まじかった相手ではあるが、現実では初対面である。
エスティーナは彼が実在していたことが半分は嬉しかったものの、もう半分は少しだけ残念だった。架空の存在だと思っていたからこそ、気兼ねなく抱かれることができた。
……もっとも、夢の中のエスティーナは体を動かすことができないため、意思とは関係なく抱かれてしまうのだが、それでも心持ちが違う。エスティーナは確かに、夢の中という架空の世界で彼に愛されることに喜びを感じていたのだ。
恥ずかしい……という気持ちはあまりなかった。そんな感情を抱かないほど何度も逢瀬を重ねているし、そもそも村が性におおらかであるため、エスティーナも情交そのものに嫌悪感は抱いていない。ただ、相手が実在する人間であることへの動揺があった。
しかし、あの夢の件について話さなければならないだろうと、エスティーナは心を決めて彼の部屋の扉を叩いた。
「オズ様、お茶をお持ちしました」
「ああ、ありがとう」
部屋の中から、落ち着いた声が聞こえてくる。
「失礼します」
エスティーナはドアを空けると、お茶とお菓子を乗せたワゴンを押して部屋の中に入った。そのエスティーナの姿を見て、椅子に座っていたオズはびくりと肩を跳ね上げる。この反応、やはり彼は夢の記憶があると思って間違いないだろうとエスティーナは確信した。
「こちらに置いておきますね」
エスティーナは紅茶の入ったカップをテーブルの上に置く。すると、オズがすっと立ち上がった。夢の中でも思っていたが、実際に目の前にするとかなり背が高い。
オズは膝をつくと、頭を床に擦りつける勢いで土下座した。
「オ、オズ様っ?」
「すまないことをした!」
筆頭魔導士という身分の人間に土下座をされ、エスティーナは慌てる。
「オズ様、顔を上げてください! 私も突然のことで意味が分からないので、もし、その……、オズ様もあの夢を見ていらしたのでしたら、いったいどういうことなのか説明してくださいませんか?」
「…………」
オズはゆっくりと顔を上げる。彼のほうが背が高いのに、エスティーナが見下ろす形となる。オズの額には赤い痕がついていて、よほど強い力で頭を下げていたことが窺えた。
「……ここで話すことは、他言無用で頼む」
「それは勿論。私もこんなこと人には話せませんし」
エスティーナが承諾すると、オズは床に座ったまま話し始めた。
「まず、前提条件から説明しよう。わたくしのような男の魔導士は、女性と交わると魔力が弱まってしまうのだ。処女と交わり、お互いがお互いとしか関係を持たないのであれば魔力に大きな影響は無い。しかし、関係を持った女性が他の男性と交わったり、性経験が豊富な女性と交わったり、あとは男の魔導士自身が多くの女性と交われば、比例するようにどんどん魔力が落ちるのだ」
「そ、そうなんですか……?」
「これは男の魔導士の摂理だ。よって、高位の魔導士ほど、清らかな身を求められる」
「…………」
――――と、いうことは。
エスティーナは目の前のオズを見た。筆頭魔導士は国で一番の魔力の持ち主であるのだから、即ち彼は……。
「もちろん、わたくしも女性を知らぬ身だ」
「えええええっ?」
あんなに沢山夢の中で交わっていたのに、と、エスティーナは声を上げた。でも確かに、おなじ理屈でエスティーナだって処女だ。あれだけの行為をしても、現実世界の彼女の体は清らかなままである。
「だが、性欲が全く無いわけではない。人並みには性欲があるのだ。わたくしはそれを解消するために……土人形を人間のように具現化する魔術を産みだし、夜な夜なその人形を用いることで己の欲求を解消していた」
「それって、まさか……」
「そうだ。わたくしはてっきり、人形の具現化に成功したと思っていた。作り出した人形は、つくりものの存在だと思っていた。しかし実際には、土人形にそなたの意識を憑依させていたのだろう。わたくしが使用していた土は、この農場の土だ。そなたが土詰めをしていたのだろう?」
「…………」
エスティーナは言葉を失った。確かに夢の中では体が動かなかった。しかし、まさか人形の中に意識を入れられていたとは予想もしていなかった。
「土人形を女性に具現化した姿は、そなたそのものだ。わたくしの潜在意識下にある理想の女性像だと思っていたが、今日、そなたの姿を見て確信した。わたくしの魔術は成功していなかったのだと。命ないものを生きているようにみせかけたが、それは全てそなたの意識を土を媒体として召喚していたからできていたことなのだろう」
潜在意識下にある理想の女性像という単語に、エスティーナはぴくりと反応した。いや、実際はそうではなかったのだが、彼がそう思っていてくれたことが嬉しい。
「そなたは、わたくしの名前を知っていた。土人形に入っているときの記憶があるのだな?」
「自分が土人形の中にいるとは思ってもいませんでしたけど、何をしていたのかははっきり覚えています。体は殆ど動きませんでしたが、自分の意思で話すことができました。でも、夢だと思っていました」
「夢……。なるほど、たまに術が失敗すると思っていたが、あれはそなたが寝ていない時だったのかもしれぬな。寝ているからこそ、意識を召喚できたのか」
顎に手を当てて、オズは納得したように頷く。
「夢じゃ、なかったんですね……」
エスティーナがぽつりと呟くと、オズは再び床に額をこすりつけた。
「わたくしは、嫁入り前の娘に本当にすまないことを……」
「い、いえいえ! 筆頭魔導士様の魔力が弱まってしまうのは国にとって重大な損失ですし、お役に立てていたのなら光栄です。顔を上げてください」
「許してくれるのか……?」
「ゆ、許します! 許しますから、顔を上げてください。筆頭魔導士様が国でどれくらいの地位なのか分かりませんが、不敬罪で捕まりそうで怖いので、とりあえず頭を上げてください!」
エスティーナが慌ててそう言うと、オズは顔を上げた。眉根は寄せられ、まるで悪戯をしかられた子供のような顔だった。その表情を見て、エスティーナは思わず笑ってしまう。
「……くっ」
「?」
小首を傾げたその表情まで幼くて、さらに笑いがこみ上げてきた。エスティーナはぐっと堪える。
「す、すみません……。……ところで、どうして私が未婚だって知っているんです? ……って、処女が土を詰めることをご存じでしたら簡単に推測できますね」
「それもそうなのだが、実はここに来る前に、イカルガ農場のことを調べさせて貰ったのだ。土の質が落ちたと言うことは、何か問題があったのかも知れない。だから、名前までは報告させていなかったが、家族構成や従業員にいたるまで調べ、行方不明者がいないかも調査したのだ」
「ゆ、行方不明……」
「……万が一、無念の死を遂げた死体が埋められていたのなら、その土はもう使いものにならない」
「なっ!」
起きてもいない殺人事件を疑われていたのかと、エスティーナは眉をつり上げた。土人形に召喚されて性処理に使われていたよりも、そちらのほうがよほど悔しい。
「勿論、行方不明者などいなかった。それどころか、この農場について聞く話は、全て素晴らしいものだ。なぜこの農場の土が素晴らしいのか、わたくしには分かった気がする。ここで働く者たちの、そなたの父親への感謝の心が土にいい効果をもたらしたのだろう」
「……そ、そうですか」
怒ったのも一瞬のことで、褒められてしまえば嬉しくなってしまう。我ながら単純だとエスティーナは思った。
「だが今回、届けられた土はいつもより質が悪く、高位の魔術には耐えられなかったのだ」
「あっ! もしかして、ここ一週間あの夢を見なかったのも……」
「そうだ。わたくしの術も失敗していた。わたくしにはあの土人形の術はなくてはならないものだから、こうして直々に調査しに来たのだ」
「…………」
「…………」
お互い、無言で見つめ合う。
「……とにかく、今後の土人形の魔術の件は保留にして、土の質が落ちたことで他の魔術にも支障をきたしている。これはゆゆしき問題であるから、原因を調査したいのだが……」
「あっ、はい。そのためにわざわざここまで来たんですものね。どうぞ、調べてください」
「恩にきる」
礼を言ってオズが微笑む。夢の中で知る彼の表情は情欲にまみれたものばかりだけれど、こうして笑った顔も素敵かもしれないとエスティーナは思った。
まさか卑猥な夢のことを正直に言えるはずもなく、エスティーナはなんとか誤魔化そうとした。しかし、オズがエスティーナの言葉を遮るように口を開く。
「実は……、今までに土を使った魔術をする際、わたくしにはエスティーナという娘の姿が見えていた。会話も交わしたことがある。土の精霊かと思っていたが、実在していたことに驚いたのだ」
そのオズの言葉に、エスティーナは心の中で彼を褒めた。
「そ、そうなの! 私もたまに、オズ様っていう人が夢の中にでてくるなーって思ってたんだけど……」
「そうなのですか。出荷する土を詰めていたのはこのエスティーナなのです。なにか、そのことが魔術に影響したのかもしれませんね」
実際の夢の中のことなど予想もできないだろうし、ユングは二人の言い分を聞いて納得したように頷いた。
「客室までご案内いたします。長旅でお疲れでしょうから、まずはお部屋でごゆるりとおくつろぎください」
ユングが指示をすると、使用人がオズの荷物を持つ。階段を上る彼の後ろ姿を見ながら、ユングがエスティーナに耳打ちした。
「お前がお茶を持って行ってあげなさい」
「えっ!」
「よく分からないが、一応面識があるんだろう? お前が持って行ったほうがいいんじゃないのか?」
「それは、そうだけど……」
なんとなく顔を合わせづらい。お互いにあの夢の記憶があるのなら、非常に気まずい。
しかし、その理由を父親に説明することができず、エスティーナは渋々オズのところにお茶を持って行くことになった。
オズは夢の中ではそれはもう仲睦まじかった相手ではあるが、現実では初対面である。
エスティーナは彼が実在していたことが半分は嬉しかったものの、もう半分は少しだけ残念だった。架空の存在だと思っていたからこそ、気兼ねなく抱かれることができた。
……もっとも、夢の中のエスティーナは体を動かすことができないため、意思とは関係なく抱かれてしまうのだが、それでも心持ちが違う。エスティーナは確かに、夢の中という架空の世界で彼に愛されることに喜びを感じていたのだ。
恥ずかしい……という気持ちはあまりなかった。そんな感情を抱かないほど何度も逢瀬を重ねているし、そもそも村が性におおらかであるため、エスティーナも情交そのものに嫌悪感は抱いていない。ただ、相手が実在する人間であることへの動揺があった。
しかし、あの夢の件について話さなければならないだろうと、エスティーナは心を決めて彼の部屋の扉を叩いた。
「オズ様、お茶をお持ちしました」
「ああ、ありがとう」
部屋の中から、落ち着いた声が聞こえてくる。
「失礼します」
エスティーナはドアを空けると、お茶とお菓子を乗せたワゴンを押して部屋の中に入った。そのエスティーナの姿を見て、椅子に座っていたオズはびくりと肩を跳ね上げる。この反応、やはり彼は夢の記憶があると思って間違いないだろうとエスティーナは確信した。
「こちらに置いておきますね」
エスティーナは紅茶の入ったカップをテーブルの上に置く。すると、オズがすっと立ち上がった。夢の中でも思っていたが、実際に目の前にするとかなり背が高い。
オズは膝をつくと、頭を床に擦りつける勢いで土下座した。
「オ、オズ様っ?」
「すまないことをした!」
筆頭魔導士という身分の人間に土下座をされ、エスティーナは慌てる。
「オズ様、顔を上げてください! 私も突然のことで意味が分からないので、もし、その……、オズ様もあの夢を見ていらしたのでしたら、いったいどういうことなのか説明してくださいませんか?」
「…………」
オズはゆっくりと顔を上げる。彼のほうが背が高いのに、エスティーナが見下ろす形となる。オズの額には赤い痕がついていて、よほど強い力で頭を下げていたことが窺えた。
「……ここで話すことは、他言無用で頼む」
「それは勿論。私もこんなこと人には話せませんし」
エスティーナが承諾すると、オズは床に座ったまま話し始めた。
「まず、前提条件から説明しよう。わたくしのような男の魔導士は、女性と交わると魔力が弱まってしまうのだ。処女と交わり、お互いがお互いとしか関係を持たないのであれば魔力に大きな影響は無い。しかし、関係を持った女性が他の男性と交わったり、性経験が豊富な女性と交わったり、あとは男の魔導士自身が多くの女性と交われば、比例するようにどんどん魔力が落ちるのだ」
「そ、そうなんですか……?」
「これは男の魔導士の摂理だ。よって、高位の魔導士ほど、清らかな身を求められる」
「…………」
――――と、いうことは。
エスティーナは目の前のオズを見た。筆頭魔導士は国で一番の魔力の持ち主であるのだから、即ち彼は……。
「もちろん、わたくしも女性を知らぬ身だ」
「えええええっ?」
あんなに沢山夢の中で交わっていたのに、と、エスティーナは声を上げた。でも確かに、おなじ理屈でエスティーナだって処女だ。あれだけの行為をしても、現実世界の彼女の体は清らかなままである。
「だが、性欲が全く無いわけではない。人並みには性欲があるのだ。わたくしはそれを解消するために……土人形を人間のように具現化する魔術を産みだし、夜な夜なその人形を用いることで己の欲求を解消していた」
「それって、まさか……」
「そうだ。わたくしはてっきり、人形の具現化に成功したと思っていた。作り出した人形は、つくりものの存在だと思っていた。しかし実際には、土人形にそなたの意識を憑依させていたのだろう。わたくしが使用していた土は、この農場の土だ。そなたが土詰めをしていたのだろう?」
「…………」
エスティーナは言葉を失った。確かに夢の中では体が動かなかった。しかし、まさか人形の中に意識を入れられていたとは予想もしていなかった。
「土人形を女性に具現化した姿は、そなたそのものだ。わたくしの潜在意識下にある理想の女性像だと思っていたが、今日、そなたの姿を見て確信した。わたくしの魔術は成功していなかったのだと。命ないものを生きているようにみせかけたが、それは全てそなたの意識を土を媒体として召喚していたからできていたことなのだろう」
潜在意識下にある理想の女性像という単語に、エスティーナはぴくりと反応した。いや、実際はそうではなかったのだが、彼がそう思っていてくれたことが嬉しい。
「そなたは、わたくしの名前を知っていた。土人形に入っているときの記憶があるのだな?」
「自分が土人形の中にいるとは思ってもいませんでしたけど、何をしていたのかははっきり覚えています。体は殆ど動きませんでしたが、自分の意思で話すことができました。でも、夢だと思っていました」
「夢……。なるほど、たまに術が失敗すると思っていたが、あれはそなたが寝ていない時だったのかもしれぬな。寝ているからこそ、意識を召喚できたのか」
顎に手を当てて、オズは納得したように頷く。
「夢じゃ、なかったんですね……」
エスティーナがぽつりと呟くと、オズは再び床に額をこすりつけた。
「わたくしは、嫁入り前の娘に本当にすまないことを……」
「い、いえいえ! 筆頭魔導士様の魔力が弱まってしまうのは国にとって重大な損失ですし、お役に立てていたのなら光栄です。顔を上げてください」
「許してくれるのか……?」
「ゆ、許します! 許しますから、顔を上げてください。筆頭魔導士様が国でどれくらいの地位なのか分かりませんが、不敬罪で捕まりそうで怖いので、とりあえず頭を上げてください!」
エスティーナが慌ててそう言うと、オズは顔を上げた。眉根は寄せられ、まるで悪戯をしかられた子供のような顔だった。その表情を見て、エスティーナは思わず笑ってしまう。
「……くっ」
「?」
小首を傾げたその表情まで幼くて、さらに笑いがこみ上げてきた。エスティーナはぐっと堪える。
「す、すみません……。……ところで、どうして私が未婚だって知っているんです? ……って、処女が土を詰めることをご存じでしたら簡単に推測できますね」
「それもそうなのだが、実はここに来る前に、イカルガ農場のことを調べさせて貰ったのだ。土の質が落ちたと言うことは、何か問題があったのかも知れない。だから、名前までは報告させていなかったが、家族構成や従業員にいたるまで調べ、行方不明者がいないかも調査したのだ」
「ゆ、行方不明……」
「……万が一、無念の死を遂げた死体が埋められていたのなら、その土はもう使いものにならない」
「なっ!」
起きてもいない殺人事件を疑われていたのかと、エスティーナは眉をつり上げた。土人形に召喚されて性処理に使われていたよりも、そちらのほうがよほど悔しい。
「勿論、行方不明者などいなかった。それどころか、この農場について聞く話は、全て素晴らしいものだ。なぜこの農場の土が素晴らしいのか、わたくしには分かった気がする。ここで働く者たちの、そなたの父親への感謝の心が土にいい効果をもたらしたのだろう」
「……そ、そうですか」
怒ったのも一瞬のことで、褒められてしまえば嬉しくなってしまう。我ながら単純だとエスティーナは思った。
「だが今回、届けられた土はいつもより質が悪く、高位の魔術には耐えられなかったのだ」
「あっ! もしかして、ここ一週間あの夢を見なかったのも……」
「そうだ。わたくしの術も失敗していた。わたくしにはあの土人形の術はなくてはならないものだから、こうして直々に調査しに来たのだ」
「…………」
「…………」
お互い、無言で見つめ合う。
「……とにかく、今後の土人形の魔術の件は保留にして、土の質が落ちたことで他の魔術にも支障をきたしている。これはゆゆしき問題であるから、原因を調査したいのだが……」
「あっ、はい。そのためにわざわざここまで来たんですものね。どうぞ、調べてください」
「恩にきる」
礼を言ってオズが微笑む。夢の中で知る彼の表情は情欲にまみれたものばかりだけれど、こうして笑った顔も素敵かもしれないとエスティーナは思った。
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