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犬の巣
今立っているこの場所
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美奈子は言葉を失っていた。いや、みんな単純な言葉で表現出来ないほどの状態だった。
世界がそんな風になってしまった事に対しても、その犠牲となったヒビキたちにも、ただ胸が潰れるほど痛かった。彼らへの同情も世界に対しての憤りも口に出せるはずは無く、美奈子はただ、生唾を飲み込み、泪を堪えて聞くしかなかった。
「…ここは、2350年…なんですね…」
あまりにも自分のいた時代とかけ離れていて、そういう聞き方しかできなかった。もしかすると、少し救われたかったのかもしれない。自分の知っている2004年から300年近く経っているのだから、この荒廃とした状況も、悲しい定めを背負う事になってしまった人たちのことも“仕方ない”と。そうでなければ、美奈子の知っている世界が“崩壊”するなどということは、どう考えても想像出来はしなかった。
「…、すみません。」
思わず謝ったのは、目の前の彼らに申し訳なかったからだ。自分は少しでもすくわれる方向へと考えてしまっているから。けれども、ヒビキはその赤い瞳で全てを見据えていたのか
「あぁ、2350年だな。」
と、慰めるように言ったのだった。
「そんなわけで、俺達は政府の命令だったとしてもアソックによって結成された反乱軍を狩る仕事をしてたわけだし、最終的には政府にも切り捨てられたからな…、アソック人からは裏切り者。サンクチュアリ人からはただの殺人鬼とされてるんだよ。」
ヒビキの言葉に、美奈子は「あの…アソックって?」と小さく問いかける。
「あぁ、この国の首都が“サンクチュアリ”、この国の中心だ。んで、その周りにある“その他”は“アソック”って呼ばれてんだ。」
美奈子は言葉をなくし、顔を背けた。
「まさか、“東京”の名も残ってないなんて…」
そう言って口を覆う。あまりにも創造しいえない最悪の状態。ヒビキたちに拾われるまでに見た三日間の“無”と“崩壊したもの”を思い出すだけで、目を覆いたくなる。あの時、ぼんやりと空を眺め続けていた自分は、相当まともな神経ではなかったと思える。出なければ直視できない。
「トウキョウ?」
ケンの声に美奈子は顔を埋めたまま「はい…」と呟く。
その返答にケンはアキラと顔を見合わせ、申し訳なさそうに言った。
「美奈子ちゃん、ここはね…過去一度だってトウキョウという呼び名で呼ばれていたことは無いよ…」
その言葉に、どれほど突き落とされただろう。
美奈子は思わず怒鳴っていた。
「そんなわけ無いじゃないですか!!! 350年近く経ってるんですよ?!断言しないでください!!! 私はこのトウキョウに生きてたんですから!」
ケンは美奈子の言葉に酷く胸を痛めた様子だった。そして、言うか言わまいかを非常に躊躇った後、ポツリポツリと語りだした。
「この島は人工島なんだよ。歴史的には2100年に出来た島。君なら名前はわかるはずだ…。ヘブライ語で「喜び」の意味を指し、旧約聖書創世記で、人類の祖アダムとイブのために神が設けた楽園…。」
美奈子は心臓の奥から沸いてくるような震えを自分の肩を抱く事で必死に止めようとした。
「もしかして…」
震える唇がその単語を言う前に…ケンが頷き、言った。
「そう…“Eden”だよ…。」
体がぐらりと砕けた。受け止められる。それってどこの国だろう…。聖書の中で以外聞いたことない…
世界がそんな風になってしまった事に対しても、その犠牲となったヒビキたちにも、ただ胸が潰れるほど痛かった。彼らへの同情も世界に対しての憤りも口に出せるはずは無く、美奈子はただ、生唾を飲み込み、泪を堪えて聞くしかなかった。
「…ここは、2350年…なんですね…」
あまりにも自分のいた時代とかけ離れていて、そういう聞き方しかできなかった。もしかすると、少し救われたかったのかもしれない。自分の知っている2004年から300年近く経っているのだから、この荒廃とした状況も、悲しい定めを背負う事になってしまった人たちのことも“仕方ない”と。そうでなければ、美奈子の知っている世界が“崩壊”するなどということは、どう考えても想像出来はしなかった。
「…、すみません。」
思わず謝ったのは、目の前の彼らに申し訳なかったからだ。自分は少しでもすくわれる方向へと考えてしまっているから。けれども、ヒビキはその赤い瞳で全てを見据えていたのか
「あぁ、2350年だな。」
と、慰めるように言ったのだった。
「そんなわけで、俺達は政府の命令だったとしてもアソックによって結成された反乱軍を狩る仕事をしてたわけだし、最終的には政府にも切り捨てられたからな…、アソック人からは裏切り者。サンクチュアリ人からはただの殺人鬼とされてるんだよ。」
ヒビキの言葉に、美奈子は「あの…アソックって?」と小さく問いかける。
「あぁ、この国の首都が“サンクチュアリ”、この国の中心だ。んで、その周りにある“その他”は“アソック”って呼ばれてんだ。」
美奈子は言葉をなくし、顔を背けた。
「まさか、“東京”の名も残ってないなんて…」
そう言って口を覆う。あまりにも創造しいえない最悪の状態。ヒビキたちに拾われるまでに見た三日間の“無”と“崩壊したもの”を思い出すだけで、目を覆いたくなる。あの時、ぼんやりと空を眺め続けていた自分は、相当まともな神経ではなかったと思える。出なければ直視できない。
「トウキョウ?」
ケンの声に美奈子は顔を埋めたまま「はい…」と呟く。
その返答にケンはアキラと顔を見合わせ、申し訳なさそうに言った。
「美奈子ちゃん、ここはね…過去一度だってトウキョウという呼び名で呼ばれていたことは無いよ…」
その言葉に、どれほど突き落とされただろう。
美奈子は思わず怒鳴っていた。
「そんなわけ無いじゃないですか!!! 350年近く経ってるんですよ?!断言しないでください!!! 私はこのトウキョウに生きてたんですから!」
ケンは美奈子の言葉に酷く胸を痛めた様子だった。そして、言うか言わまいかを非常に躊躇った後、ポツリポツリと語りだした。
「この島は人工島なんだよ。歴史的には2100年に出来た島。君なら名前はわかるはずだ…。ヘブライ語で「喜び」の意味を指し、旧約聖書創世記で、人類の祖アダムとイブのために神が設けた楽園…。」
美奈子は心臓の奥から沸いてくるような震えを自分の肩を抱く事で必死に止めようとした。
「もしかして…」
震える唇がその単語を言う前に…ケンが頷き、言った。
「そう…“Eden”だよ…。」
体がぐらりと砕けた。受け止められる。それってどこの国だろう…。聖書の中で以外聞いたことない…
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