明けの星の境界線

宇土為名

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「三沢先輩」
 失礼します、と言って廊下に出た途端、声を掛けられて逸巳は振り向いた。
「──あ」
 廊下の少し離れたところから怜がこちらに向かって来ていた。後藤くん、と呼ぶとかすかに怜が微笑んだ。
 一昨日購買で話して以来だった。
 本当に最近校内でよく会うようになった。
「先輩、…進路指導すか?」
「うん。受験のことで」
 今頃? と怜が不思議そうにしたので、逸巳は思わず笑みを零した。
「進路もう決まってるのに、結構呼び出されて大変だよ?」
「…そんなもん?」
「そんなもん。後藤くんも来年になれば分かるよ」
「へえ」
 そう言って進路指導室の入り口を見る怜の横顔は、興味よりも面倒くささが勝っていた。実際二年なら進路指導はとうに始まっていて、怜もその面倒さはよく知っているのだろう。ゆっくりと歩き出すと、怜も歩き出し、やがて横に並んだ。怜の手にはノートがあった。
「移動?」
 どこかに向かう途中なのかと逸巳は尋ねた。
「あー…、いや、提出」
「職員室?」
 そう、と怜は頷いた。
「本当は…昨日までだった」
「そうなんだ? なに?」
 何の提出物だろう?
 怜の手元を覗き込むと英語、と書かれているのが見えた。逸巳は怜を見上げる。
「後藤くん英語苦手?」
 怜は一瞬目を瞠ってから、気まずそうに首を掻いた。
「…まあ、そう」
「僕もそうだよ」
 履修科目なのに逸巳は英語が苦手だ。子供のころ無理矢理親に塾に放り込まれたのだが、その塾は講師が暴言を吐くことで有名で、結果逸巳はそれが原因で英語が苦手になってしまった。身に付けさせたいという親の願いとは逆になり、何とも皮肉なものだと当時近所に住んでいた伯母から同情された記憶がある。
「先輩も?」
「うん。文系だけどそこ辛くて」
 去年の秋に決めた履修は文系コースだったが、英語は最大のネックだ。本当は理系を選択するべきだったと逸巳は今になって後悔していた。
「…先輩って、──」
「ん?」
 途切れた言葉に振り返った逸巳は、あ、と目を留めた。怜の向こう、さっきまで誰もいなかった廊下には数人の女子がいた。こちらをちらりと気にするふうなのは、最近よく目にする光景だった。
 皆視線は怜に向いている。
「…え、と、なに?」
 ひとりの女子と目が合いそうになり、慌てて逸巳は視線を外した。
「どこ受けるんすか? 文学部?」
「あー、うん」
 視界の端にじっとこちらを見つめる女子が映り、逸巳はどきりとした。
 なんだろう。
 怜を見てるんだろうか。
 彼に用があるのか?
 それにしては視線が…
「先輩?」
「え?」
「…なに、──」
 逸巳を見ていた怜が何かに気づいたようにばっと後ろを振り返った。女子たちはびくりと震え、逃げるようにして行ってしまった。
「──、」
 舌打ちのように聞こえたのは気のせいだろうか。
「ごめん、何か用があったみたいだけど…」
「違うよ」
「でもずっと見てたよ?」
「見てただけでしょ」
 長い前髪を鬱陶し気に掻き上げる。形のいい額が一瞬あらわになって、もったいないなと逸巳は思った。
 店では、怜は長めの髪をきちんとピンで留めていた。いつもそうしていればいいのにと思う。見れないのは少し残念だ。 
 …残念?
(……)
 残念って何が?
 自分の考えに戸惑っていると、怜がため息を吐いた。
「…用なんかないよ」
「そう? クラスの子だろ? 」
 うんざりしたような声に逸巳は笑いかけた。
 彼女たちはずっと言いたそうにしていた。
 自分がいたから、話しかけるタイミングがなかったのかもしれない。
「ほら、僕がいたから──」
「違えって…!」
「──」
 は、と怜が掻き上げていた手のひらで口元を覆った。逸巳を見下ろし、しまったというふうに顔を歪める。
「ごめん」
 逸巳は首を振った。
 声に驚きはしたが、それだけだ。
「じゃあ気のせいかな」
 歩き出すと怜は少し後ろをついてきた。ゆっくりと歩くとすぐに肩が並んだ。ほんの数センチの距離にある肩先。何気なく逸巳は横を見上げた。
「……」
 逸巳もそれなりにあるほうだが、怜のほうが5センチは大きい感じがする。すらりとしたその立ち姿は、人の目を引くには十分すぎる。
 綺麗な横顔だ。凡庸な自分とは、まるで違う。
 逸巳には分からない何かが、怜にはあるのだろう。
 そう、あのときだって…
「じゃあ」
 気がつけば廊下の分かれ道に来ていた。新校舎はここを左、そろそろ教室に戻る時間だ。
 逸巳は軽く手を上げた。
「またね」
「──、先ぱ、っ」
 背中を向けた瞬間、突然ひじの上を掴まれ驚いて逸巳は振り向いた。
 怜が何か言おうとして口を開いている。言いかけて、閉じた。きゅ、と唇を引き結び、それからまた唇を開く。
「せんぱい、あの、…」
「? え?」
「こ──」
「こ?」
「──」
 見返す怜の瞳が揺れた。
 何だろう。
 言葉の続きを待っていると、怜ははっとしたように口を噤み、掴んでいた逸巳の腕を放した。
「何でもない、ごめん」
「…? え、うん」
 ゆっくりと離れていく体温。
「じゃあ、また」
 小さく頷いた怜を残し、逸巳は今度こそ背を向けた。
 歩きながら無意識に手のひらで腕を撫でる。
 怜の指の感触がまだそこに残っていた。
 
 ***

 ホームルームの終わった教室で怜はぼんやりと自分の手を眺めていた。
 なぜあんなことをしたのだろう。
 引き留めるみたいに、腕を。
 腕を掴むなんて。
「…なにやってんだ」
 思うよりもずっと細かった。
 手のひらに残る感触を確かめるように、開いて閉じる。
「怜、おまえ今日もバイト?」
「…は?」
「だからバイトかって」
 顔を上げると中井が鞄を肩に担ぐようにして目の前に立っていた。
「…だからなんだよ」
「こっわ、聞いただけじゃん」
 げらげらと笑い、中井は取り留めもなく話し出した。それに適当に返しながら、怜は帰り支度を始める。教室内は騒がしく、他のクラスの人間も入り混じり、あちこちで笑い声を上げている。
「行くぞ」
 鞄に適当に荷物を詰め込んで怜は立ち上がった。
 教室を出ようとしたところで立っていた女子に軽くぶつかり、悪い、と怜は呟いた。
「あ、後藤」
 呼ばれて振り返るとぶつかった相手がこちらを見ていた。去年同じクラスだった柚木だ。横にいた中井も振り返っている。
「ねえちょっと話があるんだけど」
「は?」
「えーなになにオレじゃダメなん?」
「ダメ、後藤じゃないと」
 前のめりになった中井を軽く躱し、柚木は怜に笑った。さっぱりとした口調も視線も他の女子にはないもので、彼女は怜の数少ない友人の一人だ。怜がどんなに不機嫌でも、まるで気にしないのは、柚木にとって怜が恋愛の対象ではないからだろう。それはお互いしっかりと確認済みだ。
「めんどくせえ」
「まだなんも言ってないでしょ、あ、ちょっとっ」
 待ってよ、と言う柚木の声を背に怜はさっさと歩き出した。少し離れた後ろから中井の笑い声がする。
「ユズ、話って?」
「え? あー」
 柚木は廊下を曲がって行く怜を見ながら、肩を大袈裟に竦めた。
「…ちょっとねー」
「ちょっと?」
「三年生のことで」
「へえ?」
 そういえば、と中井は思いついた。
 最近怜はある三年生とよく話している。珍しいことだと思っていた。怜のほうから誰かに寄っていくなんて。
 すごく真面目そうな先輩だった。
「オレが聞こうか?」
「だから後藤じゃないとダメなんだって」
 柚木は仕方ないとため息を吐いた。
「じゃあねー中井」
 そう言ってひらりと手を振り、教室に入っていった。


「ありがとうございました」
 釣銭をトレイに置き怜は言った。相手の差し出した手が戸惑うように一瞬止まったが、何事もなかったかのように小銭を取り、扉に向かった。そして店を出て行く。暗いガラスの向こうにその姿が見えなくなるのを待ってから、怜は深く息を吐き出した。
 やっと帰った。
 さっきの客はしつこくて、何度も怜を呼んではあれこれと注文をしてくれた。テーブルの上には食べきれなかったケーキや食事が大量に残っている。
「すんません、なんか俺…」
「気にすんな、ああいう客はどこにでもいるんだって」
 一度も手を付けられなかった皿をキッチンに戻しながら店長は肩を竦めた。申し訳なくて手伝おうとすると、声を立てて苦笑される。
「いいから、外閉めてこい」
「…はい」
「終わったらメシにするぞー」
 気を遣われているのか、本気で気にも留めていないのか、本当はどちらだろう。ぼんやりと考えながら怜は扉を開けた。昼間とあまり変わらない暑い外気にうんざりとして、重い気持ちのまま外の看板をひっくり返す。今日のバイトはこれで終わり、さんざんな一日だった。
 逸巳はまた、今日も店に来なかった。
 学校で話したあのとき、本当は聞きたかったことを思い出す。
『今度いつ来る?』
 ただそれだけだったのに。
 それだけを言うことも出来なかった。
「あー…、くそ」
 他の人間なら何も考えずに出来ることが逸巳には出来ない。顔を見て視線が合っただけでどうしていいか分からなくなる。
 それに。
 自分で勝手に苛ついて八つ当たりのように怒鳴ってしまった。
 なんか…
 嫌われた?
「あー…」
 自己嫌悪が蘇ってきて怜は頭を抱えた。
 どうしようもない自分が嫌だ。いっそ時間を巻き戻してあの瞬間の自分をぶん殴ってしまいたい。
「ねえ」
 人の気配に怜は振り向いた。
「今日バイトもう終わりでしょ? 遊ばない?」
「は?」
 さっき帰ったとばかり思っていたあの客が後ろに立っていた。
 にっこりと悪気なく笑っている。
「私あなたのことすごく気に入っちゃった」
「…は? 何言ってんの」
 女は明らかに自分よりも年上だった。大学生ではない、もっと上、仕事の出来そうな社会人に見える。実際そうなのだろう。
「私年下の子が好きなのよ」
 薄暗い道端の中、唇だけがやけにてらてらと光っている。それに嫌な残像が重なって、怜は顔を顰めた。
 気持ち悪い。
 ため息をつき、ああそう、と怜は言った。
 だから何なんだ。
「だったらホストにでも行けよ。あんたみたいなのでも喜んで相手してくれんだろ」
 へえ、と女は眉を上げた。
「口悪いんだね」
「…なんだよ」
「ふうん」
 怜の物言いに余裕の笑みで女は返した。ねえ、と口を開きかけたとき、店の扉が開いた。
「後藤、メシ」
 店の明かりが地面に落ち、女の足元を照らした。怜の後ろをちらりと見てから、女は微笑んだまま踵を返し、歩き出した。
「なんだ?」
 訝しげな顔で店長は去っていく女を眺めていた。怜はそれには答えずにぐしゃりと髪を掻き上げ、指先に当たるピンを取った。くしゃくしゃになった髪が瞼の上に落ちてくる。いい加減切らないといけないが、あまり切りたくない。鬱陶しいけれど…
「さっきの客か? 絡まれてたのかおまえ」
「まあ、そうっす」
「はあん? ったく、無視しろ無視。いいから中入れ」
 心底嫌そうに店長は言い、怜を手招いた。怜が近づくと、女の消えた方向を睨むように見ていたその目が、ふと真顔に戻る。ああ、と頬が緩んだ。
「今帰りかい?」
 声音が打って変わって優しくなる。
 まるで自分の子供にでも言うかのように。
 まるで…
「はい。今日は遅くなって」
 怜は振り返り目を瞠った。
 逸巳だ。
 逸巳が立っている。
 少し離れたところに。
「先輩…」
 怜と目が合うと逸巳は少し眉を下げて微笑み、おつかれさま、と言った。


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