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プロローグ
しおりを挟む不思議なことに、見る夢はいつもそれだと決まっていた。
同じところをずっと巻き戻しては見返しているような、擦り切れたフィルムの映像を焼き切れるところまで見てはまたはじめからを、飽きることなく繰り返している。
誰かの顔、どこかの風景、見知らぬ場所。
延々と繰り返される、混然一体となったその景色がぼやけては近づき、遠ざかっていく。
そして、必死に伸ばしている自分の手。
待って、行きたくない。
頼むから、なんだってする。
なんだってするから。きみを置いてここではないどこかになんて──行けない。
どうして、と口に出す。
『──』
どうしてこんなことになってしまったのだろう。
会える約束を交わしたいのにそれが叶わない。
深い喪失が波のように押し寄せてくる。
そうして、さざめく波の音に目を覚ますのだ。
いつものように。
目を開けると、そこは自分の部屋だった。明け方の薄闇に包まれている、輪郭を失った世界。
やりきれない後悔と焦燥感の中に取り残されている。
知らない記憶なのに、胸が痛い。
目に映る天井は曇天と同じ色をしていた。
窓の外から漏れるかすかに白い光。
「──、…」
夢は今日も同じだ。
何も残さずに消えていく。
*
もっと、繋がっていると思っていた。
もっと──例えば、顔が見えないほどの遠くからでも、それと分かるような。
そんなものだと思っていたのに。
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