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過去
4年越しの再会 /獣時代
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ヒビキはある街に来ていた。
アキラとの鎖を外し、四年も経っていた。
シヲンには、必ずあの牢屋から出てやると言った。
その約束を果たしたのが三年前…。
しかし三年間も逢わずにいたのは、自分の命に値段がかかっているからだ。この三年間…シヲンにも、もちろんメンバーたちにも一切の連絡を控えていた。
シヲンが狙われないように…。三年の月日、ヒビキは蛇のように粘りついた視線も、纏わりついていた殺気もすべて始末してきた。
ようやく…ようやく逢える。
懐かしいはずの街並はだいぶ変わってしまっていた。この街は地図で言うとE‐16…隣町のE‐15の街はもう廃墟と化していた。だいぶ前にあの街は反乱軍が住み着いていたので街ごと消し去られてしまった。ヒビキももちろんその抹殺した側の一人だった。正義なんて程遠い、悪として、“獣”として生きていた時代。
そこが、シヲンが住んでいた街の隣りだという事はもちろん気付いていた。
けれどまさか…
『いやぁぁっ!!助けてぇぇっ!!』
彼は振り返った。聞きなれた、しかしずいぶん前から耳にしない…懐かしいソプラノの叫び声。
『…』
(シヲン…)
目が…いや…瞳孔が開いてゆく…
周囲が炎に包まれた為、呆然と開け放たれたままの口から、喉へ焼けるように熱い空気が肺に流れ込んできた。目も…干乾びるかと思った…。
『全員退避だ!!! 急げー!!』
声を荒げる誰かの声にその場に砕けそうになった。
命令を出さなければ…
退却命令を…
『誰かあぁっ!!』
『…』
間違いない。
間違えるはずが無い。
シヲンだ…。逢いたかった。傍にいたかった。
ずっと…もう一度抱きしめたかった…彼女がいる。
『ヒビキ!!命令を出せ!!』
自分より格上のいけ好かないヤツの声に奥歯を噛み締めた。
『ヒビキ!』
アキラの声。
『ヤバイ!!崩れる!!退却命令を出せ!! お前も逃げるんだ!!』
腕を引っ張られた。けど…シヲンは?
『…』
アキラの顔を見た。
縋るような顔をしていたかもしれない。
『…お前…、』
アキラの力の込めていた手が少し緩まったのが軍服越しに伝わった。
『悪い…ほっとけねぇー。』
ヒビキが軍服の右袖の腕章を掴み、引き契るとアキラの胸に押し付けた。
『……!! よせ!!』
アキラの言葉も聞かず、戦火の中に彼女を追い、飛び込んでいったヒビキに彼は下唇を噛み締めた。
『全員…退避しろ!! 指揮は俺が取る!!』
それから…どうしたかと言うと…
彼は必死になって彼女を探し当てた。
彼女はかなりの錯乱状態になっていて…悲鳴を上げ泣き叫び続けていた。
『逃げなきゃっ!!!早くうっぅ!!』
腕を掴んで彼女を止める。
暴れる彼女を止める。
『助けてっ!!!殺さないでっ!!!お願いっっ!!』
懇願するようにヒビキに泣き縋った。
『…』
殺す?そんな事…する訳ないだろ?そう言えたらどんなに良かっただろう。
どんなに幸せだったろうか。
けれど…今、彼は一人の男ではなく…
この忌まわしい軍服を着ている彼は…
彼女の前で…醜く血に飢えた“獣”でしかない…。
『…』
彼女が自分から逃げようとする。
ヒビキの顔を見ては泣き叫び、怖いと泣いている。
“俺だ…大丈夫だから”
“助けにきたんだ…”
と、そう言えたらどんなに良かったろうか…。
たった一言“あの時”の“あの言葉”がこんなに悲しい結果になるなんて…。
『…』
泪は零した。
たぶん泣いた。
けれど、周りの炎で蒸発してしまったんだろう。
頬は少しも濡れなかった。
『…っ』
力一杯、引き寄せて、鳩尾を殴りつけて担ぎ上げた。
“来い”とも“行くぞ”とも言わなかった。
思い出す要素は…少ない方がいい…
彼女が何も覚えてなければいいと思った。
女を担ぎ上げて帰ってきた姿に誰もが驚いていた。
アキラは無言で響きを横殴りにし、犬の中で最強といわれているライは嘲笑って拍手した。
テントの近くで火にあたっていたライとヒビキはすこぶる仲が悪かった。
ライの飄々とした態度はいつも、ヒビキの癇に障るのだった。
『おー…人命救助かー? カッコいいねぇ。俺もそんなことしてみてぇよ!』
ハハハハ!!と豪快に笑ったライにヒビキは抱えていたシヲンをライの膝に押し付けた。
『って…なんだよ、コレ…わ…。抱く女ぐらい決められるつの…』
『手柄をやるよ…。お前が助けた事にしとけ。』
ヒビキの言葉にライはマルボロを口に運ぶのをやめた。
『抱いちゃうよ?』
『…。』
冗談めかした声にもなんともいえなかった。
『お前の所為だ。』
ポツリとヒビキがそう言い、ライを睨みつけた。
その目は夕日の沈む海のようだった。
そんな表情にライはヘラッと笑って
『そうかもしんねぇーなぁ…、俺の所為かもしんねぇ…』
マルボロをもう一度、吸い込んだ。
『だが……よ、』
ライは煙に目を細めながら呟くように言った。
『“またこうして出会えた”じゃねぇーか…』
ヒビキが振り返るとライはニシャリと笑った。
『惹かれあってたなら…もう一度惹かれ合うさな…』
『いつか…お前の首をへし折る。』
人事のようにニシャニシャ笑うライにヒビキは奥歯を噛み締めた。
『してみろよ。』
それでも笑うライにヒビキは顔を背けた。
『お…目が覚めるぞ。引っ込んどけ。“ヒーロー”は俺なんだろ?』
腹の底から湧き上がってくる怒りを堪えるのに精一杯だった。
シヲンの瞼が持ち上がる前に…その場から離れた。
いとおしい彼女の顔に手を滑らせる事も髪を撫でる事も…唇に触れることも出来なかった。
アキラとの鎖を外し、四年も経っていた。
シヲンには、必ずあの牢屋から出てやると言った。
その約束を果たしたのが三年前…。
しかし三年間も逢わずにいたのは、自分の命に値段がかかっているからだ。この三年間…シヲンにも、もちろんメンバーたちにも一切の連絡を控えていた。
シヲンが狙われないように…。三年の月日、ヒビキは蛇のように粘りついた視線も、纏わりついていた殺気もすべて始末してきた。
ようやく…ようやく逢える。
懐かしいはずの街並はだいぶ変わってしまっていた。この街は地図で言うとE‐16…隣町のE‐15の街はもう廃墟と化していた。だいぶ前にあの街は反乱軍が住み着いていたので街ごと消し去られてしまった。ヒビキももちろんその抹殺した側の一人だった。正義なんて程遠い、悪として、“獣”として生きていた時代。
そこが、シヲンが住んでいた街の隣りだという事はもちろん気付いていた。
けれどまさか…
『いやぁぁっ!!助けてぇぇっ!!』
彼は振り返った。聞きなれた、しかしずいぶん前から耳にしない…懐かしいソプラノの叫び声。
『…』
(シヲン…)
目が…いや…瞳孔が開いてゆく…
周囲が炎に包まれた為、呆然と開け放たれたままの口から、喉へ焼けるように熱い空気が肺に流れ込んできた。目も…干乾びるかと思った…。
『全員退避だ!!! 急げー!!』
声を荒げる誰かの声にその場に砕けそうになった。
命令を出さなければ…
退却命令を…
『誰かあぁっ!!』
『…』
間違いない。
間違えるはずが無い。
シヲンだ…。逢いたかった。傍にいたかった。
ずっと…もう一度抱きしめたかった…彼女がいる。
『ヒビキ!!命令を出せ!!』
自分より格上のいけ好かないヤツの声に奥歯を噛み締めた。
『ヒビキ!』
アキラの声。
『ヤバイ!!崩れる!!退却命令を出せ!! お前も逃げるんだ!!』
腕を引っ張られた。けど…シヲンは?
『…』
アキラの顔を見た。
縋るような顔をしていたかもしれない。
『…お前…、』
アキラの力の込めていた手が少し緩まったのが軍服越しに伝わった。
『悪い…ほっとけねぇー。』
ヒビキが軍服の右袖の腕章を掴み、引き契るとアキラの胸に押し付けた。
『……!! よせ!!』
アキラの言葉も聞かず、戦火の中に彼女を追い、飛び込んでいったヒビキに彼は下唇を噛み締めた。
『全員…退避しろ!! 指揮は俺が取る!!』
それから…どうしたかと言うと…
彼は必死になって彼女を探し当てた。
彼女はかなりの錯乱状態になっていて…悲鳴を上げ泣き叫び続けていた。
『逃げなきゃっ!!!早くうっぅ!!』
腕を掴んで彼女を止める。
暴れる彼女を止める。
『助けてっ!!!殺さないでっ!!!お願いっっ!!』
懇願するようにヒビキに泣き縋った。
『…』
殺す?そんな事…する訳ないだろ?そう言えたらどんなに良かっただろう。
どんなに幸せだったろうか。
けれど…今、彼は一人の男ではなく…
この忌まわしい軍服を着ている彼は…
彼女の前で…醜く血に飢えた“獣”でしかない…。
『…』
彼女が自分から逃げようとする。
ヒビキの顔を見ては泣き叫び、怖いと泣いている。
“俺だ…大丈夫だから”
“助けにきたんだ…”
と、そう言えたらどんなに良かったろうか…。
たった一言“あの時”の“あの言葉”がこんなに悲しい結果になるなんて…。
『…』
泪は零した。
たぶん泣いた。
けれど、周りの炎で蒸発してしまったんだろう。
頬は少しも濡れなかった。
『…っ』
力一杯、引き寄せて、鳩尾を殴りつけて担ぎ上げた。
“来い”とも“行くぞ”とも言わなかった。
思い出す要素は…少ない方がいい…
彼女が何も覚えてなければいいと思った。
女を担ぎ上げて帰ってきた姿に誰もが驚いていた。
アキラは無言で響きを横殴りにし、犬の中で最強といわれているライは嘲笑って拍手した。
テントの近くで火にあたっていたライとヒビキはすこぶる仲が悪かった。
ライの飄々とした態度はいつも、ヒビキの癇に障るのだった。
『おー…人命救助かー? カッコいいねぇ。俺もそんなことしてみてぇよ!』
ハハハハ!!と豪快に笑ったライにヒビキは抱えていたシヲンをライの膝に押し付けた。
『って…なんだよ、コレ…わ…。抱く女ぐらい決められるつの…』
『手柄をやるよ…。お前が助けた事にしとけ。』
ヒビキの言葉にライはマルボロを口に運ぶのをやめた。
『抱いちゃうよ?』
『…。』
冗談めかした声にもなんともいえなかった。
『お前の所為だ。』
ポツリとヒビキがそう言い、ライを睨みつけた。
その目は夕日の沈む海のようだった。
そんな表情にライはヘラッと笑って
『そうかもしんねぇーなぁ…、俺の所為かもしんねぇ…』
マルボロをもう一度、吸い込んだ。
『だが……よ、』
ライは煙に目を細めながら呟くように言った。
『“またこうして出会えた”じゃねぇーか…』
ヒビキが振り返るとライはニシャリと笑った。
『惹かれあってたなら…もう一度惹かれ合うさな…』
『いつか…お前の首をへし折る。』
人事のようにニシャニシャ笑うライにヒビキは奥歯を噛み締めた。
『してみろよ。』
それでも笑うライにヒビキは顔を背けた。
『お…目が覚めるぞ。引っ込んどけ。“ヒーロー”は俺なんだろ?』
腹の底から湧き上がってくる怒りを堪えるのに精一杯だった。
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