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犬の巣
疑問
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「…」
気を失っている美奈子を凝視するケン。
「ケン、どうかした?」
アキラの言葉にケンはスッと指を指した。美奈子の左手を。
それにしても、指一本でも見事に“清潔感”を醸し出してくる手だ。
「これ、見て…」
押し黙るような声に周りは美奈子の左手に注目する。
「時計か…?」
「腕時計だよ…」
ヒビキが最初に疑問符で尋ねたのはあまりにもそれが十代の女の子の持つような物の状態ではなかったからだ。酷く錆びて止まっている。文字盤は埃で曇ってしまっていて、見えないほどだ。
「これ…、何で錆びてるんだと思う?」
ケンの言葉に周りは顔を見合わせて、首を傾げた。
ヒビキはホールドアップして見せ、美奈子を寝かせたソファーの向かいに座り、銃を出すとシリンダーを外し、弾を詰め始めた。
その時、美奈子が目を覚ました。
「あ、目覚ました!」
シンがそう叫んで美奈子の飛びついた。美奈子は酷い夢の続きを見るハメになった人間のように一瞬で顔が真っ青になったが、「すみませんでした…」と詫びてきた。
すかさず、アキラが笑って見せる。
「いやいや、悪いのはコイツだから☆」
と、ヒビキを親指で指す。美奈子は目を凝らしてヒビキを見た。
「……」
向かいのソファーにドッシリと座り、煙草を咥えたヒビキが“何か”を磨いている。
その“何か”がさながら、映画の中でしか見たことが無いような形状をしていたので美奈子は思わず仰け反った。
「そ…そっ…!」
腰を抜かしたような美奈子の反応にヒビキは「そ?」と首を傾げつつ、煙草の火種をクイッと持ち上げて、煙に顔を顰めながら“銃に弾を込めている”!!!
「じ…っじゅっ!!」
「じゅ?」
また首を傾げてくるヒビキに美奈子は「えっとぉ…」と息を呑んでから…。
「そ、それ…本物ですか?」
「当たり前だろ?」
スパッと返ってきた言葉に美奈子はひっくり返りそうになった。今までの生活では“銃っぽい物”を“本物ですか?”と問うた時に返ってくる答えといったら…
『「まっさかぁ~…」』
だったのにっ!!!
思わず、ヒビキの答えに「まっさかぁ~」と言ってしまっていた美奈子にヒビキは平然と言った。
「いやいやマジで。」
「…」
(マジでかっっ!!!)
その言葉に何処まで突き落とされたか…。なんでこの人…銃なんか持ってんの?!!そういえば、さっきシンが飛び出してきたときもアキラと共に即座に銃を構えていたのを見たけどっっ!!
「あっ!!!!」
美奈子はパンッと手を叩いた。それにヒビキ以外の周りがビクリと反応する。とても面白く珍しい生き物が珍行動をとるのを見ている観客のようだった。
「解った!!解りました!!! ヒビキさん警察官だ!!!」
その言葉にヒビキはあの美しい深紅の瞳を丸く見開いた後、大爆笑し始めた。
「私服警察官っ!そうですよねっ!!」
「私服警察官!!!!」
大爆笑のヒビキにアキラとケンも口を覆う。笑いを噛み殺しているのだ。
「いやぁ、それは絶対に無いと思うなぁー…、」
「ヒビキが警察官…っっ!!」
アキラが背中を向けて密かに笑い始めた。
「えっと…ぉ、じっ…じゃあ…軍人さん?」
ニッポンの軍人が銃を持つのだかどうだかよく解らないが、とりあえず美奈子の頭にはそれぐらいの職種しか出てこなかった。ヒビキはまだ笑っている。合成側の安っぽいソファーに顔を埋めて…。
「ち、違うんですか…」
なんだか、いろいろ不安になってきた。この人たち何者だろう。
「俺は1番近いと思ったけど?」
ケンの言葉にヒビキは笑いをようやく収め、ニシャリと美奈子に笑って見せた。
「俺らがなんで銃を持ってるか…、教えてやろうか?」
その挑発的な顔といったら、ゾクリとさえした。悪魔のように笑うから。
「犯罪者だから。」
その良質の声から零れたイタズラっぽい言葉に、美奈子はまた気が遠くなるのを感じた。
周りではアキラとケンがため息をつき、頭を抱えているのが解った。
「このカバっ!」
アキラのチョップがヒビキの頭に直撃する。
「いってぇーなっ!ホントの事だから仕方ないだろっ!!? ここは2350年だし、俺らは犯罪者だろうがよ…。それとも、“殺し屋”って言えばよかったか?」
「どっちも止めろ…。」
アキラは目を伏せ、頭痛に耐えるような重々しい表情をした。美奈子は…今度は気を失わなかった。しかし、何を問いかけてもボンヤリと天井を見ているだけで応答が無い。今、シンが必死に置いてあった本で美奈子に風を送っているところだ。一瞬にして高熱を出した脳みそを少しでもさませられる結果になればいいのだが…。
ヒロはケンの指示で部屋から出て行き、濡らしたタオルをもって帰ってきた。センスの欠片も無い感じに美奈子の頭にタオルを置く。まるで温泉にでも浸かっているように。
「美奈子ちゃんにしてみれば、2004年がテロで崩壊したって聞かされたほうがマシだったかもしれないね…」
別の部屋から替えの電球を発見したケンは不似合いな部屋の照明、シャンデリアの電球を取り替えていた。
もう夜になってきた…。電気が無いのはさすがにキツイだろう。自分達はいいとしても女の子二人は不安だろうと気を回したのだった。
台に乗って電球を取り替えているケンの言葉にヒビキは「そうか?」と顔を顰める。
「君の言い方がもっとマシだったらそうじゃなかったかもしれないけどね。」
呆れるように微笑むケン。その手が電球をセットし終わるとパッと灯りがともった。
「あの…」
か細い声で美奈子が何か言った。「大丈夫?」とケンがトンと台から降りると顔を覗き込んでくる。
「私には、ヒビキさんや皆さんは普通の方々に見えます。」
その言葉に周りの雰囲気が少しだけ変わった。
「普通?普通に見える?!やった!ケン!やったね!!普通だって!!」
シンは目を輝かせて、美奈子に飛びついた。嬉しい!!!と。ケンは何も答えないままだった。
「違うだろ。」
それを一括するようなヒビキの声にシンはビクリと体を縮めた。ヒビキは美奈子に歩み寄り、彼女の小さい輪郭の先を指で持ち上げた。
「“人を殺したにしちゃあ普通”って言う意味だろ。“普通”の人間のように振舞ってるって…。」
美奈子はその眼力に蛇に睨まれた蛙のように硬直し動けなくなった。
なんという気迫だろうか。普通の男性から醸し出るそれとは桁が違う。今までこんな見据えられただけで動けなくなるような事があっただろうか?
「俺らは慣れてるんだよ…。」
“慣れてる?”と聞き返えしたつもりだったのだが、口からは空気しか発せられていなかった。
「教えてやるよ…、お前らの時代…2004年の先にある未来(今)を。」
気を失っている美奈子を凝視するケン。
「ケン、どうかした?」
アキラの言葉にケンはスッと指を指した。美奈子の左手を。
それにしても、指一本でも見事に“清潔感”を醸し出してくる手だ。
「これ、見て…」
押し黙るような声に周りは美奈子の左手に注目する。
「時計か…?」
「腕時計だよ…」
ヒビキが最初に疑問符で尋ねたのはあまりにもそれが十代の女の子の持つような物の状態ではなかったからだ。酷く錆びて止まっている。文字盤は埃で曇ってしまっていて、見えないほどだ。
「これ…、何で錆びてるんだと思う?」
ケンの言葉に周りは顔を見合わせて、首を傾げた。
ヒビキはホールドアップして見せ、美奈子を寝かせたソファーの向かいに座り、銃を出すとシリンダーを外し、弾を詰め始めた。
その時、美奈子が目を覚ました。
「あ、目覚ました!」
シンがそう叫んで美奈子の飛びついた。美奈子は酷い夢の続きを見るハメになった人間のように一瞬で顔が真っ青になったが、「すみませんでした…」と詫びてきた。
すかさず、アキラが笑って見せる。
「いやいや、悪いのはコイツだから☆」
と、ヒビキを親指で指す。美奈子は目を凝らしてヒビキを見た。
「……」
向かいのソファーにドッシリと座り、煙草を咥えたヒビキが“何か”を磨いている。
その“何か”がさながら、映画の中でしか見たことが無いような形状をしていたので美奈子は思わず仰け反った。
「そ…そっ…!」
腰を抜かしたような美奈子の反応にヒビキは「そ?」と首を傾げつつ、煙草の火種をクイッと持ち上げて、煙に顔を顰めながら“銃に弾を込めている”!!!
「じ…っじゅっ!!」
「じゅ?」
また首を傾げてくるヒビキに美奈子は「えっとぉ…」と息を呑んでから…。
「そ、それ…本物ですか?」
「当たり前だろ?」
スパッと返ってきた言葉に美奈子はひっくり返りそうになった。今までの生活では“銃っぽい物”を“本物ですか?”と問うた時に返ってくる答えといったら…
『「まっさかぁ~…」』
だったのにっ!!!
思わず、ヒビキの答えに「まっさかぁ~」と言ってしまっていた美奈子にヒビキは平然と言った。
「いやいやマジで。」
「…」
(マジでかっっ!!!)
その言葉に何処まで突き落とされたか…。なんでこの人…銃なんか持ってんの?!!そういえば、さっきシンが飛び出してきたときもアキラと共に即座に銃を構えていたのを見たけどっっ!!
「あっ!!!!」
美奈子はパンッと手を叩いた。それにヒビキ以外の周りがビクリと反応する。とても面白く珍しい生き物が珍行動をとるのを見ている観客のようだった。
「解った!!解りました!!! ヒビキさん警察官だ!!!」
その言葉にヒビキはあの美しい深紅の瞳を丸く見開いた後、大爆笑し始めた。
「私服警察官っ!そうですよねっ!!」
「私服警察官!!!!」
大爆笑のヒビキにアキラとケンも口を覆う。笑いを噛み殺しているのだ。
「いやぁ、それは絶対に無いと思うなぁー…、」
「ヒビキが警察官…っっ!!」
アキラが背中を向けて密かに笑い始めた。
「えっと…ぉ、じっ…じゃあ…軍人さん?」
ニッポンの軍人が銃を持つのだかどうだかよく解らないが、とりあえず美奈子の頭にはそれぐらいの職種しか出てこなかった。ヒビキはまだ笑っている。合成側の安っぽいソファーに顔を埋めて…。
「ち、違うんですか…」
なんだか、いろいろ不安になってきた。この人たち何者だろう。
「俺は1番近いと思ったけど?」
ケンの言葉にヒビキは笑いをようやく収め、ニシャリと美奈子に笑って見せた。
「俺らがなんで銃を持ってるか…、教えてやろうか?」
その挑発的な顔といったら、ゾクリとさえした。悪魔のように笑うから。
「犯罪者だから。」
その良質の声から零れたイタズラっぽい言葉に、美奈子はまた気が遠くなるのを感じた。
周りではアキラとケンがため息をつき、頭を抱えているのが解った。
「このカバっ!」
アキラのチョップがヒビキの頭に直撃する。
「いってぇーなっ!ホントの事だから仕方ないだろっ!!? ここは2350年だし、俺らは犯罪者だろうがよ…。それとも、“殺し屋”って言えばよかったか?」
「どっちも止めろ…。」
アキラは目を伏せ、頭痛に耐えるような重々しい表情をした。美奈子は…今度は気を失わなかった。しかし、何を問いかけてもボンヤリと天井を見ているだけで応答が無い。今、シンが必死に置いてあった本で美奈子に風を送っているところだ。一瞬にして高熱を出した脳みそを少しでもさませられる結果になればいいのだが…。
ヒロはケンの指示で部屋から出て行き、濡らしたタオルをもって帰ってきた。センスの欠片も無い感じに美奈子の頭にタオルを置く。まるで温泉にでも浸かっているように。
「美奈子ちゃんにしてみれば、2004年がテロで崩壊したって聞かされたほうがマシだったかもしれないね…」
別の部屋から替えの電球を発見したケンは不似合いな部屋の照明、シャンデリアの電球を取り替えていた。
もう夜になってきた…。電気が無いのはさすがにキツイだろう。自分達はいいとしても女の子二人は不安だろうと気を回したのだった。
台に乗って電球を取り替えているケンの言葉にヒビキは「そうか?」と顔を顰める。
「君の言い方がもっとマシだったらそうじゃなかったかもしれないけどね。」
呆れるように微笑むケン。その手が電球をセットし終わるとパッと灯りがともった。
「あの…」
か細い声で美奈子が何か言った。「大丈夫?」とケンがトンと台から降りると顔を覗き込んでくる。
「私には、ヒビキさんや皆さんは普通の方々に見えます。」
その言葉に周りの雰囲気が少しだけ変わった。
「普通?普通に見える?!やった!ケン!やったね!!普通だって!!」
シンは目を輝かせて、美奈子に飛びついた。嬉しい!!!と。ケンは何も答えないままだった。
「違うだろ。」
それを一括するようなヒビキの声にシンはビクリと体を縮めた。ヒビキは美奈子に歩み寄り、彼女の小さい輪郭の先を指で持ち上げた。
「“人を殺したにしちゃあ普通”って言う意味だろ。“普通”の人間のように振舞ってるって…。」
美奈子はその眼力に蛇に睨まれた蛙のように硬直し動けなくなった。
なんという気迫だろうか。普通の男性から醸し出るそれとは桁が違う。今までこんな見据えられただけで動けなくなるような事があっただろうか?
「俺らは慣れてるんだよ…。」
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