GELADEN~装弾済み~

如月 風佳

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犬の巣

介抱

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「お前、マジ最悪。デリカシー無さ過ぎでしょ…」

アキラの言葉にヒビキは一先ず、美奈子を抱きかかえたまま肩竦めた。

「いやぁ…だってよ、スパッと教えてやる優しさも誰かは持ってねぇーとさ…」

「話進まないだろ?」と言ってのけるヒビキにアキラは一先ず盛大にため息をついた。
ヒビキの“優しさ”とやらの所為で美奈子はショックで気を失ったというのに…。

「だから、責任持って運んでるだろ…?」

ヒビキの当然といわんばかりの言葉に、アキラはげんなりとまた深いため息をついた。
美奈子が目を回し、シンやヒロは慌てふためいたがケンはポツリと言った。

『一先ず、砦に入ろうよ…。話はそれからじゃないと…』

なので、ヒビキが“責任を持って”美奈子を担ぎ上げて、砦の中に入ったというところだ。

「ぎゃ!!蜘蛛の巣っ!!」

ヒロが絶叫して文句を吐き出している。なんなのよ、この汚さわっっ!!

「ずっと、使われないままの晒しものだったからねぇー…」

ケンは上手に蜘蛛の巣を掻い潜る。ヒロより背が高いのに男性軍は実に上手く障害を掻い潜る。

「わっ!なんかいたっ!!」

「あぁ、ムカデ。」

ヒロの叫び声にアキラがサラリ。

「信じらんないっっ!!」

喚く…木霊す声が煩い。

「ヒロちゃん?少し、ボリューム下げて…頭痛いから…」

コイツの所為で…と、ヒビキに親指を突き立てるアキラにヒロは怒り狂ったネコのように吼えた。

「だったら何とかしなさいよっ!!この下手物をっ!ついでに私は地声が大きいの!!!」

「虫さん殺しちゃ駄目っ!ボクのお友達!!」

「生き物すべてが友達かよ…薄――…俺らの友情…。下手物と同類…」

先頭を行くヒビキは振り返って笑った。手の中のライターが道を明るく照らしていた。
「バシン…って潰されてThe END?」

アキラが苦笑する。

「いや、潰される前に刺して死ぬ…」

ヒビキが性悪に笑う。この男ならやりかねない…

「そりゃあ、蜂なら可能だぁーね…、一発ポッキリ…儚いなー…」

「潰れて死ぬよか、特攻上等…急所刺して高笑いしながら死んでやる。」

ヒビキはニシャッと笑った。アキラもそれを返した。 

とても長い廊下に思えた。ヒビキが立ち止まった先のドアを蹴ると、ドアはバタン!と倒れた。
「ありえねぇー…」

「お前の足癖の悪さがな…」

呟いたヒビキにアキラの突っ込みが素早い。もう、日も完璧に暮れてしまっていたので窓があるのかないのかも解らなかった。
いや、いくら夜でも完璧な闇はないものだ。
良く見ると雨戸がしまっているのが解った。
窓は三つあるらしい。

 荒れ放題の部屋…、家具には白い布がかかっている。室内にもかかわらず靴が砂を噛むのにはどういった理由があるのだろうか…。
「今日はここで寝るって言う提案があるんだけど…スッゲー嫌な人…!」
全員が手をあげた事は言うまでもない。…言うまでもないがどうする事も出来ない。ホテルもなければ、代わりになるようなものもない
「我儘言うな…」
ヒビキがコツンとシンの頭に頭突きする。った――…て、手…あげなかったにょにっ!僕っ!

「質問したのはお前っしょ…、聞かなきゃ誰もいわねぇーところを……」

アキラは心底呆れている。「ヒビキ…、暗黙の了解ってのご存知?」この2人の会話、テンポがよくて正に漫才だ。

「なんにしても、寝かせないとな…」

ヒビキはそう言ったものの、埃のたまるソファーを見て顔を顰めた。人事だが実に気が引ける。

「大丈夫! 布をとっちゃえば綺麗だよー!!!」

シンがソファーにかかっていた白い布を引っ掴み…

「バカ!」

思い切り放り投げた。一瞬でブワリと埃が舞い、真っ白になる。
ヒビキのストップの言葉も無駄に終った。ソファーも床もそして何より自分達も灰被り状態になったのでヒビキの顔が歪む。

「……。あにゃ…?」

ヒビキの只ならぬ、オーラにシンは“てへっ”といい子ちゃんスマイルをし、顔を強張らせた。

「まぁ…、子どものした事だからさ。」

そんな険悪空気を浄化させるケンの声。アキラは自分の髪や体に降りかかってきた埃を掃うと、ヒロの髪にくっ付いていた埃を指で摘まんで取った。

 ソファーの上に降りかかった埃を手で掃わせると、ヒビキはようやく美奈子をそこへ寝かせた。

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