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第1章

フラグが立ちまくっている件

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「シドさん……同じチームになりましたね。頑張りましょう!」

 休み時間。
 さっきの衝撃的なチーム分けの後、アリシアが俺に話かけてきた。

「いや……俺は統率者を辞退するよ」
「えっ? どうしてですか……?」
「クロード王子と争いたくないから」

 俺はモブとして平穏に行きたい。
 準男爵家の三男の俺は、領地を継ぐことができないから、王都で適当な職にでも就いて静に暮らそうと思っていた。
 それにモブキャラのシドは、ステータスもごく平凡だ。
 魔力の量も普通程度。
 まともに考えれば、クロード王子とクラスメイト全員に勝てるわけがない……

「俺、先生に統率者を辞退するって――」
「あら。辞退なんてダメよ!」
「ファルネーゼ……?!」

 ファルネーゼが俺の席にやって来た。
 イジワルそうな、薄笑いを浮かべている。

「何の用だよ……?」
「辞退なんてあたしが絶対に許さないわ。教師に手を回して、辞退を決して認めないように言っておくから」
「なんだと……」
「アンタは惨めに敗北するのよ。大人しくクラスメイト全員にボコられなさい! それから王族に逆らったことを土下座して、【自主退学】するのよ……っ!」

 退学はさすがにマズイ。
 俺はこの世界を怠惰にまったりと生きたいが、貧乏は嫌だ。
 魔法学院を卒業できなれば、間違いなく無職ルートだろう。

「でも……あたしが哀れなアンタを、助けてやってもいいのよ?」

 ドンっと、ファルネーゼが椅子に座る。

「うふふ……ファルネーゼ様もエグイわね」

 と、ファルネーゼの取り巻きたちがクスクスと笑う。

 (何をするつもりだ……?)

 ファルネーゼは靴を脱いで、それから靴下も脱いだ。
 白い素足を、俺に向けてくる。

「なんだよ。それ……?」
「舐めなさい」
「何を?」
「決まってるじゃない! あたしの足よ!」
「な、なんだって……?!」

 俺は自分の耳を疑った。

「ファルネーゼ様、いくらなんでもそんなこと――」

 アリシアが苦言を呈するが、

「平民はすっこんでなさい……っ!」

 ファルネーゼが怒鳴る。

 たしかにファルネーゼは、原作でも性格悪いキャラだった。 
 だが、ここまで酷いことはしなかったはず……

「犬のように足を舐めなさい。足をきれいに舐めて、あたしのペットになることを誓えば、クロード王子にとりなしてあげるわ」

 ファルネーゼは足の指を、くいっと動かす。
 爪もつやつやで、すごくきれいな足だ。
 かなり手入れしているようで。
 うん。足の美しさは認めよう。
 だが――足を舐めるなんて、そんなことはできない。

「グランディ! さっさと舐めろよ!」
「ファルネーゼ様のペットになれるなんて、名誉じゃない?」
「この犬があああっ! 舐めろ!」
 取り巻きたちが煽ってくる。

 俺を嘲笑うように見るファルネーゼ。

 (前世の女上司とそっくりだな……)

 足を舐めろとまでは言わなかったが、気に入らない部下をいじめ倒していた。
 口調とか雰囲気が、妙に前世の上司と似てるんだよな……

 (思い出したらまたイライラしてきた……)

「舐めない」
「はあ? 今、なんて――」
「俺は、お前の足を舐めない」
「いいの? クラスメイト全員にボコられても?」
「……要は、クロード王子に勝てばいいんだろ」
「アンタみたいなモブが勝てるわけ……」
「もしそのモブが勝ったら、お前は何をしてくれる?」
「あ、あたしに要求するわけ……?」

 俺の毅然とした態度に、ファルネーゼが少し焦る。

 (どうやら想定外の反応だったみたいだな)

 クロード王子に追い詰めれた俺を攻撃すれば、簡単に服従すると思ったんだろう。
 前世でブラック企業の社畜だった俺だ。
 立場が上の人間に追い込まれることは、慣れている。
 ファルネーゼの好きにはさせない――

「侯爵令嬢様が、準男爵令息に賭けで負けるんだ。お前は何を賭けるつもりだ?」
「ちょ、調子に乗るんじゃないわよ……っ! 侯爵令嬢のあたしが、底辺貴族に負けるわけないじゃない! 絶対にあり得ないけど、もしも負けたら――何でもするわ!」
「ほう……何でもか?」
「そうよ! 何でもしてやるわ! 裸で踊ってもいいわよ……っ!」
「その言葉、二言はないな?」
「しつこいわね! 本当に何でもしてやるわよ!」

 ファルネーゼが啖呵を切った。
 怒りで俺の頭は、フル回転する。
 勝算は……ないわけじゃない。
 アリシアの魔力と、俺の原作知識があれば――

「……あとで揉めたくないから、もう一度、確認する。本当に、本当に、何でもするんだな?」
「何度も聞かないで! そんなに疑うなら、誓約魔法をしてやるわ!」

 他のクラスメイトたちが見ている前だ。
 ファルネーゼも、もうあとには引けないのだろう。
 侯爵令嬢としての高すぎるプライドが、それを許さないのだ。

「わかった。誓約魔法をしよう」

 俺はファルネーゼと拳を合わせる。
 それから目を閉じた。

「「誓約魔法――ゼイウス!」」

 俺とファルネーゼの手に、誓約の刻印が刻まれた。

「これでアンタは退学決定よ……っ! ふふふ!」

 ファルネーゼが笑う。 

「さあ。それはどうかな……?」


————————————————————————
【あとがき】

フラグを立てたファルネーゼは……

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